21.僕たちのこれから
※書籍化の予定でしたが、諸事情により未書籍化となりました※
※文体に齟齬が生じるため、掲載当初のまま再掲載します※
※今見ると文章がつたないですが、ご容赦ください※
二十一 僕たちのこれから
不合格者が退寮した後、生き残りに勝った一回生は寮の部屋割りが代わり、別の学生と二人部屋で生活を共にする事になる。
言ってみれば、初めは二百八名いた生徒がぽろぽろ脱落して行き、中間考査でどっさり落第者が出て、また日常ぽろぽろ落第者を出して、総合テストで大量落第者を出した。
二人部屋が余っている状態であるのだから、一人ずつに割り当てれば良いのではという考えもあるが、次の十月入学組が入校する事を考えると、今のうちに二人部屋になっていた方が何度も部屋替えをせずに済み、楽なのである。
さて、『アカデミーで一番ついてない男』のミヤケは、足の怪我が完全に治っていないため、引っ越し作業が出来ない。
荷造りはミヤケに任せ、荷物運びは一回生総出で手伝う事になった。
これで、当分は同期生達に頭が上がらない事だろう。
二段ベッドも当然、下の階が当てられ、部屋も一階だった。
「ミヤケ、同室は同学年に当たったそうじゃないか、良かったな、下手すれば上級生に当たる事もあるんだから。まあ、同室生とは仲良くな!」
そう言ってフレッドは立ち去って行った。
「これでチーム編成が異なると一波乱あったりするもんだが、それは俺の考える事ではないな」
プランキッシュ・ゲリラのメンバーは幸運な事にチームメイトが同室である。
紅一点のグレイスはというと、女子の生徒数が少なく、女子寮の部屋ががら空き状態に近いため二人部屋を一人で使っている。
そんな彼らの勉強風景を初めてミヤケ達一回生はまともに目にしたのである。
二回生は、この週末を越したあと、本テストが待っている。その後は登山実習だ。
一回生の『コフィン・エクスプレス』なんて、序の口という凄まじい集中力で勉強をこなして行く。
共有スペースにお茶を飲みに来た一回生は息を飲んだ。
一回生は共有スペースの外れで購入したお茶を飲みながら、二回生の勉強の姿勢を見て学んでいる。
二回生は、試験があるというのにも拘らず、共同レポートの提出があるため、チーム員が総出で意見を出し合い、レポートをまとめて行く。
「全く何なのよ、あの天の邪鬼! この時期にレポート出さなくてもいいじゃない!」
「あの、グレイスさん? 天の邪鬼って、『親父』のこと?」
「その他にレポート出した教官が居る?」
ごもっとも、おりませんとも。
しかし。おっかない『親父』に対して『天の邪鬼』というのは、なんとなく可愛らしい気がして……。
少しの沈黙の後、チームメイトは揃って爆笑した。
「あの『親父』が『天の邪鬼』! なんか実物と違ってすっげー可愛い呼び名だな!」
フレッドは笑いに笑って、レポート用紙と一緒に椅子から転げ落ちた。
さてグレイスはというと、伝家の宝刀『ハリセン』を持ち出し……。
――スパーン
と小気味よい音を立ててフレッドを引っ叩いたとか。
それを機に気持ちを切り替えレポートに向かう五人。
課題は情報漏洩について。
「教官は情報収集・管理のスペシャリスト。それを念頭に置いて対応して行かないと。」
「ごく普通にレポート提出したら、間違いなくD判定が出るな」
「出題に寄れば、士官Aが士官Bにレポートを渡した。この行為から情報が漏れたと仮定すると、まずは情報の受け渡し方?」
「情報はファイルされていた訳だが、その機密ロックの仕方に甘さが会った可能性がある」
「ファイルがマニュアル通り正常に機密保持出来ていたとしたら、次の問題として人物確認の不手際?」
「そうだな、士官Bがそもそも本当の士官Bだったのか。別人だった可能性もある」
「士官Aについてはどうだろう。士官Aのデータ保存は完璧だったのだろうか? そもそもA自体が偽物だった線も否定出来ない」
「すると偽士官Aから持ち寄った情報自体が偽物だったと?」
「一体何を根拠に情報士官であるか確認した方法が気になるわね……」
一回生のミヤケ達はポヤンとして聞いている。
これが二回生! 自分達は一年後このレベルに達しているだろうかと。
僕たちのこれからを一歩先行く二回生。
その姿を十分に刻み込んだ一回生だった。




