ヒロイン
転生キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
神様はいた。ありがとう。苦節29年ついに私の時代が!!!ムフフw
前世ではお世辞にも、容姿の褒め言葉を頂けなかった。
幼稚園の卒園式でおめかしして友達と撮った写真を見たとき、私はもしかしたら普通のお嫁さんは厳しいかもしれないと予感した。妹が成長すると予感は確信に変わった。
2歳下の妹がこれまたテンプレ乙並に見た目も性格も天使ちゃん。両親は分け隔てなく育ててくれたけど、両祖父母や親戚はあからさまではなかったけどキチンと区別して接してくれていた。よくされた助言は「手に職をつけろ」「貯金しろ」だった。嫌味なら刎ねつけたかも知れないが悪意のない憐みの眼差しや、慰めはきつかった。
頭は悪くなかったので、手に職を付け薬剤師になった。人間関係は悪くなかった。ハマる趣味も出来たし恋愛事には縁は全くなかったが、気ままに生きて悪くない人生だった。
それにしても呆気ない最期だ。目の前のイケメン担当官が教えてくれた。
雨の日のコンビニ帰りに滑って頭を打って死んだらしい。
よく冗談で真由(妹だよ)に不慮の事故の時はパソコンは破壊して、押入れのダンボールは我が悪友に贈呈してくれるようにお願いしていたけど大丈夫だろうか?親にはちょっと見せられない。気にし始めると落ち着かなくなって来た。イケメンに聞いてみようか。
「大丈夫ですよ。妹さんが約束守ってくれましたよ。」
テンプレキタ━━━━━━!!ヒュー。スゴイ?!心読まれました。
「えーっと、次の世界について説明を・・・」
フムフム、イケメンの説明を漏らさず聴くと、どうもそんなに甘い世界ではないようだ。
まず魔物は却下だ。人間だと魔力はあるが魔法は使えない。生まれる先も指定できない。記憶は引き継げるがスキル等は無い経験値も無いらしい・・・・・。1人暮らしの夜は長い。WEB小説は暇つぶしと現実逃避と酒のあてには持って来いだった。イロイロ妄想していただけにリアルの世知辛さにゲンナリする。
ニコニコ顔のイケメンを見てピンとキマシタ。
「転生したくない?僕のアシスタント?」
イケメンの顔が少し青ざめる。
「イヤイヤ。それは無理ですね。別の世界も不可です。無理矢理ですか?残念ながら出来ないです。あなたのご希望に出来るだけ添うように・・・。え?ここに居すわる?またまたご冗談がお上手・・。本気ですか?!目の保養?隅っこで待機?駄目です。駄目です。は?ここでは死んだりしませんけど。ちょっと寛がないで下さい!!」
イケメンが目の前でオロオロするのを鑑賞するのは楽しい。悪くないw。お1人様女子は図太くないと厳しい世の中だったのだ。
「失礼します。」
イケメンの後ろから渋めの男前が現れた!うはwモロタイプなんですけど。男前が良い感じのニヤッと笑いを披露してくれた。あーこれはもう、ここに定住する。
「ハイな状態ですね。資料を見ますとあなたは冷静で落ち着きのある人物の様ですし、良識のある方だ。」
ナニ言ってんだコイツ。死んでまで縛られた生活はしたくないで御座る。はっちゃけて何が悪い。前世は悪くはなかったけど決して良くもなかった。やっぱり恋愛だってしてみたい。そうだドキドキ、ラブラブしたかったのだ。ぶっちゃけトキメキを経験できるらな悪い男にだまされても良かったのにそんな機会もなかった。田舎だったしホストなんて無かったし・・。真面目にしかなれないだけだ。
「はは。面白い人だ。あなたの周りの男性の目は節穴だった。次の人生モテモテで行きましょう。」
なぬ?モテモテ?
