モテモテ25
やっとのことで死の水曜日を乗り切り、待ちに待った昼休み。
死の水曜の所以は一限目数学。二限目古典。三限目英語。四限目現代文。といった具合に最強にやりたくない授業が前半に詰め込まれているという鬼畜な日なのである。
それを乗り切ったからか、いつもより晴れ晴れとした気分。優しさアピールは今日もあまりできていない。強いて言うなら日直の代わりに毎回黒板を消した。それよりも今日はもっと重要なミッションがある。飾霧特製弁当をこれ見よがしに食べることだ。
昨日の玉子焼きであれほどうまいのだから弁当なんてもっとうまいだろう。それにしても弁当箱でかいんだよな。
今日朝一で見た時に飾霧に対して「でかすぎないか?」と言ったら、「いらないならいいのよ」とか言われたから慌てて謝った。
まぁ、大きい分には大歓迎だからいいんだけどな。なんたって食べ盛りだから、高校生と言ったら帰りにⅯバーガー寄った後に家のご飯とかも余裕で食うからね。
そんなこんなでここにはいない飾霧様に感謝しつつも食べさせてもらうとするか。
昨日涼太に『明日の昼は教室で食べるぞ』ってメッセージを送っておいたから抜かりはない。
「ここで食うぞ」
出口側最後尾の俺の席の机を前の机とくっつけたところに涼太を呼ぶ。
「今行く」
席に着いた涼太が重箱を見るや口を開いた。
「それ大きいな。直が作ったのか」
イケメンも俺と同じ反応か、でもその気持ちはわかる。これは普通、おせち料理ぐらいでしか見ないからな。
重箱にクラスメイトも興味を示したのか騒がしくなる。
「あたぼうよ。それじゃ開けるぜ。いざ、オープン」
軽く嘘をついて、重箱の一段目を開けた。
「おお、すごいな」
「そうだろう。そうだろう。--ってマジですげぇな」
俺は頷きながら重箱の中を見た。つい、驚いてしまった。中に入っていたのは、唐揚げ、玉子焼きと言ったオーソドックスの物から、普通は弁当に入れない物まで沢山入っていた。
「なんで作った本人が驚くんだよ」
「いやな、作った時よりすごくてな」
「なんだよ。それ」
涼太の怪訝な様子に俺は苦笑いを浮かべつつも二段三段と開ける。二段目には一段目とは違う豪華なおかずが入っており、三段目は色とりどりの俵型のおにぎりが入っていた。
「まぁ、いいだろ。食おうぜ」
疑いの目を向けてくる涼太を誤魔化すかのように急かす。そんな俺を尻目に弁当を見ていたクラスメイトが周囲に集まり、「美味しそう」「食わせろ」「料理上手っていいよね」「自分で作ったの?」など様々な事を言われ、対応に追われて飯どころじゃない。
そこに一人の女性の声が響く。
「えー、すごい。これ茂木君が作ったの?」
「ひ、日野さん?」
自然と会話に入って来た女子生徒は二年二組の日野彩香だった。
彼女は見るからに今時のJKって感じだ。スカートは短く、髪は明るめの茶色、髪は少しウェーブがかかっている。部活で焼けた小麦色の肌が妙になまめかしい。
なぜ俺が知っていたのかと言うと一年の時同じクラスだったからだ。話したことは何度かある気がする。多分……。
急に話しかけられ動揺する俺はどうにか頷く。
「そ、そうだよ」
「美味しそうだね」
太陽のような笑顔の彼女。その姿を認識したのか、教室がざわつく。
それもそのはず、彼女は運動部の中で断トツの人気を誇っている。可愛いのは勿論なのだが、明るく元気で親しみやすいのも人気の理由だ。
断トツと言ったが、その一番の理由は胸だ。豊満な胸が男性の視線を釘付けにしている。しかもまさかの陸上部。種目はハードル走だ。これだけでわかるだろう? 走ってジャンプする度に豊満な胸が上下に激しく揺れるんだよ! それを見学するアホまで現れる始末だ。
まぁ、その気持ちはわかる。俺も男だからな。ただ一つだけ言わせてくれよ。俺はどちらでもいける。
ふと、違うクラスの日野さんがいる事を疑問に思い尋ねる。
「それより、なぜここに?」
「おいしそうな匂いがしたの!」
まさかの返答に、「匂いがしたって、犬かよ!」とツッコミを入れてしまう。クラスの半数も同じツッコミをしたに違いない。
「ははは。よく言われるよ」
ニコニコと笑顔を振りまく、日野の姿にクラス中が和む。それより、さっきから体制が中腰のせいで谷間がパーンしてるんですが、どこを見ればいいんだ……。
ーーそこだ!
「そ、そうなんだ。よかったら食べる?」
「いいの?」
そんなに目をキラキラとさせられたら断れないでしょ。それよか胸をどうにかしてくれ……。
ーーご馳走様です!
「どうぞ!」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
日野はにこっと微笑むと、唐揚げを手づかみして一口。
「うみゃー」
日野はいきなり変な悲鳴を上げて、ぴょんぴょん飛び跳ねる。そのせいで豊満な胸がアップダウン、アップダウン、けしからんことに。
事件は会議室で起きてるんじゃない。教室で起きてるんだ!
「だだだ、大丈夫?」
あまりの光景に俺は動揺を隠しきれない。クラスの男子も同じ気持ちだろう。
そこの田辺! 大丈夫か? さっきから中腰になってるぞ。
日野はコクコクと頷き指をペロリと舐めると、笑顔で言う。
「すごい美味しい! 茂木君天才だよ」
「そ、そんな事ないって」
マジでないから。これ作ったの俺じゃなくて飾霧だから。てことはあいつが天才ってことか。釈然としないが、納得。
「そんな事あるって、自信持って」
「お、おう」
凄い顔が近いんですけど、そのせいかいい匂いがする。目のやり場に困る。
ーーそこだ!
「そうそう、それでいいんだよ! それじゃあ、もう一つ貰うね」
日野のペースについて行けず、声を詰まらせる俺を尻目に、玉子焼きを掴んでパクリ。また謎の悲鳴を上げたが、飛び跳ねなかったので事件にはならずに済んだ。
食べ終えた後に満面の笑みで言う。
「美味しかった。ありがとう! 二人の邪魔してごめんね。今度お返しするから」
そう言い残し風のように去って行った。日野が居なくなった事により、野次馬が消えた。
最後の方は日野のワンマンショーだったが、可愛いから許す。




