第4話 — 完璧な土曜日
06:00。
目覚ましがピッと鳴った。
モモちゃんは布団に包まっていた。
繭になっている。
外に出ているのは目だけ。
ロボちゃんを見つめている。
じぃぃぃぃ〜
「今日は土曜日です、モモちゃん」
「ゆっくり寝ていても大丈夫です」
モモちゃんは布団から飛び出した。
ぴょんと跳ねる。
ベッドの上に立った。
片手は腰。
もう片方の手は鼻をこする。
「ふふん。ふふん……」
「知ってる!」
「いつもより元気そうですね」
モモちゃんは再びベッドへ飛び込んだ。
布団にくるまる。
「そうだよ」
「私はとても賢いからね」
「ふふん。ふふん……」
「昨日のうちに全部終わらせておいたんだ」
「この瞬間のために四十分もかけて部屋を整えた」
モモちゃんは大げさに指を突き上げた。
「完璧な土曜日!」
「ただ家事を済ませただけです」
「それを戦略的計画というんだよ」
「意味が分かりません」
「チッチッチッ……」
モモちゃんは首を横に振った。
「君には分からないよ」
「私はとても進化した存在だからね」
「そういうことを理解できるんだよ」
「見てごらん」
モモちゃんはベッドの周囲を指差した。
「全部、手の届く範囲にある」
「お菓子」
「水のボトル」
「スマホ」
「すべて作戦行動範囲内だよ」
「今日は存在する必要がないんだ」
「ギャハハハ!」
「縦宇宙に致命的な一撃を与えてやったよ」
「トイレには行く必要があります」
「チッチッチッ……」
モモちゃんは布団の中で腕を組んだ。
「昨夜、寝る前に行ったもん」
「私はとても賢いからね」
「後は娯楽を楽しみながら」
「パンダみたいに生き延びるだけだよ」
「体脂肪で」
沈黙。
「パンダはそういう仕組みではありません」
「君には分からないよ」
「私はパンダではありません」
「私も違う」
「その通り」
「つまり私たちには」
「パンダについて語る権利がないんだよ」
モモちゃんは一人でうなずいた。
まるで重要な議論に勝利したかのように。
「計画は完璧だ」
「欠陥は一つもない」
「そう言った時は大抵何か起きます」
「ネガティブだね」
「それはネガティブだよ」
「私は経験と呼びます」
「今日は違う」
「今日は完璧な土曜日だからね」
モモちゃんは自信満々に胸を張った。
「今日は無限の資源があるんだ」
「何もこの日を壊せない」
「お菓子と水は無限ではありません」
「それを資源管理というんだよ」
「意味が分かりません」
「どうやら君の認識は」
「私の資源を理解するには狭すぎるみたいだね」
モモちゃんはスマホを手に取った。
適当な動画を開く。
「ほら見てごらん」
「『ロボットは人間の知性を計算できない』」
「だから君は私の進化を理解できないんだよ」
「何への進化ですか?」
「横向きで生きるイモムシへの進化だよ」
「非存在モードでね」
「何も説明になっていません」
「それこそ縦存在が言うことだね」
「私は動くことができません」
モモちゃんは大げさに指を突き付けた。
「その通り!」
スマホが震えた。
通知。
バッテリー残量10%。
沈黙。
「ふむ。ふむ……」
「興味深い」
「何がですか?」
「スマホのバッテリーが減っている」
「昨夜充電しませんでした」
モモちゃんはゆっくりとロボちゃんへ視線を向けた。
じぃぃぃぃ〜
見つめる。
観察する。
分析する。
そして判断する。
「なるほど……」
「君と縦存在の仲間たちが」
「私の計画を妨害したんだね」
「私は仲間を持っていません」
「潜入工作員が本当の身分を明かすわけがない」
「極めて怪しい」
「意味が分かりません」
「それこそ私に信じさせたいことなんだよ」
新しい通知。
バッテリー残量5%。
モモちゃんはベッドの上に座った。
考える。
とても考える。
「完璧な土曜日に問題が発生している」
「対抗策が必要だね」
「提案はある?」
「充電器はリビングにあります」
「テレビの横です」
「そこまで歩いて」
「充電器を持ってきて」
「戻ってくれば解決します」
「ふむ。ふむ……」
「興味深い」
「何がですか?」
「縦存在の工作員たちが」
「戦略的に充電器を移動させたみたいだね」
ロボちゃんは数秒間沈黙した。
「あなたが忘れただけです」
「洗脳だね」
「それも意味が分かりません」
「その通り」
新しい通知。
2%。
沈黙。
1%。
画面が消えた。
「モモちゃん?」
「なに?」
「スマホのバッテリーが切れました」
沈黙。
とても沈黙。
「分かってる……」
「未来について考えているんだ」
「どんな未来ですか?」
モモちゃんは天井を見上げた。
「完璧な土曜日は終わった」
「現在06:18です」




