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娘として扱われてなくても元は公爵家に住んでいたのに、こんな大会に出たいなんて言う自分に少し違和感を抱く。そんな違和感を薙ぎ払った。
張り紙にはどこで申請をすればいいかが書いており、それを頼りに目的地へ向かう。
どこかの大きな闘技場の前にたどり着いた。入り口の隣に看板があり、その隣に小さな机があった。机の上には紙の束がまとめられており、多分そこに名前などなどを記入するのだろう。そして隣にある小さな箱に紙を折って入れるのか。
人が自ら受付をしてるのを想像していたが、違うらしい。
今でも申請する人は少なくなく、筋肉がムキムキな大人たちがずらりと並んでいた。その中に女性の姿もあり少し安心する。
「ディルとレイは参加するの?」
二人はすぐに頷いた。「興味あるの?」と聞くと彼らは首を振る。
「アーシェがやるなら僕も参加しようかなって」
「同じくだ」
それって私が彼らの時間をもらっちゃってるってこと?
「いやいや、自分の好きなことしてていいんだよ?」
私のために彼らの用事やら娯楽を邪魔するのはよくない。せっかくの休息なのだ、少しぐらいは自分の好きなことをして心身ともに休めて欲しい。
「アーシェよ、お前は我に魔王城に戻り責務を全うしろというのか?」
体の芯から嫌そうな声を発している。
「そういうわけじゃないけど...それより、それって魔王だからやるべきことじゃなくて?」
「我は絶対にやらんぞ」
魔王の意味よ。
子供らしく拗ねてそっぽを向いている彼の額にデコピンを入れる。
「っ、何をする?!」
「じゃあせめてあなたの配下たちにお土産でもあげたら?きっと喜ぶよ」
自分が働かないで遊んでいるだけなんてよくない。だが、どうしてもというならせめてお土産でもあげるべきだ。お土産をもらって喜ばない人はいないと思う。内容はそんなに好みのものじゃなくても、買ってくれたという事実が嬉しいのだ、みんな。
「ふむ、確かに」
そしてレイもそれがわからないほど馬鹿ではない。
「大会まではまだ数日残っておる。その間に買っておけばいいだろう。金に困っているわけではないしな」
列に並んでいる間に話していると、すぐに私たちの番が訪れた。一人一人ペンを持って自分の情報を書き足す。そこに、メインは何で戦うのか、みたいなのを書かなければいけなかった。
迷ってしまう。正直剣でも魔法でもどちらでも戦えるのだが...両方入れちゃえ。一つの言葉しか入らないぐらいの小さな枠に無理やり魔法と剣を入れる。そして他にもこれまでの実績や経験などを適当に記入して隣の箱に入れた。
ところで、レイはどうやって書いているのか気になる。魔王だし、そのことをホイホイ書くわけがない。やはり私たちと同じくSランク冒険者と書くのだろうか。
チラッと彼の紙を見ると、そこには大きく堂々と”魔王”と書かれていた。反射的にその紙を取り上げる。
「レイ?!何してるの!!」
これを箱の中に入れたら大騒ぎだ。もう陛下に叱られる未来しか見えない。
「何って職業を書いただけだが。我の何が違うと言う」
「違わないよ、うん。間違ってはいなんだ。だけどこんなものを書いたら混乱を招くから!!」
レイは首をこてんと傾げた。
わかっていないんだな、彼は。
私はペンを手に取り、魔王というところを塗り潰し隣に冒険者と書いた。
「あ、おい!何をする!」
「こうしないと参加させてもらえないよ?」
「.........」
紙を返すとレイはジトーっとこちらを半分睨みながら紙を箱の中に入れた。
「アーシェ、これでいい?」
今度はディルが私を呼ぶ。彼ならばそんな間違いをしないと思うが。
案の定、彼の紙に間違いは一つも見つからなかった。
「うん!」
ディルも紙を箱に入れ、列から離れた。列から結構な視線を感じるのだが、気のせい気のせい。
宿に戻って一休憩しようと思った瞬間、レイに腕を引っ張られた。
「土産選びに付き合え。お前女子だからこういうの慣れてるんだろ?」
グイグイと強制的に引っ張られる。そもそも、女子だからって買い物が必ずしもうまいわけではないのだが。その偏見は変えて欲しい。




