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同好会の裏話

 兄が席を離れた後、千春と宗一郎と再び同好会のことを話しながら、のんびりと食後お茶を楽しむ。

もの言いたげだった蛇がいなくなり、ゆりかはさっきと打って変わってリラックスモードだった。


 話題はやはり同好会についてである。


 どうやら最初はレクリエーション同好会を発足しようとした貴也が兄に相談するため、生徒会室に来たのが始まりだったらしい。

同好会を発足するにはまず中等部生だけでも人数を合わせなければいけない。最低人数は5人。

しかし、ゆりか、悠希、貴也、千春だけでは足りない。

そこでその場にたまたま居合わせた宗一郎に話が回ってきたそうだ。

レクリエーション同好会の表立った活動は月に数回しかないため、部活と生徒会で多忙な宗一郎も参加できそうだったので、話を受け入れた。

 さらに、その相談に乗っていた兄も以前から、生徒会として、中高の親睦を図れる活動を考えていたため、貴也の発足したレクリエーション同好会に目をつけた。

高等部生であり学園の総代表でもある兄が参加し、一緒に動きだしたことで、意外にも学園の中でも注目を浴びているプロジェクトとして急浮上しているそう。

ちなみに貴也に次期生徒会執行役員の白羽の矢が立ったのも、このプロジェクトに関係していたかららしい。


 「要は今まで社交パーティーが担っていたものを、健全な子供らしいアクティビティに変えて生徒同士の親睦を図ろうってことね」

宗一郎の話にゆりかが納得したように頷く。

「これは人数が増えそうな予感だわ。

ゆりかさん、仲間内でワイワイじゃなさそうよ。

よかったじゃない」

千春に肩をポンと叩かれる。


 なんだかなー。

アオハルから遠い気がするのはどうゆうことだろう。


 イマイチ素直にうんと言えずに微妙な顔をして押し黙っていると、ゆりかの大好きなショパンの曲が辺りに響く。

ショパンの幻想曲。

『真島ゆりか』が最後に練習していた曲。

誰かが食堂の中心に置いてあるグランドピアノを弾いているらしく、食堂中に響き渡っている。

ゆりかが弾くよりも力強い音色。

男の人だろうか?

どんな人が弾いているのだろうと振り向くも、ゆりかたちの席からはちょうど柱の影で見えない。

残念だ。


 個人的にはピアノを弾いている人にはイケメン希望だ。

イケメンピアニスト、ちょっと萌える。

そんなどうしようもないことを考えていると、「どうしたの?」と千春に話し掛けらる。

「あ、いえね、ピアノがすごく上手な方だなって思って、聴き入ってたの」

「ゆりかさんもピアノ弾けるもんね」

「へー、ゆりかちゃんもこの曲弾ける?」

「ショパンは好きだから、この曲も練習したことあるわよ」

「じゃあ、ゆりかちゃんもあそこで弾いてみてよ」

「え?」

「あのピアノは弾きたい人が弾いていいんだよ」

「え、そうなの?てっきり音楽系の部活関係の人かと思ってた」


 今弾いてる人はかなりの腕前だ。

あの幻想曲を公衆の面前で、ほぼミスタッチなしで弾いている。

自分があそこまで弾くには、かなり弾きこまないとできないかもしれない。

今すぐに弾けと言われると、自信がない。


 「練習しなきゃ弾けないから、また今度ね」

ゆりかの言葉に宗一郎が「じゃ、約束ね」と楽しみだとばかりに無邪気に笑う。


 「そういえば、この学校やたらみんな楽器できるよね。嗜みとか言って。まあ、私みたいに楽器が苦手な部類もいるんだけど」

「大丈夫、俺も習ったことないから」

二人が話しているのを聞きながら、ゆりかはまたピアノに向かって視線を送る。


 曲が終わって数秒すると、周囲を女生徒に囲まれたワイシャツ姿の男の人がピアノから離れていくのが、チラリと見えた。

長身の男性だった。

遠くて顔までは見えない。


 高等部生だろうか?

上手い人がいたもんだ。

女生徒に囲まれてるってことは…………。


 「イケメンかなあ?」


 ついポロリと心の声がだだ漏れになる。


 「「は?」」

 唐突なつぶやきに、千春と宗一郎が振り向く。

その二人の声にゆりかも我に帰る。

あ、やばっ。


 思わず口を押えたが、それはあとの祭り。

この後、宗一郎には問い詰められ、千春には散々いじり倒されたのだった。


*****


 終礼が終ってザワつく教室。


 ブルル……と震えるスマホの画面を覗きながら、期待通りの兄からのメッセージにニンマリする。


 『今日はジョギングなしで』


 今日のゆりかのクラスの終礼はいつもより終わる時間が早い。

同じフロアにある同学年の教室はまだ静かだから、一番早かったのだろう。


 兄とのジョギングがないならとゆりかは、そそくさと帰り支度を急ぐ。

「千春さん、ジョギングはなしってお兄様からメッセージがきたわ」

「じゃあ、ゆりかさん、今日はアイスでも食べて帰らない?」

千春の提案は魅力的に感じたが、ゆりかは首を横に振る。

「悠希君の足の検査に付き合おうかと思うの」


 千春はゆりかの返答に、朝見た悠希の足を思い出し、自分が想像している以上にゆりかは彼の足に責任を感じているのかもしれないと思った。

「どちらの病院に?」

「実は今きいているところで、どこかわからないのよ……」

その時再びブルル……!とゆりかのスマホが震える。


 ゆりかがゴソゴソとスマホをスカートのポケットから取り出し画面を見ると、その大きな目が見開かれた。

「ゆりかさん?」

千春も覗きこむと、悠希からのメッセージだった。


 『総合病院で検査する』

何てことないただの一文。


 「……総合病院……」

 

 強張った表情のゆりかがポツリと呟く。

千春はゆりかの反応に顔を傾げる。

「総合病院って高円寺家が懇意にしてる病院よね?

あそこは設備が整ってるものね」

 

 千春の言う通り、総合病院は高円寺家お抱え医師が院長をしている病院。

高円寺家からの援助もあり、この地域で一番最新設備が整っている。

和田の御曹司が精密検査を受けるとなれば、そこの最新設備で検査するのが妥当だろう。


 だけど……。

だけど…………!!


 ゆりかの脳裏に再び昨日の男の顔が浮かぶ。

ゆりかの手に力がこもり、スマホを握りしめる。

 

 あそこにはあの人がいる。

昨日のあの男……。


 ――――あれがナオなら………会いたい……。


 もう交わっていけないと決めたはずの前世の家族だったはずなのに、懐かしい影に手を伸ばさずにいられない『真島ゆりか』の存在がそこにあった。


 


つ、次こそ真島先生ターン??(^^;)

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