第3話 ラテックス手袋でこちょこちょ
前回の「こちょばし屋」でのくすぐり施術から一週間が経っていた。
しかし、優人は大学の講義中も、アルバイト中も、夜ベッドに入っても、あの時の記憶が頭から離れなかった。
仰向けでモミモミされ、正座で後ろから抱きつかれ、バンザイの姿勢で容赦なくコチョコチョされたこと。
みうの柔らかい胸の感触、甘い声、そして何より、脇腹を這い回る指の感触。すべてが鮮明に蘇り、夜中に一人で悶々としてしまうほどだった。
「もう……我慢できない……」
優人はスマホを開き、「こちょばし屋」の予約ページにアクセスした。前回より2000円高い「ローションくすぐりコース」を選ぶ。もちろん、指名するのはみうだ。
当日。
優人は前回と同じマンションの5階、506号室のインターホンを鳴らした。
「はい、こちょばし屋です~」
聞き覚えのある明るい声。
「優人です……今日もお願いします……」
「あ、優人さん! お待ちしてました~。どうぞどうぞ」
ドアが開き、みうがいつものようにニコニコと笑顔で出迎えてくれた。今日は、前回よりもラフな白い施術着姿だ。袖をまくり上げた腕や、太ももをあらわにしたホットパンツにどきりとする。
「前回から一週間しか経ってないのに、また来てくれちゃったんですね。 私のコチョコチョ、忘れられなかったですか?」
みうはイタズラっぽく目を細めてそう言った。優人は顔を赤らめながら、小さく頷いた。
「……はい、忘れられなくて……」
「ふふ、嬉しいです。今日はローションコースですよ。 前回より滑りが良くなって、もっと気持ちよくなると思います。覚悟してくださいね~?」
みうに案内され、施術部屋に入る。部屋の雰囲気は前回と同じだが、中央のベッドの横に、小さなボウルとボトルが置かれていた。お湯で温められたローションが入っているらしい。
「それじゃあ、まずはうつ伏せでお願いします。 紙パンツだけ履いて、いつものように寝て待っていてくださいね」
優人は素早く服を脱ぎ、紙パンツ一枚になってうつ伏せに寝転がった。顔をクッションに埋め、両腕をバンザイの姿勢にする。すでに期待と緊張で体は熱くなっていた。
少しして、みうが入ってくる。
「準備OKですね。では、始めますよ~」
ふいに、ギチッ、ギチッ、という音がした。優人が横目でチラッと見ると、彼女は黒いラテックス手袋を両手にぴったりとはめていた。艶やかな黒い手袋が、みうの細い指を強調している。
優人の視線に気づいたみうは、両手を顔の前でワキワキと動かしながら、ニコリと笑った。
「これから、この黒いスベスベな手袋でコチョコチョしちゃいますよ~?」
その仕草とセリフに、過去の記憶がフラッシュバックした。小さい頃、よく見ていたヒーロー番組。敵の女幹部が、黒いグローブをはめて、捕らえたヒロインをくすぐり拷問するシーンだ。あの美人な女幹部は、いつも妖艶な笑みを浮かべながら「コチョコチョ~」と言って、ヒロインを大爆笑させていた。
そして、家で姉の美咲とヒーローごっこをした時。美咲は必ず女幹部役をやり、優人を捕まえてはゴム手袋で優人を大爆笑させていた。
「あれれ~? ヒーローのくせにコチョコチョ攻撃に負けちゃうの? え、まだ降参しない? じゃあ、降参するまで、くすぐり続けちゃうからね!」
姉の指が脇腹をくすぐり回すと、優人は必ず大爆笑して「降参!」と叫ばされていた。
今、目の前にいるみうの黒いラテックス手袋が、その記憶と重なって見える。
「ふふ、優人さん、目が泳いでる。 手袋でくすぐられるの、好きだったりします?」
みうは笑いながら、ボウルからローションを手に取った。 お湯で温められたローションは、透明で少しトロトロとしている。
「まずは背中に塗りますね。温かいですよ~」
みうは優人の背中にまたがるように座り、両手を背中に乗せた。温かいローションが背中に広がり、黒い手袋の滑らかな感触が肌を撫でる。
「んっ……」
塗られるだけでも、すでにくすぐったい。ローションのぬるぬるした感触が、普通のベビーパウダーとは全く違う刺激を与えてくる。
みうは最初は背中全体にローションを丁寧に塗っていたが、徐々に、わざとくすぐったい場所に指を集中させ始めた。
特に、優人の弱点である、脇腹のライン。黒い手袋の指の腹が、ローションを塗りたくながら、ゆっくりとサワサワと動く。
「ひっ……! あ、くっ……」
優人は体を小さくくねらせた。まだ本格的なくすぐりではない。ただローションを塗っているだけだ。それなのに、指が皮膚の上を滑るだけで、身体はくすぐったさに思わず反応してしまう。
「ふふ、塗ってるだけなのに反応いいですね。 もっとちゃんと塗らなきゃいけないから、もう一回ここ、念入りに塗りますよ~?」
みうはそう言いながら、同じ場所にローションを追加で垂らし、黒い手袋の指を立てて、コチョコチョと細かく動かしながら塗り広げた。
「ははっ! あははっ! みうさん、そこ……!」
優人は笑いを堪えきれなくなってきた。ローションのぬるぬるが、指の動きを増幅させ、脇腹の神経を直接刺激する。みうは容赦なく、同じ場所を何度も往復した。
「ほーら、動いちゃったらもう一回塗らないとダメですよ~?」
と言いながら、わざと指の腹を立てて、サワサワ、コチョコチョと執拗にローションを擦り込む。
「ひゃはっ! あははははっ! もう、塗り終わってるのにっ……!」
「まだまだ全然ですよ~。全身にしっかり塗らないと、ローションくすぐりの効果が出ませんから」
みうの声は楽しげだった。彼女は優人の脇腹や脇の下、腰、肩、そして特に股間付近を、念入りに、くすぐるようにローションを塗りたくっていった。
優人はベッドの上で体をくねらせ、枕を握りしめながら笑い声を漏らし続けた。黒いラテックス手袋の冷たい艶やかな感触と、温かいローションのぬるぬるが混ざり、普段とは全く違う、ねっとりとしたくすぐったさが全身を支配していく。
やがて、背中側がほぼ塗り終わった頃には、優人はすでに大爆笑してしまっていた。
「ははははっ! あはははははっ! みうさん……もう、くすぐったすぎっ……!」
「ふふふ、まだ上半身だけですよ? これからお尻や太もも、ふくらはぎまで、しっかり塗りますからね。 それに……仰向けになったら、もっとくすぐったいことになりますよ?」
みうは黒い手袋をワキワキと動かしながら、優人の耳元で甘く囁いた。
ローションで全身がテカテカと光り始めている。優人はさらなるくすぐったさを覚悟するのだった。




