第65話:上達する操縦技術あるいは万が一の備え
敵ロボットの銃口が、真っ直ぐ私に向けられる。
撃たれる前に。私は短く息を吐き、
手元のレバーを引き絞りながら、ブーツの底で
フットペダルを強く踏み込んだ。
愛機「ガソタム」が凄まじい駆動音を立てて前転し、
銃弾の届かない遮蔽物へと滑り込む。
敵機もそれを察知したのか、無駄弾を撃つことなく
次の攻撃へ移行。
だが、甘い。
私はそこでお行儀よく
隠れているつもりなんてなかった。
前転の勢いを殺さず、スラスターを逆噴射
遮蔽物の反対側へと一気に身体を突き出す!
敵機は一度リセットされた照準を慌てて戻そうとするが…
私の方がコンマ何秒か早い。
飛び出した瞬間、照準はすでに赤く染まっている。
あとは、細い指先でトリガーを深く押し込むだけ…!
―キィィィン!
コックピットを白一色に染めるほどの鮮烈な閃光。
放たれた超高熱のエネルギーの奔流は、
大気を引き裂きながら、無防備な敵機の腹部を
文字通りドロドロに融解させ、見事に撃ち抜いていた。
「お見事で御座います、レイ様
よもやセオリーを無視した戦術を選択されるとは…
これも日々の訓練のたまもので御座いましょう」
仮想敵機を撃破した後、バロがコックピットの
隅にある台座からホログラムを映し出し
拍手をする動作から私の操縦技術を褒めてきた。
「ですが、本番で同じ無茶をなさらぬよう、
くれぐれもご自愛ください。
訓練で再現されている振動やGなどは本番より
安全を考慮しておりますゆえ」
「大丈夫よ、本番なんてあるわけないでしょ」
毎日バロに言われるまま戦闘訓練を行っているが
今回のシミュレーションのような敵機がどこに
存在するというのだろう
私としては単純にTVゲームを楽しんでるって
感覚なんだけどな。
「では、続いて、弾道ミサイル迎撃訓練に入ります」
迎撃訓練…
この間バロにさんざん脅かされた弾道ミサイル…
しかし、あのあと冷静に考え直してみると
弾道ミサイルが日本に落ちることはないのでは
ないのではなかろうか?という考えにたどり着いた。
これは楽観した考えではなく
もし報復攻撃をする場合やはり
首都圏を狙うのではないだろうか?
迎撃ができない田舎にミサイルを落としても
なんのメリットもない…
というかただ単に日本を怒らせるだけではないだろうか
弾道ミサイルだってタダではない
かなり高額なはずだ…
東京が狙われるのなら今現在イージス艦が
配備されていなくても、PAC何とかで迎撃出来るはずだ
つまり、ガソタムを出撃させる事態には
絶対にならないはず…
「レイ様、訓練プログラムを…」
「バロ、やっぱり迎撃訓練は必要ないんじゃない?
必要性感じないよ?」
「いえレイ様、訓練とは最悪を想定して行うべきです。
たとえ確率が1%でも可能性があるのなら
訓練をするべきです」
うっ…
こういうときに限って頭が固いんだから…
ふう、
「わかったわよ、やればいいんでしょ?やれば」
「レイ様、訓練は真面目にお願いいたします」
中身がおじいちゃんだけあってやっぱり
頑固だな…バロは…




