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覇神なんて俺には荷が重い  作者: だるま座
武極大会編
9/10

#9 闘いの幕開け

すみません。

遅くなりました。

 出場ブロック

 Aブロック 崇星

 Bブロック ミーシャ、ギル

 Cブロック 求婚団団長

 Dブロック 応援団団長


 この大会を仕切るのは武神の第一弟子であり、身の回りの警護を任されている3人の少女 (通称『虹乙女(アルコヴィエル)』) である。

 彼女達は、かの武神の元で修行することを許された屈指の実力者で、レギーナの情報によると、見た目の華奢な身体からは全く想像がつかないが、一人一人が一国を蹂躙してしまえる程の力を有しているそうだ。 因みにどの子も凄く可愛い。

 そんな彼女達に会場のアナウンスで呼ばれ、Aブロックに出場予定の俺は試合のリングへと向かう。


 今俺の目の前には、バトルロワイヤル形式の為の広すぎるリングが視界一面に広がっており、そのリングの周りには、観客に危害が加わらないよう、魔法障壁が張られている。

 そしてその正面に位置する席からリングを一望しているのが今大会主催者の神、武神である。虹乙女(アルコヴィエル)はその近くで待機及び指示を出しているようだ。

 その内の一人、黄色髪の()の指揮で選手の搬入が進む。


「Aブロック全選手の移動が完了致しました。只今より第一次試合を開始します。此れよりこの試合の指揮は武神様に移られます。」


「宜しい。試合開始の合図は私が行う。皆者、その場で待機しておれ。」


「「「「「「はっ!!」」」」」」


 おっ、(ようや)くだな。ここまで長かったが折角の試合だ、修行の成果を出す事も大事だけど、それだけに囚われずやっぱり楽しむことも大切だろう。

 その方が気持ちが楽になるし、それに一回戦は10分後に戦闘不能になっていなければいいんだ。

 最悪逃げ廻っていればオッケーだと考れば気持ちも落ち着いてくる。


 武神がマイクの様な魔法器具を手に取り、今戦いの火蓋が切られる。


「貴君等の検討を祈る。それでは試合開始!!!」


「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」


 その瞬間、戦士達の声が呼応し、リングの上は戦場と化す。

 剣を掲げて敵を煽る者、斧を片手に咆哮する者、崇星の様に平静を保っている者、多種多様な者達が互いの思念を交わらせる。


 早速俺のところにも他の男共が攻撃を仕掛けてくる。

 全身の感覚を研ぎ澄ませ、自分を取り巻く環境の動き、変化に敏感になる‥後ろだ!!!

 直後、背後から剣が俺を襲う。奇襲、いや、不意打ちと言うべきか、選手達の必死さが(うかが)えてくる。

 が、こっちも負けていられない。指二本で器用に受け止める。一回やってみたかったんだよ真剣白刃取り。


「なんっ⁉︎ こい…」


「はい、どーん」パシッ


「……え、嘘 。」


 空いているもう片方の手で男に軽く張り手をかます。

 油断じゃあない。別に殴っても、蹴ってもいい。

 だけど、異世界に来ていきなり力を与えられた俺にはその制御が難しい。だから張り手、相手にそこまで負荷が掛からない技にした。

 とはいえ、これでも死なないように手加減はしている。

 男はそのまま勢い良く吹っ飛び魔法障壁に後頭部をぶつけ気絶した。試合脱落だ。


「よーし‼︎ まずは一人目撃破、 ぶい!!」


「戦闘中によそ見をするものでは無いぞ」


 声をかけてきたのは立派な兜を被った鉄の兵士。今の言葉はアドバイスじゃあ無く、俺への(いまし)めにしてやるつもりだったに違いない。

  一撃で仕留めようと剣を横に大きく振ってくる。しかし、兵士の瞳に俺は映っていないだろう、瞬速で避けてやったからな。

 やはり兵士は辺りを見回して俺を探している。


「どこに消えた! 幻術使いか!?」


「ノー、残念賞。上だよ。」


 兵士の兜を上から掴み、そのまま地面に押し込む。兜は砕け、兵士も気を失っている。『ノー』と『残念賞』の意味が被ってるって?細かい事は気にすんな!!

