魔法対戦でも目立ちたくない④
キャロルさんの魔法が僕を貫かんと雷の結界を破壊する。
何とか拮抗しているように周りからは見えているだろうがただ1層ずつ結界が破壊されているだけだ。
赤い熱線が放たれて既に8層が一撃で破られた。
初級魔法とはいえ雷の防護膜を8層貫いているのだ。
神殿魔導師の光の聖域を貫くというのもあながち間違いではなさそうだ。
このままだと全て破られるだろう。
ここで終わってもいいが、後でキャロルさんに何を言われるか分からない。
「魔法は全て反射する。」
無属性でかつ上級魔法を発動した。
全体を覆うような結界ではないが、今は上空から降り注ぐ熱線を防げればいい。
反射された熱線と降り注ぐ熱線がぶつかり合い拮抗しており後はキャロルさんの魔力が尽きるのを待つだけだった。
「収束せよ!!」
キャロルさんの声が木霊する。
しまったと思った時には僕の腕に痛みが走った。
僕の判断が間違っていたらしい。
キャロルさんの魔法は二段階に変化するタイプのものだった。
言葉通り熱線は収束され細いレーザー光線のような形状に変わり僕の魔法は全て反射するごと貫いた。
そのまま光線は細くなり消えたが、ステージ上に残ったのは腕を貫かれ血を流して膝を付く僕と悠然と佇むキャロルさんだった。
「おっとー!!まさかのドレッドムーン家に伝わる継承魔法だー!!マリス選手は負傷しているようだぞ!」
実況は憎らしくも今の状況を細かく観客に説明していた。
想定外だった。
キャロルさんの継承魔法がどんなものか知らなかったのもそうだが、範囲魔法が得意だと決めつけて変化するなんて予想していなかった僕の判断ミスだ。
「ワタクシの家に伝わる魔法、なかなかの威力でしょう?そう簡単には攻略出来ませんわ。」
「そのようですね。まさか僕も防御を突破されるなんて思ってもいませんでした。」
「さあ、もっと全力を出してくださいまし!貴方の力はその程度ではないでしょう?」
やはりキャロルさんは勘づいているようだ。
まだまだ僕が余力を残している事を見抜いている。
「ワタクシもまだ上級魔法が使えますの。マリスさん、貴方の本気、見せてくださらない?」
出来ればここで負けておきたい。
そうすれば無駄に目立つこともないだろうから。
でもキャロルさんと戦えるのは今回で終わりだ。
来年には卒業してしまう。
だからだろうか、ついその挑発に乗ってしまった。
「いいですよ、じゃあ今度はキャロルさんが全力で防御してください。」
「!見せてくださるのですね?全力を!」
「まあ、キャロルさんと戦えるのはこれが最後ですから。」
そう言って僕は魔力を練り始めた。
キャロルさんも同じように魔力を練り足元には魔法陣が浮かんでいた。
全力といっても公にしている三色以外の魔法は使わない。
だから選ぶ魔法は1つだ。
もしもこれを受け止められたなら、負けを宣言してステージを降りよう。
そう考えて三色魔導師程度の魔力を溜める。
片手を突き出すと、巨大な魔法陣が浮かぶ。
見る人が見れば、明らかに学生の範囲を超えていると声を上げるだろう。
しかしもう今更止めることなど出来ない。
僕だって男だ。
キャロルさんのような美女に最後くらい良い所を見せたいと思うのは男のさがと言うものだ。
「烈火の暴撃!!」
キャロルさんは防御ではなく攻撃魔法を放ってきた。
攻撃は最大の防御とも言うがそれを体現してくるとは思わなかった。
僕を焼き尽くさんと、燃え盛る火炎の一撃が迫りくる。
肌にチリチリと熱を感じたタイミングで魔法名を唱えた。
「白き破壊の雑音。」
音を置き去りにする死の雑音が炎を包み、そのままキャロルさんも飲み込んだ。
フェイルの時より遥かに威力が高いその一撃はキャロルさんの魔法を破壊し会場の壁を抉った。
キャロルさんに当たらなかったのは僕がわざと外したからだ。
流石に直撃させれば、腕輪を壊すだけでは済まないだろうと判断した。
そもそもこれは僕が創り出した魔法だ。
誰よりも僕が上手く扱える。
自身が放った上級魔法は消し飛ばされ気づけば後ろの壁がえぐれている事に呆然とし、立ち尽くすキャロルさんは今まで見たことのない顔をしていた。
観客の声も聞こえない。
実況すらもだんまりを決め込んだままだ。
だから僕は口を開いた。
「まだ、やりますか?」
その声を聞いたからかキャロルさんは小さく微笑みを返してきた。
「なるほど、それが貴方の全力ですか。敵いませんわね。負けを認めましょう、このキャロル・ドレッドムーンを降した貴方なら恐らく決勝で当たるガウェインにも勝てると思いますわ。」
「いや、そこまで自惚れていませんよ。」
「いえ、勝ちなさい。ワタクシに負けを認めさせたのですわ、せめてワタクシの代わりにあの男を降しなさい。いいですわね?」
有無を言わせぬ迫力につい頷いてしまった。
キャロルさんは結局1度もガウェインさんに勝てることはなかったらしい。
だからその想いを僕に託すと言う。
「勝負ありましたぁ!まさかの!1年生マリス・レオンハートが最強と名高い生徒会長に敗北の名を刻みました!!しかし最後の魔法はあのフェイル選手と似通っていたがなんの魔法なんでしょうか!!」
実況の勝利宣言により、試合は終了したがキャロルさんはステージを降りる前に小さく僕の耳元で呟いていった。
「貴方ならワタクシの家に婿に来て頂いても構いませんわよ。フフ……。」
行きませんが。
確かにキャロルさんは美女以外何者でもない。
しかし僕は自由に生きたい。
何処かに縛られて生きていくなんて真っ平ごめんだ。
僕は何も返さずステージを降りた。
その試合を見ていたVIP席の者達は目を見開き固まっていた。
特にレオニスは見つけたと言わんばかりの表情をしている。
ルーザーとエリザはまたかと項垂れていた。
「シャーリー、今のを見ていたな?すぐに彼に接触するぞ。我が弟にアレを伝授したのは彼で決まりだ。」
「まあ、そうでしょうね。弟君より遥かに威力も精度も高かったですし。それに、魔力欠乏の様子すらありませんね。」
マリスの知らない所でまたも面倒な事が起こりそうであった。
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