第6話「恋とツッコミと婚活バトル!?」
フルーナの中央広場。夜。
きらめく無数のランタンが空を彩り、
観客席からは「恋しろ!」「出会え!」の謎コール。
中央にそびえるステージには、豪華なハート型の装飾。
そして、司会者は金のマイク片手に叫んだ。
「さぁーて今夜の《神酢婚活バトル》、開ッ幕ッ!!」
「ちょ、待って、え? これ、なに始まってるの!?」
「だし男、出るって言ったでしょ? あれ? 言ってないっけ?」
「言ってねぇよ!? ポンヌォォォ!」
「でも……優勝したら、“帰還の鍵”が手に入るかもよ?」
「えっ……マジ?」
観客の歓声が高まる中、だし男の肩に“恋の番号札(No.29)”が貼り付けられた。
「ルール説明ッ! 参加者はフルーナ中の独身女性たちと“甘酢トーク”を繰り広げ、心を射止めよッ!!」
「3ラウンド制、恋酢シャワーを浴びた者が敗退ッ!!」
「恋酢シャワーってなに!? どういう負け方!?ちゃんと 食用なのそれ!?」
「……ちなみにこれ、肌荒れするから気をつけて」
「マジで何なんだこの世界!!」
【第1ラウンド:恋の自己紹介!】
エントリーNo.5:筋肉系調味料鍛冶師「タンパクたまり」
→「恋も体づくりも、毎日の積み重ねッス!」
→(会場「おぉー!」)
エントリーNo.12:獣人系柚子農家「ユズミ・ファング」
→「私は……柑橘類にしか心を開けない……」
→(会場「ワォ……」)
そして――エントリーNo.29、味谷だし男。
「えっと……俺、ただの料理人で……あの、実は……帰りたいんです」
(……沈黙)
「けど……この世界で、“帰りたくないって思える何か”が、見つかったらいいなって……」
(……ざわっ)
「……だから、今日はちょっとだけ……本気、出してみます」
(観客「キャーーーッ!!」)
ポンヌ(心の声)
(……やめて。そんな顔で“何かを探す”なんて言わないで。探されるのが私なら、息ができない)
【第2ラウンド:恋の共同作業!】
だし男と女性参加者による“即興調味料作り対決”。
ポンヌは審査員席から様子を見守っている。
「だし男さん、これ……熱っしすぎじゃ――」
「いや、ちょっとだけ焦がすと香りが立つから、信じて!」
女性参加者の目がハートになる。
ポンヌの手が、ぴくっと動く。
ポンヌ(心の声)
(こら。信じさせるな。料理で落とすな。私だって信じてるんだから)
【第3ラウンド:甘酢告白タイム】
だし男の前に並ぶ、選ばれし5人の女性。
「だし男さん……一緒に帰る先、私にしてくれませんか?」
「料理、教えてください。ずっと、ずっと……隣で」
観客席が盛り上がる中、だし男は答えずに空を見た。
「……俺はまだ、誰かと一緒にいる資格がない」
「自分の気持ちすら、よくわからないから」
ポンヌ(心の声)
(……それでも、私だけは、隣にいさせて)
勝者なし。優勝者不在。
“恋酢”は誰の手にも渡らず、再び神殿に戻された。
観客たちは、「それも恋……」と拍手しながら帰っていった。
夜の都、フルーナには、恋のざわめきと甘酢の香りだけが静かに残った。
ポンヌはそっと言った。
「……ちょっとは、楽しかった?」
「うん。……でも、なんか悔しいな」
「なにが?」
「“わたしだけはずっとそばにいる”って、誰かに言ってほしかった」
「……ばか。聞こえてたら、言ってたのに」
「えっ?」
「なんでもない」
だし男は気づかなかった。
ポンヌの声が、いつもより少しだけ震えていたことに。
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次回予告:だし男とポンヌに予期せぬ展開が!?お楽しみに!




