第39話
また雪が吹き出しましたで。出勤の道が心配です。皆さんもいつもお気をつけてください。
いつもありがとうございます!
どう…
「…」
どうしよう…!
まずいです…これはかなりまずいです!さっきからお互い一言もしないんですよ、この二人!
「えっと…」
なんとか今の重い空気をごまかさなきゃ…とはしましたが
「ん?どうしたの?みもりちゃん。あ、もしかしておしっこしたい?でも次の駅まではまだ残っているから。どうしてもしたいなら私が飲んであげてもいいんだけど♥」
「あ…いいえ…そういうのないですから…」
なぜかこの人の前じゃあまり話したくなくなってしまうので結局やめてしまった私でした。
私は今、意外とあっさり外出の許可出してもらった寮長さんのおかげでこの遅い時間に先輩のお家へ向かっている電車に乗っていますがなんだか少し針の筵に座らせている状況にされています。
「夜中の電車ってなんかわくわくするよね?」
「あ、はい…そうですね。」
今夜、私の護衛を務めることになったのは隣の団長さんと寮長さんの「Scum」の副部長の「結日優気」さんでしたが
「ど…どうしよう…」
この二人さんの間に漂っているこの重い空気…!これはまるで時間が止まっているような長さを感じさせながら私をじっくりと圧迫してきました…!
私の隣から楽しそうに喋っている団長さんに引き換え先からずっと黙って遠いところから窓の外をずっと眺めているゆうきさん…
この車両の空気の差…私からなんとかしないとこっちが先に倒れてしまうかも知れません…!
「え…えっと…」
でも一体どうしたらいいのか…!
先寮長さんはこの二人さんのことを「結日」家の兵器と言いました。本人はあまり望んでいないって言いましたがそれはつまりこの二人さんは前の高宮さんから言った…
「姉妹…」
そう思いついた時、急に襲ってくるこの悲しい気分…
私は無理矢理にお互いのことを意識しないように振る舞っている二人さんのことを見てこう思いました。
私には兄弟がいないんですが子供の頃からずっとゆりちゃんが一緒でした。
いつも私のことを一生懸命気にしてくれたゆりちゃんは私にとって大切な幼馴染であり、頼りになるお姉ちゃんみたいな存在でした。
もし私がそんな大切なゆりちゃんとあんな風に言葉も交わさずお互いのことから目をそらして他人のふりをしたら多分私はそれ以上耐えられないと思います…
だってそれはとても悲しくて寂しい思いのはずですから…
きっと二人さんの中には私達には分からない理由ってものがあるはずです。でも私はやっぱりこういうの、良くないと思います。
だって二人さんはかけがえのない大切な姉妹だから…何があっても最後まで信じ合う血の繋がりだから…
「でもなんでこんな夜中にみらいちゃんのところに会いに行くの?みもりちゃん。」
っと憂鬱な気持ちで落ち込んでいた私の手をギュッと握りながらこの遅い外出のことを聞く団長さん。
まるで少しだけでも妹さんのことを忘れようとするその空気を読めない行動は私の心をもっと痛めてしまったのです。
「大した理由があるわけではありません。ただ先輩、あまり元気なさそうだったからなんとか元気づけたいと思って…」
「そうなんだ。優しいね。みもりちゃんって。」
「そ…そうでしょうか。えへへ…」
な…なんかちょっと照れちゃいますね、こういうの…私、あまり人に褒められるの慣れてないから…
周りやゆりちゃんには可愛いって言われていても私自身はあまり自覚がありませんから。
うわぁ…それにしても団長さんって体温とか結構高いんだ…ほんのちょっとだけ握っただけなのにもうこんなに汗出ちゃって…
っていうかそろそろ蒸れてきましたからもう離しても…
「これくらいは我慢して欲しいな。紫村さんから一瞬もみもりちゃんから目を離しちゃダメって言われたから。それに…」
それに?
「えへへ…♥みもりちゃんの手は白くてすべすべできれいだね…♥うへっ…♥太もももこんなにふにふに…♥タイツの触り心地もすごくいいよ…♥」
さっさと離せ!!触るな!!
でも意外です。私、「百花繚乱」と「Scum」はあまり仲良くないだと思ったんですが団長さんって寮長さんは案外普通に仲良さそうですね。
「まあ、色々あって今はあれな関係になったけど昔は結構仲良かったから。紫村さんは今回の争いに全く興味もないし私からも個人的に尊敬している人なんだ。」
っとまだ私の手を握って寮長さんに対する尊敬の気持ちを表す団長さん。
この「勇者」と呼ばれる団長さんから尊敬しているっと言わせるほどとは…
「見た目はちょっと怖そうだけどもう何十年も生徒達を守ってきたということは間違いのない真実だからね。うちのあいちゃんだっていつも紫村さんのこと、すごいって言っているし。あいちゃんから魔界の人を褒めることなんてめったにないから。」
あの速水さんまでそう言うとは…あの人、あんなに怖そうだったのに以外に素直ですね…
「あいちゃん、本当はそんな子じゃないから。今はただちょっとしたわけがあってそうなったけど本当はすごく優しくていい子なんだから。だからあいちゃんのこと、そんなに嫌わないで欲しい。」
「はい…」
っと速水さんのことを嫌わないで欲しいとお願いする団長さん。
速水さんに対する愛情がたっぷり感じられて事情も分からず勝手に彼女のことを決めつけた自分が恥ずかしく思われます。
でもこの人に限ってそれがただの愛情で済むのかな…
「それにしても団長さんって先輩と仲いいですね。前から思ったんですけど。」
前と言っても知り合ったのは今日ばっかりですけどね…
「え?そうかなーみらいちゃん、いい子だからね。世話好きでふわっとしてすっごく可愛いし。よくお菓子とか作ってうちの子達にも分けてくれるんだ。」
「あ、先輩、お菓子作りとか上手ですもんね。私も大好きです。」
「それにおっぱいもバカでかくてよく触らせてくれて大好きなんだ。みらいちゃん、思ったより結構ちょろいから。」
え!?ピンポイントでそこ!?
