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ハッピーバースデイ
『ドーーーーーン!』
恐怖に打ち勝った私は、砲身から白い煙と共に勢いよく夏の空に飛んだ。
人間大砲。
それは、私の一世一代の決断だった。
いつの頃からだろうか、私は生きている実感が乏しくなっていた。
そんなある日、私はテレビで人間大砲を観て虜になった。
空に解き放たれるあの瞬間にこそ、生への執着や目も眩む様な臨場感があるのではないかと思った。
そうして、自分自身の人生を取り戻す為に、私には人間大砲が必要不可欠だと感じる様になっていた。
これは、私が生まれ直す儀式なのだ。
綺麗な放物線を描きながら目を落とすと、私の新たな誕生を見届けようと集まった家族や仲間が小さく見えた。
「…あ」
皆、散歩に現れた近所のフレンチブルドッグに夢中だった。
誰も私など見ていなかった。
更に飛び出した勢いで、財布も家の鍵もポケットから吹き飛んでいた。
今日は私の二度目の誕生日。
何故だか私は笑っていた。
人生は、何と馬鹿馬鹿しい事か。




