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続々 ガイア・ハヅキの反省そして勉強会 『アリアと加護』

 一周目の時。

 アリアを手に入れた時も、職業はアルフェ・ディアの担い手になっていた。こいつらは、とことん似た存在らしい。

「しかしそうなると……」

 ステータスを開く。見るのは、先ほどはチェックしなかった称号欄。そこには二つの変化があった。

 嫌がらせのように獲得させられた遺跡の盗堀者が消えていて、その代わりというように、新たな称号が追加されていた。



ディス・フィアの担い手

ディス・フィアを認めさせた貴方の存在に敬意を。

効果

魔剣錬成のコスト減少。形状維持の消費を0に。



 やはり、アリアと同じく、称号自体が増えていた。というか、あの称号が変化したと言うべきか。ふざけた中身だと思ったが、最初から変化させるつもりで遊びやがったな、これ。


「まあ効果はとても助かる……ただでさえ、消費MPに体力が追いつかないからな」

「あれ、こんな称号持ってたのに、鎧作った時、意識失ったの?」

「本当に欠片しか体力無かったんだよ……宿屋でフローネちゃんが待ってると思わなければ歩けない程に」

「ああ……すごく納得したわ」

「自分で言っておいてあれだが、その納得のされ方に納得がいかないな!」


 さておき、こんな称号まで貰ってしまっては、本格的に気になる事がある。


「んで、スフィア。……お前、何なんだ?」

「何ってー、何ー……?」

「お前というか、お前等? お前とアリア、能力とかはともかく、存在が似過ぎだろ。剣に意思があって、種族のための剣で、称号まで貰えて、覚醒なんて謎の状態付きで、どういう事なんだ?」

「……覚醒って本当に何よ……」

 隣でハヅキが小さくぼやいた。……後で余裕があったらちゃんと説明しよう。今はスフィアに話を聞いておきたい。

 そのスフィアから返ってきた答えは。


「私はー、私だしー? そんなこと聞かれてもー、困るー」

「えー……じゃあ、アリアの奴と知り合いなのは?」

「あの、のーたりんの事は、どうでも、いいよね」

「え、いや、その」

「あのお馬鹿……何度煮え湯をー……何回も何回も薙払って……あの馬火力のうきんー……っ」



 ……そっとしておこう。それに、何も知ってそうにない。駄目だこれ。



 そっと、僅かに座る位置をずらして、多少でも距離を置いた。

 その先で、一緒にずれたハヅキが、尋ねてきた。

「何かその、聖剣の子の話色々聞こえたけど、どういう剣だったの? アルフェ・ディアって。スフィアはお馬鹿とか、脳筋とか言ってるけど」

「あいつは何か、アリアに対抗心みたいなの持ってる感じで、ちょっと悪意混じってそうだしな」

「うん。それで、あんたから見た、アリアって言うのは?」

「ああ……超絶お馬鹿な、のーたりんで、脳筋だった」

「何も変わってない!?」

「事実そうだったんだから、他に言いようがない」

「い、いや、どんな剣なのよ……」

 ちょうど良かった、簡単に話しておこう。


「アリアは、行くのも面倒なクソ高い霊峰の頂上にある神殿に安置されていてな……しかもこれまた面倒で、スフィアの封印並に頑丈な封印が掛けられてて、抜くのに苦労させられたもんだ」

「……聖剣も封印されてたの?」

「まあスフィアとは理由も色々違うがな、悪用防止とか、盗難防止とか。それから、あの山が封印を掛けるのに優れた地形で、せっかくだから、だっけか。まあそれで、何やかんや頑張って封印解いて引っこ抜いたわけだが、別に普通の剣だったんだ」

「普通?」

「そこそこ……いやまあ力はそこそこ以上に強かったが、聖剣って言うほどの性能かなこれ? みたいな剣だった。しゃべったりもしなかったしな」

「普通はしゃべらないしね……」

「そう、すごく普通だった。故に疑問に思って、クソヒゲとも一緒に調べ周り、聖剣の一番重要な部分は、別の場所に隠されているって事が判明した。どんな面倒な管理方法だとキレたもんだ」

