エピローグ
小鳥たちの、囀り声が響く。
そこは、とある森の中。
あたり一面は植物で埋め尽くされ、緑色に染まっている。
地面に降り積もった葉っぱは大量だ。
生物達の生活を営む声が響くその場に、突如としてドスンドスンという何かが迫ってくる音が鳴り響いた。
それの足音に生物達はびくりと体を震わせて、一目散に逃げて行く。
それは――、ドラゴンだった。
体長は三メートルほどの橙色の肌を持つ爬虫類。
「―――今日も森は平和じゃの」
ドラゴンが声を発した。
その見た目からは想像出来ないほどに穏やかで、優しい声である。
どうやらこの世界のドラゴンは知性があるらしい。
「ん?」
自分の住処である森の中を移動するそれは、不思議なものを見つけた。
「何故、此処に人が居るのだ?」
人にとって危険な生き物たちが闊歩するこの森に、人が居た。
それも二人。
こんな場所だというのに意識を失い、大地に身を預けていた。
一人は男――炎のように赤い、紅色の髪を持つ少年。
一人は女――夜のように黒い、夜色の髪を持つ少女。
寄り添うように、手を繋いで、その二人は安らかな表情を浮かべていた。
その左手には、同じ形をした腕輪がはめられている。
一瞬、死んでいるのかと考えるそれであったが、近づくと寝息が聞こえてきた。
「ふぅ」
それは、安心したように息を吐いた。
その森の主であるドラゴンは、人が好きだった。だから、二人を安全な場所まで、自分の住処まで運ぶ事にした。
人は面白い、というのがドラゴンの見解であり、このような場所に居る人ならば一層面白いのだろうと期待して。
後に二人が『異世界人』であり、酷く常識を知らない事を知り、まるで母親のようにドラゴンが世話を焼くのはを別の話である。
とりあえずこれで一旦完結。
気が向いたら別に異世界に行った二人のお話を書くかもです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。感想などもらえれば嬉しいです。




