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VRMMOで怪盗になってRMT業者から世界を奪い返します  作者: アサムラコウ
第二章 背丈違いのボーイミーツガール
18/27

2-8 Lost Eden

 ――無限増殖バグ

 (レトロゲー)から近年(最新ゲー)に至るまで、よくみられるグリッチである。このバグを使えば、本来一つしか手に入れられないレアアイテムも、無限に増殖させる事が出来る。

 無論、オンラインゲーにとっては、すり抜けバグよりもゲームバランスを崩壊させる、明確な、運営()への反逆。

 そしてその悪の華が、今、この楽園で咲き乱れ、


「やだぁ!? 私のナイスボディが!」

「ああでも、なんかまったりしますぅ、働きたくなぁい」

「よみふぃのガワに意識が乗っ取られてる!?」


 先程までの淫蕩の楽園を、お子様も安心なテーマパークに変えていた。


「貴女達!」


 思わず声をあげたマドランナに、5つも着ぐるみよみふぃ飛んできた。マドランナは咄嗟に、蒼い炎を吐いて、それを燃やし尽くす。

 ――その隙を付いて、するりと体を抜いたスカイは


「えっ」

「あっ」

「きゃあっ!?」


 ファントムステップで、着ぐるみに包まれたキャスト達へ飛ぶ。慌てて応戦しようとする彼女達だが、


「ああもう、手足が短い!」

「銅が長い!」

「三つ目の瞳の意味が無い!」


 拘束衣をつけた状態で戦っては分が悪く、1分もせずに、戦闘不能に陥る!

 全員がばたんきゅ~となった途端、変化の術はとけ、全員裸に近い状態で、花原にその身を横たえた。


「――助かった」


 スカイは、自分の窮地を助けてくれたキューティの方へ向いたが、


「キューティ!?」


 彼女が辛そうな顔で――額の目を閉じてまで――肩で息をしているものだから、慌て、駆け寄る。尻尾もだらりと下がっていた。


「大丈夫!?」

「あ、ああ、このグリッチは、どうも体力()を使う」

「――グリッチ」

「私のバグは、無限増殖のようだ」


 そう言ってキューティは、コリーフをスカイに見せた。


「淡い光に包まれているのが、見えるか?」

「――見えないよ」

「そうか、ならやはり、私だけのグリッチだ――多分(絶対)、お前が傍に居る時だけ限定の」


 理由は全くわからない、だがそれでも、二人はそれぞれに反則技(チート越え)を手にした事になる。それゆえに、

 ――その翼で高所を取ったマドランナが


シュガーファイヤー(甘焦がす蒼炎)!」


 彼女の、信条じゃない暴力で訴えてきても、


畳返しの術(イグサウォール)!」


 地面を叩く事で発動するニンジャの防御スキル、生成される防御オブジェクト、1枚だけでは防ぎ切れぬ炎の渦も、


八畳重ね(フローリングサイズ)!」


 枚数を増やせば対応出来る――炎の難を逃れたスカイは、彼女が火噴きで硬直してる所へ、一気に飛び、そして、


「はぁっ!」

「あがっ!?」


 踵落としを食らわせ、撃墜する。砂煙があがり、周りのキャスト達が悲鳴をあげる中でそのもやが晴れて、

 現れたのは、


「チェックメイトだ、昇天竜」

「否、堕ちた竜」


 その豊満な肉体を、すっかり、コバルトブルーのよみふぃの着ぐるみに包まれてしまった、マドランナの姿だった。

 彼女が誇り、自愛する、魅惑の肉体はもう晒されない。


「……抵抗しようと、1分経つごとに、私はお前をよみふぃに変化させる」

「胸の中に手をつっこむのは、紳士的じゃないよ、だけど」


 スカイは、覚悟を決めた。


「その姿相手なら、奪ってみせる」


 己の欲に、振り回されないように。

 その宣言に対してマドランナは、


「……私の負けね」


 そう、諦めの微笑みを浮かべた、

 ――その途端




 ドクンッ、と、

 彼女の胸の内で、ブラックヤードの装置が鼓動した。




「――閉じ込めないで」

「……え?」


 心臓をノックされた途端。己の身を可憐に包まれた彼女が、突然、

 奮え始めた。


「嫌よ、出してよ、ここから出して」

「マ、マドランナ?」

「だ、大丈夫か」

「――寒い」


 彼女は右目に涙を流して、そして、


「寒い寒い寒い寒い寒い寒い!!!」

「!?」


 その涙を蒸発させる程の、蒼い炎を、胸の中から爆ぜさせる!