「……あんた、そんなもの最初は取りに行こうかと考えたの?」

「だから止めたんじゃないか……本気で面倒だし、スフィアのように別の方法で抜ける気もしない」

 アリアの神殿は、スフィアのように、殺すことに特化した進入者排除を目的にしているのではなく、不正に持ち出されないように、絶対に抜けないように、封印が作られていた。呪いのある無しとかで、作り易さとか、求められるトラップも違ったんだろうな。いつか聖剣が必要になった時には、手順さえ踏めば、簡単に取り出せるような仕組みになっていた。その手順がクソめんどくさいので、大変さが無くなったりはしない。


「それで、その聖剣の重要部分とやらを取りに行ったら……何か精霊っぽい感じの、光る丸いのがいて、こっちに話しかけてきてな」

「せ、精霊?」

「ああ、精霊。アリアの……本体、とはまた違うんだっけ。意識体、精神? まあなんかそんな感じのが剣本体から分離して隠されてたんだ。で、そいつと色々話した後、そいつが剣の宝石に入っていって、ステータスを見てみりゃ、性能が跳ね上がって、スキルも増えて、覚醒って名前になっていた、って訳だ。そして、しゃべる様になり、うるさくなった」

「……そんなことがあったから、あの子の事も比較的落ち着いてた訳ね」

「ある意味では驚いてんだがな……あんな剣が二本もあるとは思ってなかったし。そもそもあいつ自身にツッコミ所があり過ぎだ……」

「あ、それで……その子の性格が、馬鹿で、脳筋だったの?」

「あー……うーん、まあ、そうなんだけどな」


 あいつは実に馬鹿で、のーたりんで、まるで幼い子供みたいな考え無しだったが、それがそれだけで済まなくなっているというか……


「その馬鹿さ加減が能力にも表れてるとな……本当に、お馬鹿としか……マジ脳筋……」

「え、能力?」

「性能が、すっごい、火力よりだったんだ。間違えた。火力しかなかったんだ」

「の、脳筋……」

「更に分かりやすく言うと、上昇パラメータは力のみだ」

「脳筋……!」

「まあ、スフィアと違って他の装備で普通に補えるからな。とは言え……あんな火力しかない剣使ってたから、技術がないと戦えなくて技がこんな値になってたのかな……」

 地味に、開始直後に技の値見て驚いていたものだ。高いままだった事もそうだが、装備の補正抜きの数値で、あそこまで高いとは思わなかった。


「まあ別に馬鹿だからと言って嫌いじゃなかったがな。なかなか悪くない相棒だったよ」

「へぇ……ところで、力しか上がらないって言ってたけど、どれくらい上がったの?」

「……まあ、いつか拾いに行く日もあるだろうさ」

「いや、教えてくれればいいことでしょ!?」

「何でもかんでも全部教えればいいって物じゃないだろう、うん。新鮮な驚きがあってこその冒険じゃないかな……!」

「それっぽいこと言って何はぐらかそうとしてるの!?」

「実際、ほら、せっかくハヅキは色々初めて見る物なんだし、初見の感想って言うのは大事にする物だろう? 二周目の俺とは、捉え方も違って重大なことに気がつくかもしれないし」

「それは、そうかもしれないけど……」

「ということで、アリアの事は実際にあって見るまで内緒……お楽しみという事で」

「何か隠したいことあるだけでしょ!? 一体何があるの!?」

「さぁて他に反省しなきゃいけないことはあったかなーと」

「ちょっとぉぉー!?」

 髪を掴まれてグイグイと揺すられたが、それ以上教えてはやらなかった。実物見なきゃ、伝わらない事もあるしな……ハヅキには是非、自分の目で見て感想を抱いてほしい。




「ぐぅ……本当に教える気がない……はぁ…………しょうがないから別なこと聞くけどさ」

 一分ほど人の頭をシェイクして気が済んだのか、やっと追及を諦めてくれた。

「そういえばだけど、仮にパラメータで強さ聞いても、よく分からないって事を思い出したわ」

「うん? よく分からない?」

「ガイアも言ってたけど、基準とか無いじゃない? ガイアが、あのステータスであれだけゴーレムと戦えてたんだし、小さい数値なら、何となーくは、掴めてきたけどさ。スフィアとか、パラメータがおかしいじゃない? あそこまで行かれると見当もつかないっていうか……実際、どれくらい強いの?」

