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俺と黒猫とガーディアンの異世界捜索隊  作者: s_stein
第三章 ダンジョン編(2)
54/60

54.魔石を飲み込む鵜のごとく

「操られし肉体よ ここで生ける者の肉体を食らうこと(あた)わず 直ちに塵となりて滅せよ」


 紫髪の男が詠唱すると、右手の先に金色に輝く魔方陣が出現する。


 すると、アンデッドたちが叫び声を上げて次々と崩れていき、床に吸い込まれていった。


 シュヴァルツとカエデは、恐る恐る辺りを見渡す。宙に浮いたままのハルトは、二人のそばに着地するようカメリアへ指示した。


 着地した彼は、自分たちを追ってきた相手に「一応は礼を言う」と声をかけた。


「んー? 言葉だけで済ませようとしているのか?」


「どういう意味だ?

 ってか、誰だ、てめーら? なぜ、俺たちの後を追ってきた?」


 ハルトは語気を荒げ、上目遣いで睨み付ける。カエデはビクビクしながら、ハルトの背中へ回った。


「私の名は、エルバ・モスカ。こちらのお方は――」


 モスカは右手のひらを上に向け、右隣の人物を指し示し、うやうやしく頭を下げる。


「ノアール・ミスト様にあらせられます」


 カエデが驚いてビクンとしたことは、ハルトの背中に伝わった。


 彼は小声で「知り合いか?」と聞くと、カエデは「悪しき魔女」と答える。


「で、追ってきた理由は?」


「その前に、あのモンスターを消し去った礼をいただかないと」


「さっき言ったろ」


「言葉など何とでも言えるので、形にしていただかないと」


「魔石か?」


「左様」


「断ったら?」


「モンスターを召喚するまで」


 ハルトは、歯が折れるくらいに歯ぎしりをする。


「言わせておけば! 手の込んだ追い剥ぎじゃねーかよ!

 さては、さっきのアンデッドは、てめーらの仕業か!?」


「あのモンスターを召喚するとは一言も言ってない。

 何がいい? コボルトか? それとも、ここはミノタウロスか?」


「魔石を渡したら?」


「ここからあの扉まで安全に渡れる道を作ろう。そして、あの先にある第5階層のラスボスを倒すのに手を貸してやろう」


「ずいぶんと気前がいいな。助けたお礼をすると、至れり尽くせりのサービスが付いてくるなんてよー。

 そんなに魔石が欲しいんか?」


「左様」


「その言葉に偽りはないな?」


「もちろん」


 ハルトは、自分が持っている魔石を袋ごとモスカへ放り投げた。


「んー?」


「何だよ!」


「こんなに少なくはないだろう?」


「拾うところを見てたのかよ!?」


 今度はシュヴァルツが持っていた袋を放り投げた。


「なんか身ぐるみ剥がされている気分だぜ! やっぱ、てめーら、追い剥ぎだろ!?

 それとも何か? てめーらは鵜飼いで、俺たちは魔石を飲み込む鵜かよ!?」


 カエデはその言葉に動揺したが、前にいるハルトは気づかなかった。


「てめーらとは失礼な。ちゃんとモスカという名前がある」


「モスカもペスカも、スカが付く奴は気に入らん!」


「ああ、あの金の亡者のペスカ? あんな下劣な男と同列に扱わないで欲しいが」


「金貨か魔石かの違いでしかないだろう!」


 モスカはそれには答えず「フン」と鼻を鳴らし、魔石の入った袋をローブの内側にしまった。これにはハルトもホッとした。カエデの魔石が奪われなくて済んだからだ。


「では、約束通り、道を作ろう」


 モスカが右手を突き出すと、再び金色の魔方陣が出現し、ハルトたちの立っている場所から扉まで、幅3メートルの金色の道が延びていった。


「では、参ろうか」


「おい、ちょっと待て。俺の質問に答えろ」


 歩み出したモスカとミストが足を止めた。


「魔石の話か?」


「違う。てめーらが、この先の第5階層で何を狙っているかだよ」


 モスカはニヤリと笑った。


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