 俺は気がついている、この試合どこで何が襲ってくるか分からない。そして、目立ちすぎるのも悪だと。



「あの少年、強いな。お前等、奴を倒す。手を貸せ。」


 あっという間に二人の戦士を倒した俺を危険と判断したみたいだ。何人かが結託して俺を狙っている。次の試合までになるべく危ない奴は狩っておくつもりなのだろう。


「1、2、3、4、5、6、7… それ以上か…多いな。」


 今俺は複数の選手達に囲まれている。見渡せばいずれもベテラン冒険者達で、決して油断ならない大敵と言える。

 どうしたものか、俺の思考の暇なく魔法が飛んでくる。


「『灯せ-火球(ファイアボール)』」

「『(くく)れ-土塊(サンドショット)』」

「『貫け-氷棘(アイススティア)』」


 後衛の人間が魔法使いのようだ。全て基礎魔法。どうする、躱すか?いや、決めた。力の差を見せつけてやる。


「『(みなぎ)る四清の(やいば) 第三項-水仙(ナルツィゾ)』」


 巨大な水渦が姿を現わす。この水渦は敵の魔法を吸収し威力を増幅させるドレイン系魔法。当然だが、人間だって軽々呑み込む。


「たす‥け…ごゔぉぼ」

「飲み込まれっるっ!!」

「馬鹿やろう俺の脚を掴むな‼︎ 俺までっごゔぉ」


 おおっと危ない危ない、間違えて人を死なせてしまってはいけないからな、取り敢えず今飲み込んだ選手達はっと…


「み、見ろ!! 上から先引き込まれた奴らが放り出されて来るぞ!!」


「駄目だあいつら気を失ってやがる!!」


 水流は上向き、即ち、水は空中に向い、異物が進入すればそれは空中へ行く。それだけじゃあないぜ、敵の心を折るには最高に適した回転力、10Gもの重力という負荷がかかるようになっている。容赦のない水魔法といえるだろう。

 実は試合前に水魔法を練習していた際、額の文様が反応してこの魔法の知識が降りてきた。

 ラッキーの一言で済ませてしまって良いものなのかは分からないがそんな事気にするのは性に合わない。もう運が良かったでいいや。

 このままこの魔法を発動し続けていれば試合終了まで誰の攻撃も受ける事なく安全に居られるな。

 もっとも、色んな魔法を試したかった俺としてはちょっと物足りない気もするが、リスクを背負うよりはこっちの方が優勝にうんと近づく。

 戦略的に魔法を発動し続ける事にしよう。


「いいか、奴が水渦から出てきたところを狙うんだぞ。こんな巨大な魔法を発動し続けてるんだ、もうすぐ奴の体内魔素(まな)も尽きるだろう。」


 ーーーーーー 5分後


「…いつになったらこの水渦消えるんだ? もう試合終わりそうだぞ。」


「知るか。俺だって予想外だ。」


 通常、魔法を発動する時の常識として、体内の魔素(まな)の残量を考えれば巨大な魔法の連続使用及び発動持続は避けるものとされている。

  ただ俺の魔力をもってすればこのくらい……いや、やっぱり疲れる。

 体内の魔素(まな)が徐々に消費されていくのが分かる。このままは流石にきつい。…一つ賭けに出てみるか。


 俺の下衆の笑みが炸裂する。




 *** 一人称 セレスタ-エルベール




「ねえねえ、誰が勝ち抜くと思う〜?」


 そう言うのは虹乙女(アルコヴィエル)の一人、ピンク色の髪をもつ飄々(ひょうひょう)とした雰囲気のセレスタ-エルベール。私だよ。


「今そんな事を聞いて何になるというのですか?数分後には決着がついているのです。気になるのなら試合を観ていればいいでしょう。」


 質問に答えるのは同じく虹乙女(アルコヴィエル)、黄色髪のオフィス系女子、ゼナイド-バレス-フェンアル。少しきつめな事たくさん言うけど実は乙女なとこもある可愛い子。


「…… 」


 黙っているのは虹乙女(アルコヴィエル)最年少、少し青みがかった白い髪の少女 ランシア。私の愛玩天使だよ〜。


 もう、みんな無関心過ぎるなぁ〜。このブロックを勝ち抜いてきた人間と戦わされるのは私たちなんだよぉ。

 チラッとランシアの方を見る。

 ランちゃんは先から一人の少年を見つめているみたいだけど… ‼︎ ははぁーん なるほど〜。


 ランちゃんの肩に手をかけ、リングにいる黒髪の少年を指差す。


「ねえ、ランちゃんさ〜、ひょっとして 彼に一目惚れしちゃったの〜?」


「!? な、何を言って…」


「いいやぁ〜、だってさっきから視線が彼の方ばかり向いてるよぉ。何か感情がある事は間違いないよねぇ。」


「べ、別にそんなことないわよ!! 」


「本当にー? 何か気になるなー。隠すつもりなら別にそれでもいいんだけどね。ウフフ」


「セレスタ、今は試合中です。武神様の御前で何を浮かれた事を言ってるんですか、我々は武神様から大会の運営を許された身、もう少し緊張感をもって… 」


「まぁまぁ、分かってるって。少しランちゃんをからかっただけだよーだ。あ、ゼナは誰が勝つと思う?」


「先程も言ったでしょう。聞くだけ無駄です。それにこの試合に出ている者達は皆真剣に優勝を狙いにきています。ここで我々が誰か一人の人間を選ぶという事は彼らに対する侮じょ 「フェンアル、この勝負貴様は誰が有利と見る?」


