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VRMMOで怪盗になってRMT業者から世界を奪い返します  作者: アサムラコウ
第二章 背丈違いのボーイミーツガール
15/27

2-5 えっちなのはいけないと思います!←なぜ

 結論から言ってしまえば、えっちなのは悪く無い。

 えっちな事で、他人の心身を傷つけたり、自分を滅ぼす事がアウトである。

 前者は言語道断として後者について――人生、エロに対する自制心を覚えなければとてもまずい。エロは程々なら幸福の材料でも、過剰に脳を灼いてしまえば(ポルノ中毒)人生設計(生存戦略)をコントロールしにくくなる。本能という獣は乗りこなしてこそのもの。

 ゆえに、特に多感な思春期に、それをなるべく遠ざけるのは理に適ってはいる。

 ――とはいえだ


若人(わこうど)が修行僧でも無いのに、えっちな気持ちをスイッチのように全く断つ事が(こく)、というよりほぼ不可能なのは解ってるつもりだ」

「ご、ごめんなさい」

「あ、謝らなくてもいいし、正座にならなくていい、私はお前を軽蔑も断罪もしない」


 一度、VRMMOからログアウトした二人、パジャマ姿のままでシソラの部屋で向かい合っていた。ソラ、言われて足を崩したが、それを見たレイン、


(女の子座り――かわいい)


 と思ったけど、口には出さないレインに、ソラは続けた。


「マドランナさん、きっと、僕を堕とせると思ってます」

「そしてお前は、それに抗う自信がない」

「はい」

「ブラックヤードにお前が一人で行く事は、みすみす身も心も捧げるという事か」


 絶対にえっちに負けたりしない!→えっちには勝てなかったよ……。

 という風に、古よりエロは歴史を変えてきた。そう、2089年の今だって、今日もどこかで誰かがエロで交わる。

 それで生きる人もいれば、死ぬ人だっている事実。


「情けないですよね」

「いや、だから私は軽蔑しないと」

「怪盗スカイゴールドなら、有り得ません」

「――あっ」


 ソラが思い描く理想の怪盗は、どれだけの美貌を持つ女性相手だろうと、けして心を乱したりせず、愛する時は、何よりも真摯に愛を注ぐ。

 それに比べて、白金ソラときたら、


「簡単に、女性の人になびくなんて」


 そう自分を――貶めていた。

 ……欲情のコントロールはとても難しい、思春期なら当たり前の事を、余りに禁忌だと思ってしまうと、どこか歪に育ってしまう。

 やりすぎは良く無いし、我慢しすぎるのも良く無い。

 だけどそんなファジー(中庸)な感覚を、言葉で諭すのも難しくて。

 ――だから


「……後ろを向け、ソラ」

「え?」

「は、早くしてくれ」

「は、はい」


 ――訳も解らず立ち上がって後ろを向いた瞬間

 ギュッっ、と、


「――へ」


 ソラはいきなり、レインに抱きしめられた。


「っ!!??!??」


 人間、本当に驚くと、声も出せなくなってしまう。

 腕の暖かな感触、背を擦る胸の膨らみ、熱っぽい吐息、彼女の香り、

 そんなステキに包まれて、パニックになり顔真っ赤になるソラへ、レインは言葉を贈る。


「――何故私が、こんな事をしたか解るか?」

「わ、わかりません」

「こうしたかったからだ!」

「ええ!?」


 顔を真っ赤にするソラだけど、同じくらい、レインも顔を赤くした。


「その、正直、私のこの行いが、()でたいから来るのか、えっちだから来るのか、私にも解らない、だけど、暴走させていけないものだとは思う!」

「え、えっとレインさん」

「正面からハグは危険だと判断したから後ろからだが、こ、これでもう幸せ過ぎる……」

「あの、その」

「このまま、お前の匂いをスンスンするのはギリギリセーフだろうか?」

「ギリギリアウトですよ!?」


 ソラのつっこみに、すまない、と呟いて、


「――私だって、一目でお前をかわいいと思った」

「えっ」

「昔から、かわいいものが好きだった、だから学校の挨拶の時、”可憐な少年”なんて夢みたいな存在に心が奪われた、胸だって高鳴っていた」

「そ、そうなんですか」

「はしたない女と軽蔑するか」

「そんな事!」


 ソラは、後ろからハグをされたまま、しどろもどろになりながら、

 ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「なんていうか、嬉しいです、僕もレインさんが、キレイだと思っていた」