「容姿はあなたの希望を最大限考慮します。問題ありません。苦労しない様に魔力もおまけして更に増加しましょう。魔道具の使用が楽になりますよ。家柄は指定できませんが、裕福な地域を渡り先に指定しましょう。もし渡った場所が不満なら自立できるように薬剤師の知識が生かせるように向こうの世界の調合の知識をプラスしましょう。どうですか?」
悪くない。イケメンより好条件だ。粘ったかいがあった。イケメンは真っ青になってるw
「やはり、冷静でなかなか手ごわい人だ。次の世界の人の為に十分に知識を披露してください。詳しい説明を担当からあらためてお聞きください。」
男前は優しく微笑むとどこかに行ってしまった。残念、もっと交渉したかった。
「さっきの我儘は芝居ですか?130回は伊達じゃないですね。見抜けなかったです。ハイ?それは転生した回数ですよ。前の記憶は地球に生まれると消去されるんです。渡りの事を詳しくですか?えー、では・・」
意外に壮大な話だった。記憶がなくなっても以前の経験が無意識に影響するらし、ちなみに前の事は教えてはくれなかった。けち。
「ケチではなく規則です。大分優遇されてますから頑張ってくださいね。渡りだと言いふらしたら駄目ですよ。では131回目の渡りを頑張ってください。」
ハイ、モテモテ人生頑張ります。
☨
ハイどうも赤ちゃんです。
男前の担当さんありがとう、ドンピシャ金持ちみたいです。それに素晴らしきオプションが・・・。
優しくカッコいいお兄様が付いておりました。
2割の人が赤ちゃん時代に挫けるらしいけど、私はノープロブレム。だってほらお兄様が抱っこしてくれるし、イケてる顔が近い・・。サイコー。両親も美男美女だし、これは顔面偏差値期待できそう、ムフ。
イケメンさん男前さんありがとう。発展なんてブッチする予定だったけど、わたしの素敵な環境のお礼に頑張る。医療革命起こすよ。それぐらい頑張る。マジでありがとう~!
☨
「先輩、あんなに優遇して大丈夫なんですか?」
鋭い目で睨まれる、コワイ・・。
「ただ希望を聞くだけが仕事じゃないぞ。お前マジで資料読み込んでるのか?彼女は医療系の発展のスペシャリストだ。多分次はパス持ちになる。地球は知識の補充の為に誘惑を出来るだけ排除した、かなり鬱憤溜まっていたから、ガス抜きが必要だろ。あのタイプは煽てないと上手く手を抜く。やる気にさせないと。」
「すいません。これからは気を付けます。」
「新人にはちょっと難しい渡りだった。でもあのぐらい捌けないとパスの担当に成れないぞ。」
「はい、頑張ります。」
ガシャン。ダダダダッダ。先輩と俺の後ろを誰かが走り抜けてようとしている。
なんだ?
通路のかなり向こうから叫び声が聞こえる。
「誰か彼女を捕まえてくれ!!!!パニックだ。」
違う世界の管理人が必死に追いかけている。俺専用の境界線に向かって女が突っ込んでくる。
「まて!!」
素早く先輩が女の腕を掴む。赤毛の綺麗な女だった。
息切れの管理人が駆け込んできた。
「た・・た助かった。降格されるところだった。ハーー。ちょっと待って息を整える。」
腕を掴む先輩を見る女は驚くほど笑顔だった。あれ?なにか話しかけてる?先輩は動かない、何かがおかしい。お、俺も拘束を手伝うべきか?
落ち着いた管理人が先輩から女を受け取る瞬間、強烈なキックだった。先輩の腹に綺麗にヒットした。なんで攻撃が出来るんだ?次に管理人に裏拳が決まった。吹っ飛んだ。俺も慌てて捕まえに行くが、かすりもしなかった。
俺の担当の境界線に躊躇なく飛び込んで行った。
嵐の様だった。
先輩が動いた。
「ほれ無審査だ。お前の担当だ。引き継ぎしろ。」
「は?無審査、引き継ぎ?」
先輩が倒れている管理人の介抱を始める。
「今日は盛り沢山だな。書類仕事頑張れよ。」
「え、え、え、え???」
管理人の意識が戻った。キョロキョロ見回している。状況を把握したのかドンドン青ざめていく。
「上司に殺される・・。」
「ありゃ無理だ。ちゃんと説明してやる。」
涙目の管理人が先輩の手を握り感謝を述べている。
何かがおかしい。でも分からない。けど分かっていることもある。
今日は100%残業だ・・・。