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辺境の村の英雄、四十二歳にして初めて村を出る  作者: 岡本剛也
第3章

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第271話 爆弾揚げ鳥


 古臭く怪しい外観とは裏腹に、店内はかなりのお客さんで賑わっていた。

 看板に定食屋と書いてあったため、ご飯屋ではあるだろうと思って入ったが、正直中に入るまでは本当にご飯屋なのか心配していた。


 以前、別の街で似たような方法で店に入ったとき、違法薬物の売買店だったことがあったからな。

 この店はちゃんとした定食屋で一安心。


「へー! 結構賑わってるじゃん!」

「とりあえず席につきましょうか。空いている席に座っていいんですかね?」

「大丈夫だよ。好きな席に座ってちょうだい!」


 ジーニアの声が聞こえていたのか、店の奥からそんな返事があった。

 俺たちは唯一空いていた奥のテーブル席に座り、ひとまずメニュー表を確認する。


「色々な料理がありますね。ステーキに焼き魚、丼ものも種類が豊富です」

「有名なのは、この爆弾揚げ鶏なのかな? デカデカと書かれてるし!」

「そうかもな。周りの客のほとんどがそれらしきものを食べている」


 一人だけ焼き魚定食を食べているが、他の客はみんな大きな揚げ鶏定食を食べている。

 正直、朝から揚げ物。それも、あのサイズとなると、おっさんの体には厳しいものがあるんだが……一番人気の料理を食べないという選択肢はない。


 ジーニアも、なんだかんだ悩んでいたアオイも爆弾揚げ鶏にするようで、俺は爆弾揚げ鶏定食を三人前注文した。

 サイズが大きいため、量が食えるということで人気な可能性が出てきたのが少し怖いが、注文してしまった以上は食べるしかない。


「はい、お待たせしたね。爆弾揚げ鶏定食三人前だよ」

「はっやー! さっき注文したのがもう来た!」

「一番人気なだけあって、常に揚げているからね。ちゃんと揚げたてだから安心してよ」


 注文してから五分と経たずに提供されたため、作り置きで冷めているかもしれないと一瞬考えたが、どうやら作りたての様子。

 拳サイズの丸々とした衣のついた肉が三個並んでおり、ご飯もかなりの量。


 更にスープに加え、付け合わせの生野菜までついている。

 王都のメインストリートで、銀貨一枚でこのボリュームはさすがにお得すぎるな。


「それじゃ早速食べるね! いっただきまーす!」

「私もいただきます」


 食前の挨拶をしてから、拳サイズの揚げ鶏を頬張ったアオイとジーニア。

 大きさが大きさだけに、食べるのに苦労しているようだったが、何とかかぶりつくことができた様子。


「ん——! 激熱だけどめちゃくちゃ美味しい! 肉汁が爆発してて、旨味もすんごいんだけど!」

「凄く熱いですが、本当に美味しいですね。これは大当たりだと思いますよ」


 大絶賛の二人を見てから、俺も爆弾揚げ鶏を食べることにした。

 かぶりついた瞬間、中に詰まっていた肉汁が弾け、口の中に旨味が広がる。


 どうやら鶏の皮で包むように揚げているため、肉汁が逃げないようになっているっぽい。

 二人が言っていたようにめちゃくちゃ熱いが、この熱さも含めて非常に美味しい。


「確かにめちゃくちゃ美味い。やはり大当たりの店だったな」

「グレアムに任せてよかった! 食べられるか不安だったけど、ぺろりと食べられると思う!」

「私も完食できそうです。お値段も安いですし、人気店の理由がよくわかりますね」


 俺たちは夢中になって爆弾揚げ鶏定食を食べ進めていった。

 めちゃくちゃ美味いが、やはり朝から揚げ物はかなりきつく、何とか完食できたものの胃が重い。


 腹的にはもう少し余裕はあるが、やはり年を感じてしまう胃の重さ。

 アオイとジーニアは単純にお腹いっぱいのようで、俺は胃を、二人はお腹をさすりながらお店を後にした。


「あー、お腹いっぱい! もう何も食べられない!」

「美味しかったですが、量が多かったですね」

「俺も胃がもたれてしまった。どうする? 少し休憩するか?」

「休憩したい! このまま道具屋巡りしたかったけど、お茶したいかも!」

「いいですね。私も賛成です」


 満場一致ということで、どこかで一休みすることにした。

 もう何も食えないだろうし、空いている喫茶店を探していると……見つけたのは「OPEN」の看板が掲げられているバー。


 朝からバーはいかがなものかと思ったものの、喫茶店はどこも人でいっぱいだったからな。

 お酒を飲むつもりがないため、ソフトドリンクが提供されていたら利用させてもらおう。

 そんな心構えでバーに入ってみることにした。


「あら、いらっしゃい。好きな席に座ってちょうだい」


 店内は薄暗く、時間帯もあってか客はゼロ。

 バーのマスターは俺と同い年くらいの女性だ。


「座る前に一つ尋ねたいんだが、アルコール以外の飲み物って提供されているのか?」

「ええ。この時間帯は色々な飲み物を出しているわよ」

「やったー! ここでちょっとゆっくりしよう!」

「ふふ。今は暇な時間帯だし、ゆっくりしていってちょうだい」

「ありがとうございます!」


 アオイの言葉に優しく笑ったマスターは、奥のテーブル席に座った俺たちに水を提供してくれた。

 それから、メニュー表を確認させてもらったのだが、意外にもソフトドリンクの種類が多い。


 もちろん酒の方が圧倒的に種類が多いものの、普通の飲み物の種類も充実している。

 気になる飲み物もいくつかあるしな。


「何にしよっかな! ……元気ジュースに決めた!」

「元気ジュースってなんだ? 俺は白いカフェオレにしようかな。ジーニアはどうする?」

「面白い名前の飲み物が多いですね。私は……ミックスオレにします」


 アオイが頼んだ元気ジュース以外にも、悪魔の誘惑や天使の孤独といった、カクテルチックな名前のジュースも書かれており、どんな飲み物か非常に気になる。

 とはいえ、今の腹パンの状態では冒険する勇気も出ず、俺は無難そうな白いカフェオレを注文したのだった。



ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。

本日からコミカライズ版の公開が始まりました!!!

担当してくださった村下先生が漫画を描いてくださっており、web版を読んだ方でも楽しめるような素晴らしい作品に仕上がっております!

無料で読むことができますので、どうか何卒読んで頂けたら幸いです<(_ _)>ペコ

近況報告、X(ツイッター)にて、リンクが張ってあります!


↓の画像をタップしていただくと、カドコミに飛びます!

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