 レオーネ共和国騎士団長のゼネス-ロマノフが有力かと。」


 おいいっ!! はやっ!答えるのはやっ!!いくら武神様の質問だからってそれはないでしょゼナちゃん。さっきまでの自論は!?

 まあ、気をとり直して、


「ランちゃんは誰が勝つと思う? 」


「もう、だからその『ちゃん』付けるの止めてよ。私はもう15歳だ。大人なの!! 」


 そう。この世界では満15歳で大人なのです。


「むー、いいじゃん。ランちゃんは大人になっても私の可愛い妹分だもん。 それよりやっぱりランちゃんはあの男の子押し? 」


「ち、違うわよ!! わ、私はあの槍使いの姉弟が勝ち上がって来ると思う。」


「ウフフ、そう。」


 やっぱりランちゃんは私の可愛い妹だよ。




 *** 一人称 ゼネス-ロマノフ




「ほらほらあああぁぁーーーー!!! もっと動かんか貴様ら!!!」


「駄目だ!! 強すぎる、この騎士!! 何者だよ!!」


「に、逃げられない、ぎゃんっ!!」


「何を言っているかあああぁぁぁぁーーーー!!! 我が騎士団の騎士ならもう後三分は粘れるぞーーー!!!」


 我はレオーネ共和国騎士団長を任せれた若き新星ゼネス-ロマノフ。この武極大会に参加したのは我が騎士団の兵力強化の為だ。

 具体的には試合でめぼしい新人をスカウトする事と、この大会で優勝して武神様から我が国緊急時の為の平和協定を約束して貰う事が目的である。

 だがなんだ! この大会の選手共はヘタレばかりではないか!! 我はこう言う人間を見ると‥見ると…

『我が騎士団で徹底的に修行をつけてやりたくなるのだあああああぁぁぁぁーーーーー!!!!』


「貴様ら!!この試合が終わったら直ぐに我が騎士団の加入届けを提出しろおおおぉぉぉーーーー!!! 特訓で貴様らの腐りきった根性を叩き直してやるわあああぁぁぁぁーーーー!!!」


「そんな一方的な〜〜!!」

「俺れらがついていけるわけ… 」


「ごちゃごちゃと五月蝿いわあああぁぁぁぁーーー!!!! 」


「「んなっ、理不尽な〜!! (泣き) 」」


 さて、我の視界に面白い景色が見えた。次々とリング上を蹂躙していく二人の姉弟。

 何より特徴的なのはあの身長、見た感じ三メメートル以上は確実。

 そしてその高身長から繰り出される腕の振りは他の選手の武器諸共(もろとも)打ち砕いていく。

 奴らの武器は槍、身長を合わせた奴らの攻撃守備範囲は半径10メートル。


「ば、馬鹿野郎!!其奴らに 近づくな!! さっきからそれでヤられた奴が沢山いるんだぞ!!」


「何言っているんだ。近づかないと攻撃出来ないだろ……え!?」


 今近づいた戦士は右上から左下へ槍を一線され吹き飛ばされる。

 馬鹿共が、貴様のいる所は既に姉弟の射程距離だ。油断するからだぞ!!!

