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モテモテ59




 三人目は当然あの方。後輩の黒笠雫である。


 当初は見た目と内気な性格からいじめられていたが、生まれ変わったおかげで今は人気者になりつつある。

 特に男子の。


 彼女は俺をモテ男にするのを手伝ってくれる数少ない人物の一人でもある。


 ここ最近はバイトが忙しいようで、離れには顔を見せていなかったのだが、先程久しぶりに顔を出してくれた。


 背中ほどまである黒髪の毛先はふわっとカールがかかっており、整った前髪からは特徴的なタレ目がしっかりと確認できる。

 小さく整った顔に純白の肌。どこか優しさを感じさせるような顔立ち。


 制服は今時女子とは対照的で、ピシッと着こなされている。

 ここは性格が滲み出てしまっているのだろう。


 俺的には、もう少し着崩してもいいと思う。スカートとかスカートとかスカートとか。


 そんな彼女に悩み事を聞き、解決する為に今はとある場所へ来ている。


 そう。ここは学生なら一度は足を踏み入れた事があるであろう楽園。カラオケボックスだ。


 話によると黒笠は大の音痴らしい。

 好きな人とカラオケへ行った時の為に上手くなっておきたいという経緯で、特訓をしにきたのである。


 因みにここに飾霧の姿はない。飾霧いわく「私が出るまでも無い」との事。

 俺にはわかる。きっと、日野の件で自信を失ってしまったのだろう。


 なので、今回は美少女と二人。個室でムフフな訳。


 やっと俺にもツキが回ってきた。見てろよ野郎共。ここからが本編だ。

 モテ男こと茂木直。真の物語の始まりだ。





「だずげでぇ〜」


 室内に鳴り響く騒音にかき消されてしまうであろう、かぼそい声で助けを乞う。

 茂木直は、今カラオケボックスという名のパンドラの箱に放り込まれていた。


 きっちりとフラグを回収する辺りは流石としか言わざるを得ない。


 何故こんな地獄のような状況になっているのかというと、時は数十分前に遡る。


 ウキウキとした気分で、黒笠とカラオケボックスに来た俺は、フロントで受付を済ませ個室へと向かった。


 そして、なんの躊躇ものなしに黒笠にこう言ったんだ。「まずは一曲歌ってみてくれよ」と、恥ずかしがる黒笠が渋々曲を入れマイクを手に取った。


 その瞬間この世の終わりを見た。


 まさにそれは冥府へと誘う唄。【レクイエム】


 想像を絶する歌声は容赦なく俺へと襲いかかった。

 直接脳内に響くそれは、まさに凶器。意識が何回飛んだのかもわからない。

 気づいた時には、何度もこの言葉を口にしていた。


「だずげでぇ〜」



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