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女神男子の正解を  作者: 作意 扉
第零章:スタートの前
11/18

11.奴隷




 魔法陣というのは便利だ。

 戦闘中に書いてる暇はないが、事前に書いておくことで幾らでも汎用性が出る。


 魔力を込めるだけでその効果を発揮するということで、一般市民にも使えるようになっている。危険性の高いスクロールは市場には回らないけれど。

 魔法陣は簡単なものであれば市民でも自分で書いて普通に使う。用途は涼んだり、火種を起こす程度だが。

 

 魔法陣の中には、魔力を込め、衝撃を加えて初めて効果を発揮するものもある。それは主に、トラップとして使われる。


 媒体としては基本何でもよく、魔法陣さえあっていればあとは魔力込めるだけ。相当な大魔法というレベルでもなければ、壊れはしない。

 そもそもそんな魔法を起こすだけの魔力を持っている人が少ない。


 まあ冒険者からしてみれば便利なスクロールを危険だから使わないなんてバカでしかない。

 特に“転移”のスクロールは「妖精ピクシーの蜜」で「キングトゥレント」

の紙に書く必要がある。しかも魔法陣自体緻密で、とても作るなんてことは出来ない。



「で、その転移のスクロールが手に入るらしいんだよ!」



 ギルドのテーブル席で、リリが興奮したように叫ぶ。俺とカグヤはその話を長々と聞かされていた。周りにいるゴリゴリとビートにも、話は通してあるらしい。


 魔法陣か。そういえば図書館でいくつか覚えたな。「冷却」とか「発火」とか、生活に役立ちそうなのを。

 リリが興奮を収めて、話を続ける。

 


「なんか闇市らしいんだけど、別に危険でもないらしいからさ、行ってみようよ!」


「少し遠くなるんだけど、値段も大したことないって話だし、こんなチャンス滅多にないからね」



 付け足すようにビートが勧めてくる。転移か。実際一回体験したことがあるが、意識はなかったからな。使ってみたい願望はある。

 というか断る理由がない。


 カグヤがいなかったら、闇討ちか!? とか思うところだけど。流石に疑心暗鬼になり過ぎか。昨日ビートたち、このことを調べてたんだろうしな。



「別に良いよ、行くか」


「私も良いわよっ!」



 朝からカグヤの機嫌がめちゃくちゃ良い。

 ……まあ、昨夜の事だろうな。上手くやれてよかった卒業しましたありがとうございます。

 それはともかく今はスクロールだ。






/////






 大通りから外れ、人通りの少ない道を通る。そこからさらに路地裏、路地裏。と回ったところ。まだ市場にはつかない。

 まあ闇市ともなればこんなもんか。


 俺たちは先頭にリリ。そこから俺、ビート、カグヤ、ゴリの順で歩いていた。帝都が広いのは知っているけど、流石に疲れてきた。



「まだつかないのか? 結構疲れてきたんだけど。」


「ん? いや、もうちょっとだよっ」



 リリが振り向かずに、いつも通りの元気すぎる声で返事してくる。そうか、もう少しなら頑張るか、と息を吐く。


 歩きながら周りを見てみると、とても立派とは言えない、ボロ小屋の数々。そして周りには、ポツポツと人が座ってる。

 全員目つきが悪い。「なんだこいつら?」みたいな目をしている。

 スラム街みたい。早く抜けたい。



「この先だよ!」



 唐突にそんな声が聞こえてきた。リリの声だ。目の前を見てみると、3個目の路地裏。

 そうか、この先か。長かったな。


 路地裏を進んで行く。進んで行く、進んで行く、進んで行く………


 すると足元にフッ、と影が現れる。


 影?

 上から何か落ちてきてるのか?


 上を向く。

 黒い影。

 影からのびる光る剣。



 ……っ! 襲われてる!?

 すぐさまバックステップを踏……


 ガンっ!




 後頭部に強い衝撃。

 ? 何が起きた?

 体が動かない。

 え、なんで?


 体が倒れてることに気づく。

 え、ちょっと。

 え?


 うつぶせに倒れている俺の上から、声が聞こえてくる。



「フゥ、上手くいった」


「協力、感謝する」


「ああっ! いえいえ! 公爵様の遣いが、私たちなんかに頭下げちゃダメですよ!」


「そうですよ。それより、早く連れていってくれませんか? カグヤは傷付けたくないので」



 ……裏切り?

 ヤバイ

 俺死ぬ? どうなる?