 しかし面白いな。あの姉弟、魔法まで使えるのか。


姉者(あねじゃ)いくぞ。」

「承知。」


「「『梶なせ-濁砂(アレーナファンゴ)』」」


「魔法を使う前に手を打つぞ!! お前ら自分の持ってる武器を投げろーー!!武器を失った者は後ろへ!!」


 ふむ。考えたな、小童共。距離を保つ事を覚えたか。そして武器を犠牲にしながらの攻撃、魔法を使えないの者としての知恵か。

 だが、相手が悪かったな。奴らの武器を見てみよ。


「す、砂が…槍に集まっていくぞ…。」

「で、でけえ…。」


 そうだ。砂がまた、一つの大きな槍を形成していっているのだ。さながら其れは砂漠に(そび)え立つ巨大な黄金塔のようだ。

 大きさは先の20倍以上。


「逃げ場なんてねえ‥じゃんかよ…。」

「詰みだな、こりゃあ。」


「ま、まだだ!! こんなにでけえ槍なんか持って自由に動ける訳がない。隙が出来てる筈だ!! そこを狙って攻撃するぞ!!! 」


「だ、だよな…。よし!!さっきと同じだ、皆んな武器を投げろ!! 魔法を使える奴は撃て!! 」


姉者(あねじゃ)、頼む。」

「承知。」


 姉は飛んでくる武器、魔法、全てを手に握る槍で捻じ遂せる。

 弟が巨大な槍を持ち、その横で生じた隙を姉が守り補完する、見事な連携だ。現に他の選手共の攻撃は姉によって全て防がれている。


「そろそろだな。」


 弟は巨大な槍をリングを一周する様に一線する。槍が振り回される風圧で吹き飛ばされる選手すら見える。大した威力だ。当然避けられぬだろう、空でも飛ばない限りは。この大きさではな。


「や、槍が追ってくるっ!!!」

「に、逃げろーーー!!」

「逃げるって何処へだよ!!!」

「おしまいだあぁぁ!!」


 阿呆(あほう)共め。慌てて何になるというのだ。逃げられぬのだろう?なら、なぜ…


 巨大な槍に向かい我は歩を進める。


(あん)ちゃん!! 危ない!!そんな所にいたら槍にヤられるよ!!」


 なぜ…


「無謀だぜ、あの騎士。何しようってんだ?」


 なぜ…


「なぜ貴様らはあぁー、奴らの槍を砕いてやろうと位考えんられんのだあああぁぁぁぁーーーー!!!」


 我は手を伸ばし、槍は我の手の前で止まる。


「!? な、何だ? 槍が勝手に止まった…」

「違うだろ、あの兄ちゃんが止めたのか?」


「止めたのではない。」


「は?」

「どういう事だよ?」

「止まってんじゃねえか。」


(ただ)止めたのではない。」


 次の瞬間、砂の槍にたちまち亀裂が生じ、逆さにしたジグソーパズルの様に全てが砕けていく。


「「「「!? 、 え… 」」」」


「『ロマノフ式抜刀術直伝-鬼速斬(きそくざん)』」


 攻撃は防御を兼ねる。逃げているだけでは到底至らぬ境地だろうな。貴様ら全員、後で騎士団行きだ。


「我はレオーネ共和国騎士団長、ゼネス-ロマノフ。」


 姉弟に対して名を名乗る。我なりに敵が強敵であると認めた証拠である。


「ゼダ潮、プルート-スラベフィ」

「ウラヌス-スラベフィ」


 名乗ったな。名を名乗る事は決闘の証。この勝負、我の心に永遠に刻まれるものとなろう。

 では、先ずは奴らの間合いに入ろうか。10メートル、奴らからその位置に足を踏み入る。


「油断。」

「そこは(もう私達の)攻撃範囲。」


 槍が頬をかすめる。

 魔法が身体すれすれを通過する。

 だが当たらない、当てさせん。

 名乗ったのだ、『騎士団長』だと。誇りをかけて貴様らを倒す。

 我の物理的(魔法を使わない)攻撃範囲は奴らより狭い。

 が、もう当てられるぞ、貴様らに、攻撃を。


「ぐっ!!」

「ガハッ!!」


 溝内を狙ったのだ、痛かろう。拳がめり込んでおるぞ。そのまま腕を振る、吹き飛べ。

 二人が障壁に衝突する音は… 聞こえない。宜しい、受け身をとったか。


「油断だな、近づき過ぎだ。気づかなんだのか? 貴様らは我に誘導されていると。」


 ギリギリでかわし続け、『あと少しで攻撃を当てられる』と思わせることで己の間合いに相手を引き込む。誘導戦術だ。

 だが、もう一回チャンスをくれてやろう。


「どうしたのだ? 貴様らの間合いだぞ、攻撃せんのか?」


 先の一撃で仕留めても良かった。しかし、それではつまらんだろう。二人の成長が気になるしな。もう一度奴らから離れて我が不利な状況を作り出す。


「魔法だ、姉者」

「承知 」


「『穿(うが)て-土鯰(スエロバグラ) 』」


 土魔法遠距離型、土の爆弾か、遅いな。魔力量を見るに、威力は有りそうだが速さが足りない。避けるか、いや、威力に自信が有るというなら我がそれ自体打ち砕いてやる!!

