第31話
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「あら?みもりちゃん?」
成り行きで会長さんに連れて行かれて会場に現れた私を見つけたゆりちゃん。今日の会議のための書類をいっぱい抱えていて大忙しのようですが
「どうしたんですか?そんなに私が見たかたんですか?もうー甘えん坊さんなんですから。」
そういう話はは欠かさず律儀に言ってくれるゆりちゃんでした。
「でもみもりちゃんと会長が一緒に来られるとは…しかもあの「百花繚乱」の団長さんも…」
一目で今の状況を理解したみたいなゆりちゃん。そして今この会場に同好会の代表者であるみらい先輩がいないことを気づいたゆりちゃんは先輩の代わりに私が代理者として会議に参加したということまでたやすくたどり着きました。
「もしかしてみもりちゃん、先輩の代わりにこの会議に?」
「うん…まあ、そんな感じ…」
「あらあら。大変ですね。」
そうなんだよ…今でも緊張で死にそう…ってなんかすごく喜んでいるような顔だね、ゆりちゃん…
「え?そんなことないですよ~ただみもりちゃん、緊張すぎておもらししちゃったらどうしようっと思って…♥」
何そんな心配をしているの!?しないよ、絶対!
「ええ?♥いいじゃないですか、ちょっとぐらい漏らしちゃっても♥その時はこのゆりをお使いになってくださいね?♥私が全部…おっと♥ついよだれが出ちゃって♥ごめん遊ばせ♥」
何する気!?
しかしうちの学校、こんなに人がたくさんいるんだ…
世界政府の付属高校の中では多分進学校の第1に次ぐ大人数の学校というのはよく知っていましたがこれほどとは…
生徒の数だけではなく部活や同好会の数もこんなにたくさんあってこれらの殆どがアイドルをやっているなんて。今回の派閥争いのことが「アイドル戦争」と呼ばれるいるのも分かりますね。
「百花繚乱」「合唱部」「Scum」の主な目的は相手よりいい実績を作ってより多い生徒を確保、そして相手を自分達の下にすること。そのために今回のことと無関係の部達を潰してそこから自分達と同じ生徒は強制的に引き出し、他の生徒は追放、あるいは自分達の下において好きなようにこき使う。この学校は既に昔の大戦争の時と同じ状況になっていました。
かつて世界の支配者であった「魔界」。そして彼らに長年支配されてきた「神界」。「大家」の支配で閉鎖社会であった「人界」はその影響からは逃れられましたが二人の溝は思ったより深くて重いものでした。
部活の半分くらいはもう「合唱部」によって支配されていてその生徒達を保護するために参戦した「百花繚乱」を含めた神界の部活達。
だが彼女達の頑張りにも関わらず「合唱部」の快進撃は止められませんでした。
そして
「あ…!あの人ってまさか…!」
その中心にいる人物がすなわち彼女、
「「青葉海」さんだ…」
「合唱部」部長、「青葉海」さんでした。
きれいに結んだお下げの底知らずの深海を思い出させる黒青い髪の毛。日光を浴びて輝いている砂浜のような白い肌。雫の形ですべすべで際どいボディーラインとあんなに大勢の人達に囲まれているのにはっきりと分かるほど桁外れの存在感。何より眼鏡の向こうから感じ取れる凄まじい信念。
全世界を歌で感動させ、その豊かな演技力で虜にした時代が産んだ世界の至宝。「伝説の歌姫」「天才歌劇少女」などのあだ名で呼ばれている魔界最高のスーパースター。
今私が見ているのはそのような存在でした。
「ほ…本当にいたんだ…この学校に…」
彼女がこの学校に通っているということは私も入学する前から既に知っていたくらい世間にはよく知られていたたことでしたが実際に見るのは今日が初めて…
あの孤高な姿を見ているとなんだか胸がぐっとこみ上げて何ていうか…
「私、感動しちゃった…」
なんと言えばいいのかよく分かりません。でもあの時の私は自分の目で確かめた彼女の輝きをたただ何も言えず見惚れているだけでした。
胸がこんなにざわめいてそわそわして…本当にこの学校にいたんだ、青葉さん…
中学校の時、偶然地元のイベントで青葉さんの劇が見られる機会がありました。ゆりちゃんと一緒に行った劇場から見た青葉さんの「ロミオとジュリエット」…
あの時、青葉さんの配役は「ティボルト」。ロミオとジュリエットの愛を引き裂くために怒りに取り憑かれていた彼は結局死を迎えてしまう。
「ああ…これが死…これが運命…降り注ぐ心地よい痛み…私はいつでもお前を見ている…」
あの時の青葉さんの鬼気迫った狂気の演技はもう鳥肌が立ちまくるほどぞくぞくしちゃって…!生で初めて見たその舞台は今もはっきり覚えています!忘れられない晴れ舞台!本当に最高の舞台でした!あれからすっかり嵌っちゃってDVDも全部揃えて今も実家から大切に保管しています!
