表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥闇不道のアポストル  作者: 茅井 祐世
第六章 焔槍の切先
84/86

第八十話

「で」


 カーターが部屋に入ると、見るからに不満を募らせた様子でゼル・アッシュヴァルが席についていた。


「よっぽど大した用なんでしょうね。緊急の評議会メンバー招集って、アタシが就いてから初めてなんだけど」


 ゼルを諌める者も、同調する者もいなかった。重い沈黙が続き、ゼルは舌打ちをする。


 ジュール・コルヴァス、エルディア・ルミナリアもすでに見えていたが、ナイルズ・ヴァルケンだけがまだ来ていない。カーターはジョゼの斜め後ろに立ったまま控えていた。


 カーターは部屋に入ってすぐから、気になっていることがあった。ジュールの横に、見慣れない男が立っている。


 グラヌスクの騎士は火のゆらめきを象徴した、真っ赤な鎧を纏う。五摂家の立場になってはじめて戦場で目立つように、黒や、白などの意匠が凝らされた鎧になる。目の前の男は真っ白。白銀のような鎧だった。


(こんな男、城内でも見たことがないぞ……)


 カーターは訝しげに男を眺める。男は武人というような風体でもなく、どちらかといえば細く、不健康そうな印象を受けた。だが、目には有無を言わせぬ力が奥にある。カーターは得体の知れない男の存在に言い知れない不安を覚えていた。

 

 荒々しく扉が開けられる。顔を赤くしたナイルズ・ヴァルケンだった。


「こんな時間に集まるなんて聞いてねえぞお」


 あからさまに酒を飲んだ、といった雰囲気。ジョゼが呆れた様子で頭を抱えた。


「ナイルズ。すまないがそれだけ重大ということだ。早く座ってもらえるかな」


 ジュールの声に、ナイルズはへいへい、と席に着く。これで全員。


「緊急ですまないが、重大な案件が生じてね。改めて評議会を始めよう」


 ジュールが目配せをすると側に控えていた、白銀の鎧が一歩前に出る。


「みなさま」


 勿体つけたような所作で、深々と男が礼をする。


「ご多用のところ失礼いたします。私王器観測局、主席観測執行官のトゥガ・ミストラクと申します。以後お見知り置きを」


「ほう……?」


 ジョゼが眉を顰めた。カーターは聞いたことすらない職名だ。ミストラク家といえば、コルヴァス家の人間だったはずだが——。


「御託はイイからさっさと本題話せよ」


「ゼル」


「分かってるわ。手短にしろって」


 ゼルをエルディアがたしなめる。いつもこうなんだと、さすがのカーターにも理解できた。しかし、これを受けてトゥガは気にした様子もなく、にへらと笑って言葉を続ける。


「これは失礼。では簡潔に。私が派兵を任されています、“グラディス”の人間から先ほど急ぎの連絡を受けまして」


「“グラディス”だあ?」


 ナイルズが口を挟むが、トゥガはもう止めるつもりはないようだ。


「先ほど我が国の兵が、ゼファレインの聖域、“風結宮”の本殿を破壊、内部で祭事者である供風子を殺害したとの報告を受けております」


「何ですって!?」


 部屋の空気が一気に張り詰めたようにカーターは感じた。エルディアが悲鳴のような声を上げる。ゼルは舌打ちして小さく毒づいた。


「理由は?」


 唯一、最年長のジョゼだけはいつもと同じ様子で聞き返す。


「は。何でも、“例の一行”がゼファレインを潜伏先にしていたようで。何やら狙いのために風結宮に侵入し、供風子と戦闘したところに立ち入ったようです」


 ダイン? アイツらは風のアポストルに連れられていたはずだ。なぜゼファレインの勢力と敵対を?


 カーターの脳裏はハテナに埋め尽くされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