珍妙な
ご無沙汰しております。
緋絽ともうします。
ようやく更新ができました。大きな用事がなくなったと思いきやテストが私を苦しめております。助けて。
それは、街の巡回をしている最中の会話だった。
今回、私はロイさんとペアを組んでいた。
巡回なのだから私語はいけないという人もいるが、ロイさんは周りをちゃんと見れているなら多少の会話は許してくれる。
「家族?」
「はい。ちなみに、私は一人っ子でした。だから兄弟がいるっていうのがどんなものかわからないんですよねー」
ロイさんに私が隠していたことを言うと、うっすら気づいていたという。
というか、そもそも騎士団に女が入ってはいけないという決まりはないらしい。私のついた嘘は丸っきり無意味だったのである。いや、それとなく確認しておけばよかっただけなんだけど、なんかすごい徒労に終わった感がある。
「あーいた……って言えばいいのかな?」
「いた?」
「俺より3つくらい下だったみたいなんだけど……どうも、病気で死んじゃったらしくて」
すごくヘビーな話を聞いた気がするううう!
し、しまった。何か言わねばと思うほどうまく言葉が出てこない!!
「す、すみません」
「あ、いや、ごめんなーこんな話して。結構昔のことだからあんまり気にしないで。当時は悲しかったけど、今はもう平気だから」
家族が死んでしまうなんて、いったいどれだけ悲しいんだろう。私には計り知れない。
「どんな病気だったんですか?」
ガンとか白血病とかだろうか。こっちの世界では呼び方が違うかもしれない。
「魔力が放出しっぱなしになって、干からびてしまう病気だよ。子供が、よくかかる。弟はそれが重かったらしくて。滅多に会えなかった」
前に聞いたことがある。魔力の放出が止まらない症状。私も訓練しなかったらそれに陥っていたかもと思うと他人事でいられない。
「それは……」
何て言えばいい? お悔やみ申し上げます? 御愁傷様でした? でも、なんだか、どれも違う気がする。
口をパクパクさせていると、ロイさんが困ったように微笑んで私の頭を撫でた。そしてふとこぼす。
「まあ、本当に病気だったのかは疑わしいんだけどね」
「え?」
首を傾げると、ハッとした顔でロイさんが自分の口を押さえた。
「……聞こえた?」
「う、残念ながらばっちり。き、聞かなかったことにしますか」
忘れますよとポーズをとると、ロイさんはまた眉尻を下げて微笑む。
ごめんねと謝るように。
「うーん、悪いけど、そうしてくれるかな。けっこう家の事情に踏み込んだ話になっちゃうから、聞かない方がいいかも」
それはどう意味でだろう。
ロイさんの家の事情がヘビーすぎて聞かない方がいいのか、それとも、聞くと口封じされるとか?
「いや、そんな物騒な家じゃないよ」
苦笑され思わず赤面する。
こ、心の声が漏れておりましたか。
「変な噂がたつと外聞が悪いからね…。もちろんハルキが漏らすとは言わないけど、誰に聞かれてるかわからないから、ごめんね」
「だ、大丈夫です!」
もしかしてだけど、なんだかんだロイさんが一番心の扉が固く閉ざされているような気がする。
周到な予防線に、なんとなくそう感じた。
「ランセルが、図書館に…?」
珍妙なものを見たような顔で戻ってきたアルベルトに、私たちは同じように珍妙な顔を返した。
いや、実際に珍妙な、空から槍でも降ってきそうな話を聞いたのだ。
曰く、ランセルが近頃足繁く王立の図書館に通っているとのこと。以前は興味を示すそぶりすら見せなかったのに。
そして、見回りの際、図書館周辺を見回る人員に積極的に手を挙げるのだとか。
以前はできるだけ仕事をしないようにしていたのに。
「何が起きた……」
ノックスがこの世の終わりと言わんばかりに深刻な顔をしている。
ノックスはしばしば仕事をしないランセルの肩代わりをしていて、一番被害を受けていた。
だからこそ逆に不安になっているのだろう。
今日もランセルは図書館に行っているらしい。
これは、調査するしかあるまい!
「いざいかん!!」
そして慄くアルベルトとノックスを引き連れて、私は王立図書館に向かったのである。




