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バレンタイン
「ただいま」
「あなた、おかえりなさい。どうだった?」
「ああ、一応“義理とこ”をいくつか貰ったよ」
“義理とこ”とは、“義理のひょっとこのお面”の事で、豆絞りのほっかむりをして、骨格もひょっとこではあるが、運転免許証の写真の様に無表情のお面なのだ。
私は“義理とこ”をテーブルに並べた。
「あなた、ちゃんとお返ししないと駄目よ」
「うん、来月ちゃんと“義理め”を返しておくよ」
“義理め”とは、“義理のおかめのお面”の事で、パッチリとした目、高い鼻、ほっそりとした頬のお面なのだ。
私は“義理とこ”を被って妻を見た。
「どうかな」
「まぁ、“義理とこ”にしては笑えるけど…。はい、どうぞ」
私は妻からひょっとこのお面を受け取った。
それは、口をすぼめて高く尖らせ、目元の表情もメリハリがある、“本命とこ”だった。
「これは凄いね。ありがとう」
「手作りなのよ、付けてみてよ」
私は妻の“本命とこ”を付けた。
「あっはっはっは…あなたよく似合うわ…ひー…」
妻は私を見て過呼吸になりそうなくらい笑った。
お面の下で、私もずっと笑っていた。




