第三章:魔王領近辺調査編-第一話
ユダと見慣れない女性が話している。
「何もかも枯れ果ててるな…」
「土地の魔力が枯れてるからねぇ。ここの植物はそりゃ枯れてしまうさ」
例の任務から1ヶ月後、奇襲部隊と情報部隊は先の任務での異常個体の魔獣の元凶を調べるため、魔王領近くの調査へと赴いていた。
そして、この任務にはS級も派遣されている。
普段はいないふたり、ショートヘアと大ぶりなアクセサリーが特徴的な女性と、彼女に抱き抱えられている一見ただのぬいぐるみの自我のある人形。
ヴィリイとメアリーだ。
「ヴィリイさん。先の発言から察するに、ここはエルフの森…ということですか?」
「A級情報隊長、良いとこに気付いたな。そうだ、ここいら一帯はもとは純度も魔力量も最高級の魔力だけで構成されてた森だよ。今は、見る影もないけどな」
そんな風に認識の擦り合わせをしながら、着々と採取等の調査を進める。
そんな中、ヴィリイがつけているアクセサリーのうち一つがジジジと震える。
「ふむ、反応したね。彼女の方にも連絡をしようか」
そして今度はネックレスに着いた宝石を口に寄せる。
少し遠くにいた最強がいつもは着けていないイヤリングを揺らして駆け寄ってくる。
「ヴィリイさん、魔力が枯れてない場所を見つけたって…」
「うん。ほらみて。木は枯れているが草はまだ枯れきっていない。分かりづらいけどね」
ヴィリイが指さした草むらは確かに他と比べたらまだ先が緑の雑草がチラホラと見かけられた。
「これを追ってみようか。何か掴めるかもしれない」
メアリーを下ろしながらヴィリイはそう言った。
「上にも人を配置しましょう。テルや浮遊系の能力持ちがこちらに数名います。森で迷った時に俺らだけでは対処しきれないこともあるでしょう」
「ふむ、いい指摘だ。ではA級情報副隊長にブレスレットを渡しておこう。これなら上空でも無くしづらいだろう?」
そう言いながらテルにブレスレットを投げ渡す。彼は少し驚いた様子でそれを受け取る。
「……あの、その階級で呼ぶのやめてくれませんか。俺らには他に個人を特定する名前があります」
「ふーむ、君らは私に名前を呼ばれるほどの存在だと?」
その問いを受けたユダは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「違うということを理解しているようで何よりだよ。さあ、先に進もう。
最強ちゃんも、先走らないよ。レオナードさんに口酸っぱく見張っとけって言われてるんだから」
「はいはーい、わかってますよ〜」
最強は、今回の任務前にレオナードにも再三言われた忠告をまたしても受け少し口を尖らせる。
そうして一行は魔力の残る雑木林へと足を踏み入れていった。