 ていうか頭いってぇ……

 体だるいぃ……


 ……ん? カグヤ?

 そうだ、あいつは……



「んぐぅううッ! んっ! んっ! んんんんっ!」



 声が聞こえる。

 籠っている、しかし明らかな怒声。動かない体を、首だけ回して後ろを見る。


 すると、視界の少し先でカグヤがゴアラに拘束されていた。カグヤは全力でもがいて、こちら側に強い視線を寄越す。

 ゴアラはカグヤの口を塞ぎ、完全に拘束し……


 は?

 おいおい、

 離せよ。

 何してんの?

 え?

 いや、あり得ないって。

 何してくれてんの?



 まじで

 何

 してんだよ

 おまえ



 気づいたら、自分の右手にデカイ火球(ファイヤーボール)が出来ていた。

 轟々とうねるそれは、これまでで作ったどの火球よりもでかかった。


 なんだこれ? と思う前に俺はそれをゴアラに投げつけた。

 と思った。

 しかし、それを放つ前に後頭部にもう一つ強い衝撃がきた。


 ガァンッッ!


 その瞬間、俺は意識を手放した。

 手放してしまった。






/////






〜カグヤ視点〜


 目の前が真っ白になった。どうしてこうなったのかわからなかった。

 なんでルイが?

 コラン公爵?

 いや知らないよ誰それ。


 暴れた。訳も分からないまま、暴れた。頭の中真っ白のまま。とにかく許せなかった。


 なんで、あいつらはルイを連れて行くのか。どこへ? ねぇ。


 やめてよ


 暴れた。暴れて、暴れて、暴れまくった。涙もたくさん流して、剣も抜こうとした。

 躊躇なく斬ってやろうと思った。


 その辺りから意識が途切れた。






/////






 気付いたら宿で寝ていた。寝させられていた。

 起きれば目の前に、仲間の三人がいた。三人はひたすら話しかけてきた。語りかけるように、説得するように――


 ――擦り込むように。


 私にはビートたちの言っている意味がわからなかった。耳に、入らなかった。


「コレン公爵に言われたんだよ」

「公爵に言われちゃ仕方ないって!」

「依頼の報酬も良かったしな」

「脅されたわけだし、気にすることじゃないよ」

「カグヤには、悪いことしたけど、今回のことは忘れよ?」

「ああ、あの程度の使い手なら、すぐに集まる。金もあるしな」


 言っている意味がわからない。頭に入らない。入っても理解したくないようで、脳が拒絶しているのがわかる。

 昨日まで、いやさっきまで。信じてた。みんな仲間だった。凄く仲が良かった筈だった。


 もう嫌だ

 嫌だよぉ……




/////




 また気づいたらあの場所にいた。ルイが連れ去られた場所。

 戻ってくるかもしれないなんて、思って。


 自分の拳についている血を見て、自分がナニカを殴り飛ばしたことを認識した。

 どうでもいいけど。


 雨が降ってくる。

 ここでいくら待っても、ルイは帰ってこない。虚しい雨音だけが、響き渡る。

 

 ズキン……


 お腹の下の方が痛む。

 昨日、私は初体験を迎えた。

 大好きで、尊敬していて、ちょっと意地悪で。でも、それも含めて大好きな――


 ――もう会えないかもしれない人。


 ルイはコレン公爵の奴隷になった。それも雑務を任されるような、使う(・・)奴隷ではない。実用の奴隷だったら、わざわざ捕まえにきたりしない。


 噂で聞いた、コレクションだろう。コレクションは特別な部屋に閉じ込められて、コレン伯爵や、その補佐の人たち専用の奴隷になる。


 用途までは知らないが、きっと痛ぶられたりするんだろう。殴られたりするんだろう。


 ルイが、コレン(あいつ)にいいようにされる。そう考えてみると、腹わたが煮えくりかえるような感覚を覚えた。


 ふざけるな、と思った。


 どうすればいい? ルイを、助けるには。


 ルイが単身で出てこれるとは思えない。

 コレン公爵の屋敷にはこの帝都に8人しかいないA級冒険者の一人が専属で警備をしている。

 他にもC級冒険者クラスの実力者が、何人も警備に回っている。

 そもそも奴隷の契約魔法をかけられたら、逃げようがない。


 私が、助けるしかない。

 どうやって、どうすれば――



 ――どうすればルイにもう一度会える?

 ここまで読んで頂いて、、ありがとう御座います。

 拡散、ブクマしていただけると有難いです。

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