9.プレゼント
図書館に到着した。
しかし、それよりも気になることがある。
いや、別に大したことではないんだけど。
さっきの場所から、この帝都の中心部になるであろう方向に図書館はあったんだが、より中心部の方向に、5メートル程度の、城壁というには厚かましい程度の壁がある、のが見える。
「カグヤ、あれはなんなんだ?」
「あれ? ……ああ、あれは“区切り”よ」
区切り。
「何と、何をだ?」
聞くとカグヤは、人差し指を二本立てて説明してくれる。
「王族プラス、貴族と、その他よ」
まあ、やっぱり。
「なんとなくそうじゃないかとは、思っていたけど」
「じゃあ聞かなくても良かったじゃない」
別にいいじゃん、冷たい奴め。それともちょっと不機嫌?
「早速、図書館に入っていいのか?」
「うん、最初に銀貨一枚司書に預けてね。そこにある名簿に名前も書いて」
図書館に入り、先程カグヤの言った通りに銀貨を預け、名前を書く。
凄く今更な感じだけど、異世界の文字もなんとはなしにかけるらしい。ホント、今更だけど。
するとカグヤが、図書館だからなのか小声で聞いてくる。
「で、どう? 図書館に入った感想は」
「ああ、一々そうなんだけど、広いなあって思うな。やっぱり」
冒険者ギルドも、帝都自体も。ここにくるだけで、ギルドから1時間近く歩いたし。
「そりゃそうよ、ヘイム帝国なんて五本の指に入る超大国よ? 武力だけで言ったら、大陸一かもしれないわよ」
「そういう事を調べにここに来たんだ。今日は、俺はここに入り浸るぞ」
調べ中………
色々と本を集め、読んでみた。
馬車のおっちゃんが教えてくれた情報と大した差異は無かったが、魔大陸などについておっちゃんはよく知らなかったので、来て良かった。
調べた結果をまとめると、こんな具合だ。
〜夢大陸〜
色々な種族の住むこの大陸に漂流し、助けてもらった冒険者が多いことから、この名前がつけられた。
〜魔大陸〜
魔人族たちが住んでいる。
別に魔人だからといって、悪い奴らというわけではない。
魔族たちの国の王、つまり魔王もいる。小国でも『魔王』な訳だから、結構いる。
魔王だからといって、すごく強いとかはない。強いのもいるが。
人間の国並みにでかいのは龍国と呼ばれる国や、スーパーツイン様大大大王国、などだ。
本・大陸は語る より
〜歴史〜
神はこの世界に六匹の龍を放った。
龍だ、竜じゃない。
火龍
水龍
風龍
土龍
光龍
闇龍
取り敢えずそれだけ。
本・モンスター百科事典 より
〜進化〜
モンスターは一定以上の経験を得ると、進化する。進化すると、LVの数字が上がる。
一回進化すればLV2。といった具合に。
〜人族とつく者たちは、一部を除き、進化はしない。
しかし、人族には“派生”がある。
そうなれる資質がある人間が強い感情に支配されると、“怪人”と呼ばれる身体能力に長けたモンスターになる。
モンスターほど理性はトんでいないが、人間に害を与えるためモンスターとされる。
それらは不老であり、これまでの在歴11045年の間に生まれたのはたったの二体だけではあるが――
――まだ一体たりとも討伐に成功してはいない
本・種族と進化 より
とまぁ、こんな感じだな。他にも結構調べたが、相当数読んだのでそこまではまとめられない。
ともかく今日はためになった。
ちなみに上記の本は全てネウロ・オーバーという、世界地図を作った人の本、らしい。
/////
プクー。
スタスタ
「………………」
プクーー。
スタスタスタ
「………………」
「プクー!」
「口で言うな、口で」
図書館を出てからというものの、カグヤの不機嫌が収まらない。
「おい、そろそろ機嫌直せよ」
「むぅぅぅ……」
「もう1時間近く経っているぞ、そろそろいいんじゃないか?」
すると、カグヤはピタッと立ち止まり、こちらを指差しながら、
「あのね、機嫌はね、時間とかそう言うので直すものじゃないのよ!」
………。じゃあ、俺はどうすればいい?
「機嫌っていうのはね、その理由を起こしたものが、不機嫌を直すものなの!」
だから何かお詫びをしなさい! と、カグヤは言うが、こちらとしてはなんで機嫌が悪いのか分かっていない。
「じゃあなんで起こってるんだよ、どうして『不』なのかが分からないんじゃあ、お詫びれない」
「………デート、」
「デート?」
キッ! と、しかし少ししおらしいようにこちらを睨む。
「今日はデートだと思ってたの! 久しぶりの! それが、7時間近く図書館にいるとは思わないじゃない………」
デート。そうか、カグヤからしてみれば一年ぶりに彼氏である俺とデートする機会だった訳だ。楽しみにしてくれてた訳だ。
「デート、したかったのか?」
「…………」
コクリ、と頷いてくる。そうか、流石に悪いことをしたな。
「分かった。今月中には、なんとかしてみる」
「……今月中? 長い、今週中には何とかして」
今週中か。ちなみにいうと今は
在歴11139年
7月14日
月曜日
6時
である。
一週間近くあるわけだしお詫びに贈り物の一つくらい見繕えるか。
「分かった、今週中な。それまでに今日のお詫びを用意しておくよ。埋め合わせも考えるし」
「うん、凄く期待しておくっ」
なぜかすごく期待されてしまった。
若干プレッシャーを感じ、自分の言ったことを後悔していると、前を歩いていたかぐやがくるっと振り返り、
「私が跳んで喜ぶものじゃなきゃ、お詫び百倍にするからねっ!」
カグヤは、夕焼けにその顔を照らされながら悪戯っぽく微笑む。文字通り、輝くように。
……頑張るか。
明日から冒険者活動だ。
俺はそう思いながら、百倍は多いんじゃないかと感じた。
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