 なるほど、スフィアの強さか……まあ確かに、急に四桁超えた数字見せられても混乱するわな。


「そうだな……とりあえず、力2400って言うとだ」

「うん」

「魔王以外には勝てるんじゃね?」

「へ?」

「いや、あの邪龍も、厄介な某闇の衣風な防御壁さえなきゃ、普通に戦えそうかな」

「え、いや、え?」

「そもそも、あのゴーレム軍団やヴェアヴァルフをスパスパ切ってる辺りで、もうおかしいだろ。全身フルに激レアの魔石装備で固めても、力2000越えなんてあり得ない。これだけの値があれば、大体の奴は、それこそ魔王クラスでも、斬れる」

「……そんなすごいの、あの子が?」

「ああ、すごいぞ。呪いと紙装甲と鈍足と持久力に目をつぶれば……!」

「……ええ、そうだったわね……」


 そう、実は目論見通り、スフィアは攻略のショートカットどころか、魔王も倒せそうな程の火力を備えた剣だったのだ。ただし、力に限る。実際に魔王なんかと戦えば、多分というか、絶対即死する。


「まあ俺は技術もあるし、技にも500加護が掛かってるから……反応出来ても早くて避けられない攻撃とか、剣裁きじゃどうにもならない範囲攻撃とか、そういうのを使われなければ……」

「そういえば、加護が掛かってるって、どんな感じなの? 力なんて2400も上がってるんでしょ? ……石とか握りつぶせたりするの?」

「加護なぁ……何と言うか……加護が掛かってるなぁって感じ?」

「い、いや、それがどんな感じか聞いてるんだけど?」

「そうだな……加護が掛かったからって、俺がムキムキになったりしてる訳じゃないだろ? 何て言うか、行動に加護が乗っているって感じ? 俺が明確な攻撃の意思を持って、パンチとかすると威力が出るんだ。単に石を強く握るくらいじゃ壊せはしないんじゃないだろうか……石を本気で壊そうと思えば、加護が乗るかもしれないが」

「へぇ……じゃあ、技って言うのは? そもそもどういう加護なの、それ?」

「例えて言うなら……いい籠手を装備すると、ジャグリングとかする時、手首のスナップの利かせ方が、自分の物じゃないみたいにうまくいく」

「分かるような分からないような例え……!」

「あと、加護じゃない、俺自身の技がいくら高くても、ジャグリングがうまくいくかって言われたら難しいな。あくまで、剣の技術とか、魔法操作とか、戦闘技術を評価されての値だろうし、器用さとはまた違うだろうしな……一括りに技ってなってるが、サンの腕輪が区別適当なだけで、実際はもっと加護の種類も細分化されてるのかもしれない」


 腕輪で見れないだけで、剣技術とか、投擲技術とか実は別れてるんだろうか。あるいは、どこぞのローグライクの様に、採掘とか鍵開けとか読書とかのスキルがあって、そのレベルに補正が掛かっているとか……あれ基準だと壁掘れば体力改善するんだろうか……


「あ、それじゃあ、魔力は?」

 思考が逸れて、ただ昔遊んだゲームを懐かしむだけになり始めた所を、ハヅキの声で現実に帰ってきた。

「魔力?」

「うん、私、魔法ってよく知らないし……そもそも、魔力って何? そういうのがあるの?」

「うん? パラメータの話ではなくてか?」

「スフィアが、魔力吸って、とか言ってたし……強奪の呪いにも、魔力を奪われるって書いてあるじゃない? パラメータが奪われるんじゃなくて、体力が奪われる、のよね? 魔力って、前に、魔法の強さとか聞いた気がするんだけど……」

「あー、それか、それにはだな、とても深くどうでもよい雑で面倒なややこしいがシンプルな理由があってな」

「あんたの説明の方がややこしいわよ!? つまり何なのよ!?」

 つまり何なのか、そうだな、一言でまとめると。


「つまり、サンが全部悪い」

「……はい?」

無駄に聖戦な感じのゲームを引っ張り出しフ〇ンとシルヴ〇ア結婚させようとか謎のプレイングなぞしてたせいで執筆が非常に遅れたことをここに謝罪します。次話も遅れるかな!!

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