 剣で土魔法をすべて切り裂いてやろう。


「『(かた)めろ-粘池(ヴィスエスターク)』」


 先の攻撃は弟のみ。次は姉か。同時攻撃では無く少しずらしての攻撃、こんなものでは我を翻弄するには足りん。

 水魔法、これもまた弟と同じ、威力しかない。言うなれば少し強めの水鉄砲よ、こいつもすべて切り裂いてやろう!!!


 ギチギチギチ


 なっ!?!!!

 なんだっ!! 剣が動かん。重い、そして剣が手から離れん。こ、これは…粘土!?剣とそれを握る右手に纏わりついておる。


「これで武器は封じた。」

「右手も。」


 成る程な。真に油断していたのは我の方だったか。スピードが遅く威力馬鹿の魔法に見せかけ、真の能力は二人の魔法が合わさった時にのみ発動する封じ込め系の魔法だったとは。


「ふ、ふふ、ふははっはっはあああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」


「「!? 」」


「是非、騎士団に欲しいな。二人の連携、個々の魔法技術、槍術、そして戦略的頭脳、素晴らしいな。どうだ? 来ないか、我が『レオーネ騎士団』に。」


「変な笑いをする奴なんか上司にはもたない。」

「右に同じ。」


「そうか、なら…強い上司はどうだ?


『焼き焦がせ-炎帝剣(レーヴァテイン)!!!!』 」


「「な‥に‥‥!?」」


 火が、炎が、焱が、燚が、全て我が味方となり、顕現される。そして、あらゆる灯し火は我が剣と同化する!!!

 粘土に埋もれた剣から光が差し込む。灼熱を超えた熱血の剣が眩い光を纏い姿を現わす。

 土など形は保たん。流動系など生温い、残すは塵のみ。騎士団長にのみ許された禁断の技よ。しかと目の裏に刻みこめ。


「『ロマノフ式抜刀術直伝-紅光凰(コウザン) 』」


 光の如き太刀筋貴様らに見えたか?それは貴様ら姉弟を既に斬っている。

 気がついておらぬだろう、気を失っていてはな。この速さに、熱さに、力に。


「続きは騎士団で受けてやる。」



 バタン と二人は力無く地面に倒れた。




「あの兄ちゃん、軽く二人を倒しちまった。」

「け、剣が眩しい。」

「レオーネ共和国騎士団長ってマジかよ。若いな。」


 さて、我の気を惹くのは他の戦士共の歓声では断じてない。

 あの少年、水渦の中に入り出てこない少年。

 奴は初めに二人の男を倒した。二人は我の騎士団の兵士だ。そいつらをいとも容易く倒すとは…。

 信じがたいが試してやる、確認してやる。魔法に隠れて怠けているが、本当の実力をな。


「『(あくた)に帰せ-炎嵐(アグニトルエンテ) !!!!』」


 渦には渦をくれてやろう。が、こっちは少しばかし火傷が酷くなるかもしれないがな。戦士たる者、覚悟を決めい。

 我の剣に纏われていた炎が巨大な竜巻となり形成していく。


「や、やべえーー!!」

「こんなん食らったらひとたまりもねえよ!!!」

「ブクブク…」

「おいっ!!気絶すんな!!逃げるぞ!! 」


 今になって少年の魔力の流れに変化が感じられる。此方の動きに気がついたのか?

 だが、どちらでも良かろう。

 では、行くぞ!!!


「喰らええええぇぇぇーーーー!!!!」


 炎の竜巻が少年を襲う。


「『()まれ-清水(アクアクライラット)』」


 その時だ、奴が動いたのは。

 空中に大量の水が現れ、水の渦と融合してゆく。徐々に水渦の回転力及び大きさもとい威力が増す。

 これは渦では収まりきらない。我と同じ竜巻だ。

 二つの魔法は互いにぶつかり合い、そしてあらゆる衝撃を生み出し、消滅した。辺りが蒸気で埋め尽くされる。

 この時点で我と少年以外の選手共は皆脱落だろう。とても今の衝撃に耐えられるとは思えん。いや、もしかするとあの少年ですら…


「なあ、そこの騎士さん。面白いな、さっきの技。

 でも……まだまだだぜ。」


「ほう、なら、レクチャー願おうか。我をどう倒すのか!!!」


 一筋縄ではいかない決闘の予感が我をさらに奮い立たせた。

本文と全く関係ありませんが一言


先日、私の仲間が『鬱ガチャ』なるものを引き、本当に鬱になりましたw

皆さんも『鬱ガチャ』を引くときはくれぐれもお気をつけ下さい。

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