「な、なんだ!?」


 全身燃焼――スカイのマントがはためく程の風圧!

 赤を越える高温は、マドランナを包むよみふぃの着ぐるみを燃やし尽くす!


「バ、バカな!?」


 拘束アイテムの焼却、設定的に有り得ない、もしもそれが通るとするならば、

 ――グリッチ


「――神様なんか要らない」


 だけどそれはセンスじゃなくて、彼女の願い、執念によって、


「私は私にしか救えない!」


 手にしてしまった一度きりの奇跡(バグ)、それが、

 ――世界を燃やす




 花園を燃やす、空を焦がす、流れる小川を煮え滾らせる。

 蒼い炎に燃え落ちていく楽園、その中央で、

 ――一糸纏わぬ姿になって

 局部を防ぐよう、蒼い炎を漂わせる彼女の姿は、


「――あれは」

「昔の頃の」


 ――英雄竜マドランナ

 かつてこの世界(ゲーム)を圧巻した活躍は、動画に残り、Wikiにも記録。

 今の彼女は豊満では無く――あの頃のようなシャープな姿、

 きっと、戦う為に、限りなくリアルに近似している肉体、


「奪わせない」


 ――色欲を求め飛翔した竜は


「私達の楽園を、貴方達には奪わせない!」


 その己の淫らさを燃やし尽くして、今、二人の前に君臨した。

 最強の竜として。




 衝撃が、スカイの腹に来た。


「――あっ」

「スカイ!?」


 鳩尾を殴られている――キューティが呼びかけたた時にはもう、蒼い炎をジェットエンジンにしてからのストレートパンチで、スカイは彼方へ吹っ飛ばされ、


「がっ!?」


 キューティも尾の一撃をくらい、スカイの方へ吹き飛ばされた。二人して、草の原に体を受け止めさせる。


「だ、大丈夫かキューティ」

「ス、スカイこそ、大丈夫か」


 二人のHPが大幅に削れる、ここで追撃をくらえば、負ける。

 だが、


「寒い、寒い、寒い!」


 彼女はひたすら己が体を、蒼い炎で燃やし続けていた。


「オ、オーナー落ち着いてください!?」

「どうしちゃったんですかその体ぁ!」


 キャストの反応からも、彼女が常の状態じゃない事が解る。


「胸に沈めた、ブラックヤードが暴走してる(バグってる)……?」


 キューティの推理――本来ブラックヤードに出来る事は、少しばかり使用者にとって都合のいい空間を作り出す事、だけどそれが、


マドランナ(自分)にとって、より都合のいい(バフ乗りまくり)空間を作り出せるようになったって事か?」

「おそらくそうだ――だが」


 それでも、キューティに理解不能の事として、


「何故たかが違法ツールが、彼女の心までを狂わせているのか?」


 ――人の心そのものを操る

 そんなプログラムなんて、存在するのか。

 だがそれでも事実として、己の身を抱きしめる彼女は、涙の代わり、目頭から蒼炎を零して、そして、


「愛してくれなんて言ってないわ!」


 唐突に、叫び始めた(至成年の主張)

 ――その言葉は


「理解も要らなかった、納得も要らなかった、ただ、知って欲しかった!」


 スカイやキューティだけに向けたものじゃない事は、解って、

 きっとそれは、


「だけど神様はそれを許さない! “私が在る事”すらを許さない!」


 彼女をずっと、生き辛くしてきたものに対して。


「だったらもう、戦うしかないでしょう!?」

「マドランナ――」

「貴女は……」


 ――切なげな声色と、苦しそうな顔色は

 100万遍の詩よりもずっと、彼女の”生い立ち(どうしようもない)”を伝えてきた。

 色欲を持つ事そのものが罪というなら、きっと、彼女は、


「私が間違ってるの? なら正してよ、私を、正しさで幸せにしてみてよ!」


 ずっと、罪人扱いされてきた。


「答えなさい、神様(運営)!」


 吼えの後――燃え盛る楽園ですら、耳痛くなる程のシンッとした静寂が辺りを満たす。

 ……まるで時が止まったような中で、

 怪盗と、忍者は、

 心を決める。


「神では、貴女を救えぬ」

「正しさだって――正義だって救えないよ」


 だからこそ、やる事は単純で。

 誰もが持っても不思議じゃない気持ちを、咎めず、叱咤せず、見逃して、あるいは肩を並べて楽しむような許し、


「だが聞いてくれ、色欲の竜」

「我達は神様じゃなくて」


 それはつまり、


「「悪党(ろくでなし)だ」」


 ――好きな物を好きと言える事は

 ステキな事だよと、言ってあげる事。

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