「まあ、なかなか友達ができないのは残念だけどね。皆みらいちゃんのこと、なんかちょっと気難しそうだから。」
「そうですか…」
本当に残念そうな顔…団長さんだって先輩のことをすごく気にしているってことが今のではっきりと伝わってきます…
前に先輩はこう言いました。自分には皆に遠ざけられる理由があるって。
でも私はやっぱり寂しいです…いくら先輩が納得していたとしてもああいう距離感ってやっぱりいいはずがない…
先輩と知り合ったのはほんの数日前のことですが私には分かります。先輩がどれほど我慢しているのか。
先輩は優しい人ですから周りの皆に気を使わせたくないだけです。自分が苦しんでいるとクラスの皆や私達が気にしてしまうから…
だから無理矢理に自分は大丈夫だって、自分にはそれほどの理由があるってあえて強がって抑えているんです。
そんな先輩が青葉さんのことで泣いていた。きっとそれほど先輩にとって青葉さんが大切な人ということでしょう。
今の私に全部解決するのは到底無理ってことはよく分かっています。だって私は自分のことで手一杯な無力で情けない子ですから。
でも先輩のためなら何でもしてあげたいです。大したことはできなくてもせめて心の荷物を省けるようにその話でも聞いてあげたいです。
だって私は私に大丈夫って私を励ましてくれた先輩のことが大好きですから。私にもう一度アイドルができるように引っ張ってくれた先輩のことが大好きですから。
「その気持ち、みらいちゃんにちゃんと伝えてあげてね?みらいちゃん、きっとすごく喜んでくれるから。」
「団長さん…」
そう思っていた私にもう一度勇気を吹き入れてくれる団長さん。私の頭を撫でてくれるその大きくて温かい手は私のこの小さな決心をもうちょっと固めてくれました。
「あ、良かったら私のことも名前で呼んでくれない?私も仲良くなりたいんだ。みもりちゃんとね?」
「私と…ですか?」
っと自分のことを下の名前で呼んで欲しいとお願いする団長さん。
その穏やかな目は見ているまるで暖炉のように人の心を温めてくれて傍にいる人をいい気分にさせてくれる。
そして私はよく知っていました。こういう目を持った人は心優しくていい人ってことを。
「はい。ぜひそうさせてください。よろしくお願いします。ゆうなさん。」
「うん。私こそ。」
私はこういう温かい目をした人が本当に大好きでした。
「じゃあ仲良くなった印でパンツ見せっこしない?」
って何だそりゃ!?
「あら。知らないの?最近女友達の間ですごく流行ってる遊びなのに♥」
生まれて初めて知った遊びなんですけど!?なんですか!?その怪しい遊びは!?罰ゲームとかなんとか!?
「まずは私から見せてあげるね♥ちなみに私は今日「ノーパンデー」なんだ♥」
っとするっとスカートを捲るゆうなさん!止めんか!!バカ!!
その時、私は気づいてしまったのです。この人と仲良くなるってことはこういうことばっかりってことを…
「勘弁してくださいよ…私、そういうのゆりちゃんだけでももう十分ですから…」
「へえーやっぱりあの「緑山」家のお嬢さんなんだね。すごく造詣が深いのようね。」
どこが!?
でもこうしている間、なんで先輩がこの変な人のことを気に入っているのかちょっと分かりそうな気がします。
一緒にいると楽しくて周りの人を笑わせてくれる元気で明るい人…
先輩の周りはいつもそういう人ばっかりでした。
「はあ…なんだかんだ言っても普通にいい人っぽいですね。ゆうなさんって。」
「え…?褒めてくれているんだよね…?それ…」
っとゆうなさんはモヤモヤな顔で聞きましたが私からそれに答えてあげることはありませんでした。
「あ、そうだ。私、先みらいちゃんからクッキーもらったんだ。良かったら一緒に食べない?」
っとそのでかいおっぱいの中から先輩にもらったクッキーの袋を引き出すゆうなさん!
もっと普通なところに入れてはダメだったんですか!?
「うわぁ…なんか変に湿ってるよ、これ…」
ずっとゆうなさんのおっぱいの中に保管されていたせいか妙に生ぬるくてじめじめしてあまり食欲がそそられないんですよ、これ…
でもせっかく誘ってくれましたから受けなければ失礼ですし…
「食べさせてあげようか?あ~んして。」
「は…はい…」
自ら食べさせてあげるってそのじめじめな袋からクッキーを取り出してくるゆうなさん。ますます断りにくくなった私は
「あ…あーん…」
やむを得ず口を開けてそのぬるぬるしたクッキーを一つだけ口の中に入れてしまいました。
口の中に広がるほんのりしたバッターの味。見た目は本当にあれでしたが確かにこれはいつも部室で食べてた先輩のお菓子でした。
そんなに甘くてもくどくもない爽やかで優しい味。舌を包んでくるその味についほっぺが解れてしまう私でした。
「やっぱり美味しいですね。先輩のお菓子。」
ぬるぬるして歯ごたえは全くなくてまるでバッター味の水に沈めていたせんべいを食べる気持ちでしたが本当に美味しいですよ、これ。
「みらいちゃんに感謝だね。えっと…」
っと満足した私から目を離して慎ましくどこかに目を向けるゆうなさん。
その不安そうな目が向かったところは他でもないゆうなさんの妹さんであるゆうきさんが立っている車両の隅っこでした。




