42/53
拝観
出張先で、大仏を見に行った。
入り口で住職が言った。
「こちらでは、大仏様の有り難みが選べます。マイルド、普通、少し有り難い、有り難い、激有り難いがありますが、どれになさいますか?」
「珍しいですね。まぁ、折角だから、激有り難いがいいかな」
「有り難みが強いほど幸せになるとは限りませんが、大丈夫ですか?」
「どういう事ですか?」
「カレーが辛いほど旨いという訳ではないのと同じです。辛さの耐性は人それぞれで、その方に合った辛さで、旨いと感じるものです」
「…なるほど」
「あなた様は、有り難みの耐性がおありですか?」
先週、インドカレー屋で後悔したばかりの私は、迷った挙句、“マイルド”の大仏を拝観する事にした。
「………」
“マイルド”の顔は貧相で、膝には湿布が貼ってあった。
私の他に“マイルド”を拝観しているのは小さな子どもしかおらず、『これなら、少し有り難いくらいいけたな』と、結局、私は後悔した。




