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イルカの子、クジラの子

作者:守尾八十八
 記者として勤めていた新聞社を追われ、身も心もぼろぼろになり、金銭的にどん底まで落ちぶれた「おれ」は、ノンフィクション作家として将来がなんとか見通せるまでの復活を遂げ、中学三年の一人娘、瑠奈(るな)に会うため、「島」に渡る。瑠奈は、母親であるおれの前妻、夕香里(ゆかり)と島で暮らす。瑠奈と会うのはおれにとって四年ぶりだ。

 夕香里は、思わぬ幸せをつかんでいた。しかし、瑠奈は、深刻な問題に打ちひしがれていた。瑠奈は夕香里の幸せの代償を支払わされているのだと、おれは確信する。中学生の少女には到底、課せられるべきではない、気が狂いそうなほどの地獄絵図のような苦しみを、瑠奈は受忍させられていた。

 おれは、瑠奈を島から連れ出すべきだと主張。しかし、夕香里は納得しない。瑠奈に対する哀れみと夕香里に対する憎悪が入り混じり、不安定な精神のよりどころを見つけられないおれは、島随一の繁華街に紛れ込む。殺気立ち暴力沙汰を起こすが、返り討ちに遭う。逃れた先で、エキゾチックなゲイに救われる。

 瑠奈を手放すと夕香里に認めさせることに、おれは成功する。しかし、心に傷を負っているのは、瑠奈だけではなかった。島の因習にとらわれる夕香里は、自分一人で責任を背負い込もうとしていた。瑠奈から真相を聴かされ、おれは全てを理解する。

 まだ瑠奈が夕香里の腹にいたときのことを、おれは回想する。夕香里が瑠奈をどれほど愛しているか、どれほど大事に育ててきたのかを、思い知らされる。瑠奈と夕香里とおれの三人の暮らしを破壊したのは、おれだった。瑠奈と夕香里を不幸に陥れた張本人は、父であり夫であるおれだった。

 島から離れるため瑠奈を伴い空港に向かう道中、島の米軍基地から飛び立った大型プロペラ機を眺めながら、おれは、ある決心をする。

【筆者は8月9~30日の間、威力業務妨害の容疑で警察に身柄を勾留されていました。その間の連載更新(投稿)は、事前の「予約」によるものです。】
壱の5.不完全なサイン
2023/07/21 00:00
壱の6.他人の子
2023/07/22 00:00
壱の9.四メートルが境
2023/07/25 00:00
壱の15.孫である可能性
2023/07/31 00:00
壱の18.二種免許いらない
2023/08/03 00:00
壱の20.海人の家系
2023/08/05 00:00
壱の22.いんちき霊媒師
2023/08/07 00:00
弐の2.産声を上げない
2023/08/09 00:00
弐の9.駆けてくる足音
2023/08/16 00:00
参.炎天下の錯覚
2023/08/17 00:00
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