第10話 札幌市立病院②
新人看護師の小野は502病室に向かっていた。手に持つライトは震えていた。
怖がりの私は看護師には向いていない。ここの病院で基礎を学んだらすぐに日勤しかない個人病院に転職しようと強く思った。
その時。前方の方から足音が聞こえた。
「コツ。コツ......」
小野は手に持つライトを強く握りしめた。曲がり角から何かが現れた。小野はライトでその方向を照らした......
「まぶしい!! 何すんのよ!!」
そこには、先輩看護師の大木がいた。
「先輩!!」
小野は泣きそうな声を出しながら、大木に抱きついた。大木は嫌がるように、小野を振り払った。
「そんなんじゃ看護師は務まらないわよ!!」
「だって」
小野は大木に先ほどの警備当直の話をした。
「あいつか。気にするんじゃない。それよりも若杉さんはどうだった?」
「今から行くんですよ」
「はいはい。早く見てきなさい。私は先に戻っているからね」
大木は小野がここの病棟には向いていなと思いながら、足早にナースステーションの方向に歩いて行った。
「えー。一緒に行きましょうよ......」
小野はさらに恐怖が増していた。しかし、勇気を振り絞り、502病室の前に到着した。ゆっくりと扉を開けた。
「若杉さん。大丈夫ですか?」
502病室は4人部屋で、若杉のベットは窓際の右側だ。他の3人は、すやすやと寝ている。
「若杉さん」
そう言って、別途に近づいたとき、後ろに人の気配がした。振り向くと......そこに、男が立っていた。
「ひゃあ!!」
小野は思わず声を出してしまった。
「ごめんなさい。驚かすつもりはなかったんですよ」
そこには若杉が立っていた。
「トイレに行っていただけですよ」
そう言って、若杉は自分のベットで横になった。
「若杉さん。体調に変化はありませんか?」
若杉は横になりながら、特に変化はないと答えた。小野は先生からの指示と言われたが、きっと自分が試されていたのではないかと疑心暗鬼になり、転職することを決めた。
その頃、北警察署では幹部たちも疲れが出始めて、椅子の上で寝ている者もいた。副署長は自分の席で本部とのやり取りをしている。そして、電話を切ると署長室へと向かった。
「失礼します!!」
署長も自分の席で半分寝ていたが、副署長の声で目を覚ました。
「署長。本部に一報を入れました。本部の当直指令が捜査一課長でしたが、話が通じづ苦労しました」
「そりゃそうだろ。私も自分の目で見ない限り、こんなこと信じられないよ」
「本部ではとりあえず署で対応してくれとのこと。本署の封鎖については、目をつぶるが、通常業務に支障を出さないようにとのことです」
「そうか」
「とりあえず、刑事部長が定時に出勤してきたら報告するとのことです」
「しかたない。待つか」
日付は変わり、時計の針は午前3時を指していた。
「留置場のマルガイの様子に変わりないか?」
「はい。特に変化はありません」
副署長は署長への報告をしながら、これは夢ではないのかと思った。しかし、副署長も留置場のゾンビを見るたびに現実へと戻るのであった。
その頃、刑事課の部屋では泉と内田がひそひそと話をしていた。
「泉係長。うちの幹部たちも本部もこの一大事に悠長ですよね」
「しかたないさ。これが公務員だ」
「それになんだかんだ言って、我々、下の者がやることなすこと考えないといけないんですよ」
「上から指示されるよりはましだ。それより、梅津ドクターからの連絡があるまでは下手に動けないからな。どうしたものか」
日が昇り、人々が動き始める時間が刻々と近づいている。
そして、1台の車が北警察署へと近づいてきた......