「――そうか、なんだか安心した」


 レインは、腕に力を込めた。


「私達は、最初は外面(見た目)で惹かれ合った、心を一等にせぬろくでなしだ」


 そして、告げる。


「お前と同じく、私も情けないから、安心してくれ」

「……そう、ですね」


 お互い、さっきまでのドキドキが少しおさまって、今は心地よさすら覚える。

 好きになる切っ掛けが見た目だとしても、今は互い、目を閉じていても、


「僕達、悪い人ですね」

「それはそうだ、悪党だもの」


 ぬくもり(体温)という、

 好きになっていく理由の芽吹きが、感じられて嬉しかった。

 ――人が人を好きになるのは

 優しさ、共感、意外な一面、趣味、居心地、エトセトラ、

 それに辿り着けるのであれば、

 切っ掛けはきっとなんだっていい。

 ……とまぁ、なんかいい感じに話がまとまった所で、


「それであの、どうしましょう?」

「え?」

「結局、問題は解決してないですよね」

「む」

「招待を受けた僕は、すり抜けバグ無しでも通されると思います」

「むむ」

「だけど、レインさんは通さない」

「むむむ」


 何がむむむだとつっこむ人おらず、ソラはレインにハグされたまま。


「こうやってお前を抱きしめてたら、ブラックヤードに同行出来ないか」

「多分、レインさんだけ弾かれます」

「お前の”多分”は絶対だろうな」


 でも実際の所、マドランナの誘惑をはね除ける為には、レインとの潜入が絶対条件だ。

 レインの目の前で堕とされるという、お約束な展開(ウスイホン)も当然あるが、単純に戦力的に考えても、数は多い方が良い。


「私にもグリッチ(すり抜け箇所)を見抜く力があればな」

「僕の力、貸せたらいいんですけど」


 それは、妄想の類いであった。

 ――だが


「「あっ」」


 二人同時に、可能性に気付いた。

 ――友達がくれた宝物







 翌日の夜――Lust Edenのシャワールームにて、この店と、この街の顔であるマドランナは、一糸纏わぬ姿でその豊かな起伏に、湯水を浴びて、流していく。

 しかしその体の大切な部分は全て、|ホワイトライトエフェクト《謎の光》で覆われる。運営の、R-18フィルター。

 わずらわしい、と正直に思う。

 それでもマドランナは、このVRでは全く意味の無いルーティンを、けして止めない。

 ――暖めずには要られないのだ


「ふぅ」


 シャワーの銓を締めた後、メニューから何時ものチャイナドレスに着替える。体の起伏にぴったりと吸い付く衣裳で、開店前のフロアへ足を伸ばせば、


「オーナー!」

「あら、オクトンナ」


 タコのキャストがうねうねとやってきて、そして、


「舞台の真ん中に、こんなのが!」


 8本足の一つに、トランプのカードを持っていて、その裏側にはマジックでこう書かれていた。




 明日12時、貴殿のブラックヤードを貰い受ける

 怪盗スカイゴールド




 それはトランプを使った予告状だった。


「ど、どうやって店に入って来たのか、オーナー以外店は開けられないはずなのに!」

「すり抜けてきたのかもしれないわね」

「え?」


 くすりと楽しそうに微笑みながら、マドランナは、柄の上に書かれたメッセージをみつめた。そして、


「数字を当てましょうか」

「へ?」

「ハートの7」

「なっ、なんで!?」


 ――怪盗の切り札

 ほんの少しでも、”怪盗物”というジャンルが好きなら、心当たる物がある。


「モーリス・ルブラン作『アルセーヌ・ルパン』に、トランプを題材にした短編があるの」


 切り札とは、他のカードよりも一等強い力を持つと、”自らの意志で定めた”カードに他ならない。

 ゆえに、ルパン(怪盗)の切り札とするのなら、


「|Le Sept de cœurb《ハートの7》」


 招待状の(なぞなぞ)を解いた怪盗は、

 返事の手紙(予告状)を送り届けた。


「と、ともかく、まずいですよオーナー! このままじゃ」

「ねぇ、オクトンナ」


 だが、そもそもに、

 何故マドランナは、こんな挑発をしたのか?

 ――理由は


「怪盗も恋に堕ちたクラブなんて、とってもステキだと思わない?」


 逃げずに、戦う為。

 自分の居場所(楽園)を守る為、

 もうけして、失わない為(失楽園)

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