再会③
陽の暮れかけた頃、マクシミリアンは緊張の隠し切れない表情で噴水の縁に腰掛けていた。約束の時間までもう少し。
どんどん首筋が湿るのは、初夏の熱のせいなのか、それとも噴水の水が跳ねただけなのか、はたまた酷く張り詰めた精神からの汗なのか、区別つかない程に思考が回らない。おそらく理由はすべてである。
「あいつ大丈夫か…………?」
「今にもぶっ倒れそうな顔だな…………」
王子ベリアスに三編みのアール、それと鷲鼻のヴァストは、物陰からマクシミリアンをそっと見守っていた。当然、最初は単なる野次馬根性だった訳だが、あまりにもただならぬ様子に、なんだか段々気の毒になってきたのである。
「我々は未来、善き騎士になるべきものだ。だから、彼が今からどのような失態を見せようと、決して言い触らしたりしないと僕は誓おう」
「覗き見するのは善き騎士か?」
「応援してるんだから友情に決まってる」
「物は言い様」
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「坊ちゃん? お久しぶりです」
「…………! ハリエット?」
凛とした少女がマクシミリアンの前に立つ。マクシミリアンは慌てて立ち上がるが、目を泳がせてしまい、言葉も続かない。
「お元気そうで何よりです。旦那様も奥様も心配なさっていましたから」
「そういう君も元気そうで、髪も凄く伸びたし、ええと、あと、そうだ、背が」
「背が?」
「ち、縮んだ…………ね…………」
「……それは坊ちゃんの背が伸びたからですね」
沈黙。
失敗した。最悪に訳の分からないことを口走ってしまった。絶対変な男だと思われたし幻滅された。今すぐこの場から走って逃げたい。
しかし、混乱するあまりマクシミリアンの体はぴくりとも動かない。
押し黙ってしまったマクシミリアンに、ハリエットが急いで切り替える話題を探す。実は内心、彼女も焦って冷や汗ダラダラである。
今のはもしかして、久しぶりに会ったぎこちなさを解消する為の、王都流ジョークだったのではなかろうか。それを真面目に真正面から返してしまって、風流の分からない女とでも思われてしまったかもしれない。もうやだ帰りたい。
「わ、私、もう寮の部屋に行ってきたのですが、ルームメイトにも良くしていただいて、坊ちゃんのお手紙にあった通り、よい場所ですね、ここは」
わたわたと身振りを交えながら早口でまくしたてるハリエット。小動物にも似たその動きに、マクシミリアンの強張りも少し緩み、彼は少年らしい柔らかな笑みを見せた。
「…………うん! カレッジの人はみんな優しいし、ハリエットならきっとすぐに友達が出来るよ」
「そうしたら、ご報告のお手紙を書きますね!」
「えっ」
「え?」
「同じ学校にいるのに……?」
「あ…………」
「………………」
「………………」
二人して、何とも言えない表情で真っ赤になって俯き、気まずい時間が流れること幾ばくか。日暮れを告げる鐘が鳴り響いた。その轟音にスイッチを押されたように、ハリエットは首を上げる。
「あ、私、このあと事務局に行かねばならなくて……」
「そっか、えっと、気をつけて」
「では、また」
「ああ、うん……」
パタパタと逃げるように去っていくハリエットの後ろ姿を、呆然と見つめていたマクシミリアン。善き騎士たちは友の肩にそっと手を置いた。
「あのさあ……お前って奴は……ホントにさあ…………」
夕暮れの芝の上、魂も抜けたように項垂れる。周囲の、同情と呆れ返りの入り混じった視線に背中を貫かれて、マクシミリアンは深々溜息をついた。
「いくらでも罵ってくれ……何か本当……自分の不甲斐無さに頭がどうにかなりそう…………」
「いや……今は何も言えねえよ……」




