第2話 老夫婦
「泉。政府の発表はテレビで見たが、これはいったいどういうことなんだ?」
藤井には泉との久しぶりの再会を喜んでいる余裕はなかった。
「俺にもよく分からない。ただ、数カ月前に北区で見つかった不審死の遺体を署に持ってきたんだが、それが突然動き出し人を襲い始めた。まさにゾンビ映画だよ。それが関係していることは間違いない。」
藤井は信じられない気持ちでいたが、目の前で起きていることを考えるとそれを現実として受け止めるしかなかった。
「あと、このゾンビたちの対処方法だが...」
泉の説明によると、ゾンビたちも脳に何らかのダメージを与えると動かなくなる。空気感染はしないが、噛まれたり、血を浴びると感染するそうだ。
その時、先ほど救助したおばあさんが話しかけてきた。
「すいません...札幌にいる娘が心配でここまで来たのですが、ここは札幌のどこですか?」
「ここは川沿っていう場所になりますよ。どちらに娘さんはいるのですか?」
おばあさんの話を聞くと、緊急事態宣言以降は小樽市にある自宅で静かにしていたが、南区石山に住んでいる娘と連絡が取れなくなり、心配で娘の家に向かっていたところ車で事故を起こしてしまったそうだ。
「石山だと車では数十分の距離ですね。ただ、あの車では迎えないので私の車で送りますよ。」
藤井がそう答えると、泉が割って入ってきた。
「藤井。送るのは構わないが、外にはあいつらがうようよいる。俺たちが今持っている拳銃1人1丁ずつの3丁。弾は残りが少ない。真駒内駐屯地が避難所になっているそうだから、まずは避難する方が先だ。」
外は夕日が沈み始めてきていた。
「これから外に出るのは危険ですので、まずはここで明日の朝まで休んで頂き、明日の朝にお二人を避難所までお連れ致します。娘さんたちもすでに避難しているかもしれません。そこにいなければ、私たちが娘さんのご自宅を見に行ってきます。どうでしょうか?」
藤井が老夫婦に説明すると、老夫婦は感謝し、ソファで休み始めた。
「泉と内田君もまずは休んでくれ。」
せまい家であったが、疲れ切っていたため各々眠りについた。
パタン。
静かにドアを閉める音だったが、仮眠中でも無線を聞いていることに慣れていた三人は同時に目を覚ました。
そして、すぐに外から叫び声が聞こえた。
「わーーーーーー!!!助けて!!!」
三人は玄関に向かって走った。藤井は玄関にあるはずの自分の車のカギがないことにすぐに気が付いた。そして、玄関のドアを開けると階下の駐車場で老夫婦がゾンビ数体に食べられていた。
「くそ!!!」
三人は老夫婦の救助を諦め、部屋に戻った......
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