ゆりちゃんだっておいおい泣きながら
「みもりちゃん…!どうしましょう…!あまりにも可哀想で涙が止まらないんです…!」
すごく楽しんでくれたようだし。あんなに感動しちゃうところを見るのは本当に久しぶりかもって思っちゃったくらいです!
あ、でも…
「私達だって死なんかに負けられませんから…!ずっと愛していますから、みもりちゃん…!」
なんかゆりちゃんにはちょっと刺激的だったかなって思われる反応だったので地味に心配になったりもしました…
とにかくそれほど青葉さんの演技と歌は激しくて美しいということでした。
「でもみもりちゃん、青葉さんは今回の派閥争いが勃発した原因ですから。一応気をつけた方がいいと思います。」
浮かれている私と違って随分慎重な顔で彼女のことを警戒しているゆりちゃん。でも今の学校の状況から見ると生徒達であるゆりちゃんのその反応は当たり前なことかも知れません。
「彼女は最初でこの派閥争いを始めた「合唱部」の部長。彼女は自分の名声と人気を武器にして数々の部活と生徒達を飲み込んできました。学校中の半分以上は全てが彼女の兵隊。もはや彼女は私達生徒会からも手出しできない「アンタッチャブル」と呼ばれる存在です。」
冷静に現状を説明しているゆりちゃん。そんなゆりちゃんから感じるのはただ静かに燃え上がっている闘争心だけでした。
「私はせっかくみもりちゃんが勇気を出して再開したアイドル活動を続けさせてあげたいです。あなたにとってアイドルというのがどんな存在だったのかずっと傍にいた私が一番知ってますもの。だから誰にも邪魔はさせません。阻むものは全部私がぶちのめしてあげますから。例え相手があの青葉さんとしても私は…」
「ゆりちゃん。」
いつの間にかまたそっち側に引き連り込まれてきたゆりちゃん。そんなゆりちゃんの手をそっと握った私はまず私の勇気を応援してくれるゆりちゃんの心にありがとうって感謝の気持ちを伝えました。
この子はいつも私のために真剣で一生懸命だからその応援してあげたいって気持ちはよく分かります。私はまずその優しさにちゃんとお礼を言いたいと思いました。
「ありがとう、ゆりちゃん。ゆりちゃんはいつもそうやって私のことを応援してくれたんだね。」
「みもりちゃん…」
少し驚いた顔。でもゆりちゃんはそんな私に何も言い返さずそのまま静かに私の言いたい言葉に耳を傾けてくれました。
「うん。私、頑張るから。ゆりちゃんが私の背中を押してくれたもの。私、ちゃんとゆりちゃんに前に向かって歩いていくところ見せたいんだから頑張るよ。だからね?」
「ううっ…!みもりちゃんがこんなに近くに…!」
だから一人で突っ走らないで欲しい。一人で無理しないで欲しいよ、ゆりちゃん。私もいるし今はいい先輩もたくさんいるから。
きっと青葉さんは同好会がいずれ越えなければならない大きな壁かも知れません。でもそれに飲み込まれず一歩一歩自分達の道を歩んでいけばきっと何か見つけられないかと私はそう思います。
せっかくまた歩くことになった大切な道…私はもっと楽しく歩いていきたいです。
「み…みもりちゃん…!」
って何泣いているの!?
「私…嬉しいです…もうすっかり大人になってみもりちゃんを見て…!」
母か!?
「そうかも知れませんね…私、ちょっと一人で考えすぎたかも…」
「うんうん。ゆりちゃんは考えが多いから。だからもうちょっとだけ気楽に行こうよ。」
「私はただみもりちゃんと契ることだけを考えていたらいいのに…恥ずかしいです…」
うんうん、そうだよ…って何変なこと考えているの!?
確かに今は少し大変かも知れません。同好会は相変わらず人も少なくてこれと言った業績もないから廃部の危機のまま、その上副会長の赤城さんに目をつけられて大ピンチということに変わりはありません。
でも先輩達と一緒にちゃんと「アイドル」という存在と向き合って真剣に臨んで自分達のライブができればきっと…っえええ!?
「あら、こうしている間にもう全員揃いましたね。ほら、見てください、みもりちゃん。これが今の第3の時代を担っている世代、そしてこの学校の支配者達です。」
っと向こうから次々と会議場に入ってくる人達の方に顔を向けるゆりちゃん。
そこにいたのはこの時代において音楽を含めた全ての芸の頂点に身をおいている、まさしく世界の至宝達でした!




