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広義のカレー
家路を急いでいると、隣の家からカレーの匂いが流れてきた。
私は歩みを緩め、そっと鼻から深く息を吸った。
その時、隣の亭主が塀から顔を出した。
「こんばんは。カレーは人類が生んだ最も偉大な料理なのですよ」
「こ…こんばんは」
「何故だか分かりますか。それは、カレー粉が全ての調味料を凌駕するからなのです。カレー粉を少量でも使えば、それは広義のカレーと呼べるでしょう」
「ああ、カレーうどんやカレーピラフみたいな事ですか。何となく分かります」
「さらに突き詰めれば、カレーの匂いさえも広義のカレーなのです」
「匂いさえ?」
隣の亭主はゆっくり頷いた。
「さぁ、どうぞ」
私はいざなわれるように、隣の家のカレーの匂いを浴びた。
気付けば、周りにはご近所さんが集まっていた。
学生は頭に振りかける様に、お年寄りは膝や腰に擦り付ける様にカレーの匂いを浴びていた。
そして匂いが染み込み、広義のカレーとなった私達はとてもポジティブだった。
私達は今日よりも、明日の方が旨いのだ。




