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月の入江  作者: 緋絽
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情報収集という能力

ご無沙汰しております。緋絽ともうします。

近頃投稿する度に同じようにご挨拶差し上げている気がしますが…ようやく、更新です。

お待たせいたしました。


「こんにちは」

受け付けで作業をしていたキリカは、声をかけられて顔をあげる。

柔らかな笑みを浮かべた美しい青年が立っていた。髪の色は、金。

「こんにちは。何かお探しですか?」

微笑み返すと、青年は微笑んだまま頷いた。

「色なしの研究についての本がありますか? できれば、最新のものを」

色なしの研究。その言葉を聞いておやっと思う。

色なしの研究に興味があるとは珍しい。そもそもあまり彼らについて調べる人は少ない。けれど、青年の髪色を見て少し考える。彼は色素が薄く見える。完全な色なしではないけれど、近いためにこれまで何か言われてきたのだろう。興味がある人間が少ないだけで、調べている人もいないわけではないのだ。

キリカはその青年の印象を刻み、自身の能力を使用した。

キリカの情報収集の能力は、ほしい情報を瞬時に集められ、ある程度整理できるというものだ。おかけでキリカは大抵のことを他者よりは正確に理解できた。ただしそれは、この魔法によって起こっていることの分析ができるからではない。それらすべては、キリカ自身の知識によるものであった。

「申し訳ございません。資料数が少ないため、ここ数年新しいものは入ってきておらず……閲覧済みの可能性が高いですが、配架資料をご覧になりますか?」

「お願いします」

「ご案内します」

お礼を言う青年は、特に学者と言うわけでも、その卵というわけでもないらしい。

個人的興味で色なしについて調べている。彼らにも実は魔力が隠されていて、まだ発見されていないのではないか。そうであれば、彼らの処遇も改善されるだろう。

そう、ニコニコ笑いながら話していた。

随分、色なしに肩入れするんだなと思った。

キリカは周りに色なしがいない。だから、彼らについて特に思うところはなかった。たまに色なしの子についての噂を聞いては、気の毒にと思う程度で。

「色なしの方が、身近にいらっしゃるのですか?」

気づけば、そんなことを問うていた。

我に返って慌てる。

「すみません、踏み込んだことを。忘れてください」

「いえ、構いません」

金髪の青年は、うっすらと微笑んだ。

「ボクはかつて、色なしと扱われていたんです」

その微笑みが、なんだか酷薄な、冷え冷えとしたものに見えて、キリカはぎくりとした。



色なしの資料はその数も少なく、閲覧者も少ないことから、王立図書館の地下に配架してあった。

深く潜るごとに人のざわめきが遠退き、やがて辺りにはキリカと青年の二人の小さな会話だけが残される。

資料が揃った棚を見せると、彼は嬉しそうに一冊の本を取り出した。

「これ、まだ読んでいないものです」

「そうでしたか。よかった、ゆっくりご覧ください」

王立図書館では館内での閲覧のみゆるされている。まだまだ資料は貴重なものなので持ち逃げを防ぐためだ。

立ち去ろうとするキリカを青年が呼び止める。

「この本、どんなことが主軸にかいてあるかわかりますか?」

キリカは情報収集能力を使って内容を取り込む。普段他の利用者にも同じように質問されることがあったので、なんの疑いもなく読み取った。

「色なしへの魔力を移す可能性についてですね。多数から少しずつ収集した魔力を一纏めにし、色なしへ配当、その後の経過を綴ったものです。その……正直、酷な文面も見当たりますが、よろしいですか?」

魔力の譲渡など、本来常人に考えられることではない。本人に適合する魔力は本人の持つものだけであり、―――つまりそれ以外は毒になりうる。

実験をした上での考察になるため、残酷な描写も少なからず見当たった。

青年は柔らかに微笑んだ。

「構いません。まずは、知らなければ始まらない」

「…………余程の覚悟をお持ちのようですね」

青年はキリカの言葉に照れたようにその微笑みを苦笑へと変える。

「ただの好奇心と思ってください。そういえば……好奇心のついでてすが、貴女の能力は、資料ののみ用いることができるのですか?」

キリカはきょとんと青年を見つめた。

あまりその質問をしてくる人がいないため、本当に驚いたのである。

「いいえ、知ろうと思えば、ある程度の情報は得られるはずです。といっても、詳細な状況の把握程度にしか使えませんが……」

「それは、人に対しても?」

「え……はい。直接思考は読めませんが、状況や動作からそれなりに読み取ることはできるかと……それが、何か?」

青年がキリカの言葉が繋がるにつれ、嬉しそうな笑みを浮かべるのを見て、どこか異質な空気を感じ取る。

それは、知らなかったことを知ったという、好奇心の一言では紛らわせられないほどの異質さ。

急に、辺りに青年と自分しかいないことに不安を覚え、キリカは腕をさすった。

「あの……」

「やっぱり、思った通りだった」

首を傾げたキリカは、一歩下がろうとして腕を掴まれる。

「何を…!」

「君の能力に心底惚れちゃった。ボクと一緒においでよ。大事にしてあげる」

大声を挙げようとして口を塞がれ、混乱したところで黒いもやに包まれる。

「君がボクに、従う限りはね」


視界が靄で覆われる寸前、キリカの目には、金だったはずの髪が、銀に見えた。

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