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虹色魔導師は目立ちたくない  作者: プリン伯爵


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魔導大会でも目立ちたくない⑨

「マリス・レオンハート……。」

ティアは小さく呟いた。


今までは法王が住まう宮殿以外に出た事がなかった。

たまに父親に話があるとかで訪れる人はいたが、それ以外はあまり人と顔を合わすこともなかった。

従者の者も全員女性であり、男性など年に数回しか見ないような生活を16年送って来たのだ。


そんな彼女が16歳になると外出許可が出た。

バラン法王は友好国に魔導大会というものがあると教えティアを連れていくことにした。

ティアからすれば初めて宮殿の外に出たばかりか法国すらも出てしまった事に動揺が隠せなかった。

内向的な性格のティアは更に小さくなり顔を伏せる。

馬車に向かって民衆が手を振ったり歓声を上げたりするのは聞こえた。

しかし手を振り返す勇気はない。


それもこれもティアは全ての人の魔色が見えてしまうからだ。

虚勢を張るような貴族を見れば一色だった事もあるし、ただのメイドが三色だったりと、隠している魔色も見えてしまう。

だがそれを口に出すことは出来ない。


誰もが隠したい秘密を1つは持っているからだ。

内向的だったティアは更に人と会話する事が苦手になっていった。


魔導大会の会場に着いても、ティアは口を開くことはなかった。

そんな時だ。

何やら競技をしている者を見れば七色に輝いている。

1度たりとも見たことがなかった七色。

だからつい帝国の皇帝に聞いてしまったのだ。

あれは誰だと。

自分でも驚いた。

人と話すことが苦手だったのに自分から話し掛けるなんて。

いや、それよりも今はあの七色の魔力を持った者が気になる。

伝説と言われた虹色魔導師だとでも言うのだろうか。


皇帝からマリス・レオンハートだと聞かされた後はずっと彼の名前が記憶に残っていた。

もはやティアには魔導大会などどうでも良かった。


早くあの男の子と話してみたい。

そんな思いがずっと胸に燻っている。


それを察したのか皇帝はルーザーを呼ぶついでに一緒に連れてきてもらおうと提案してくれた。

断る理由などない。


聖女だと言われている自分なら多少興味を持ってくれるかもしれない。

そんな淡い希望を持ちながら彼を待った。


しかし、現れたのはルーザーとエリザだけであった。

二人曰くマリスは皇帝に呼ばれるような事はしていないと応じなかったらしい。

普通なら不敬罪だが、マリスは特別だ。

逆に帝国が彼の不興を買い、出て行かれでもしたら莫大な損失となる。

その為そんな物言いでも許されているそうだ。


「……あの、ルーザー様。なんとかマリス様にお会いすることは出来ないでしょうか……?」

ティアはその程度では諦めなかった。

どうしても会ってみたい。

この世界でただ1人しかいない虹色魔導師の魔力を間近で見てみたかった。


「それならこういう場ではなく、魔法対戦が終わった後に帝城の何処か一室を借りて顔合わせしますか?父上、それは構いませんよね?」

「うむ、もちろん構わぬ。そういう事なら部屋にいる者はマリスの知り合いばかりに絞った方が良いだろう。」

話は纏まり、魔法探求会のメンバーを招いて帝城で打ち上げをするていにしてマリスと顔合わせ出来ることになった。


それまではしばらく大人しく観戦しておくしかない。

ティアにとっては他の魔導師などどうでも良かったが、魔法対戦という競技に再度マリスは出場するらしい。

なのでバラン法王と一緒に観戦をすることにした。



「ティアよ、何故そこまでその男の子に興味が湧いたのだ。」

「……七色なんて初めて見たので。それに見えた魔力が優しそうでした。」

バランは魔力に優しいも何もないだろうと思ったが、聖女にしか分からない感性もあるのだろうと無理やり納得することにした。


「そうか。仲良くなれれば良いな。」

「……はい。」

バランにとってもティアを外に出した事はリスクのある行為だと分かっていた。

しかし死ぬまで宮殿で過ごすというのも可哀想に思い今回連れて来る事にした。

内向的な娘が少しでも明るくなってくれればとの思いもある。

あわよくば今回の出国により聖女に悪しき感情で近づく輩を見つけておきたいという気持ちもあった。


「皇女とはどうだ?仲良くなれそうか?」

「……多分。」

歳も近く同性であればティアの初めての友人になるかもしれないとバランは楽しみだった。


友人と言えるか怪しい従者しかティアの側におらず、歳相応の遊びなども未経験だ。


「私はエリザと申します。ティアさん、とお呼びしても?」

にこやかに微笑む皇女に対して伏し目がちに小さく頷くティア。

それを横で見ていたバランは、友人が出来るのはまだまだ先になりそうだと微妙な表情を見せていた。


「マリスさんにご興味があるそうですね。私も実はマリスさんに憧れているんです!」

「……憧れ……ですか?」

「はい!あの人は圧倒的な力を持っているのにそれを振りかざさないんですよ。それに私達の為にオリジナル魔法を創って教えてくれたりしますし、見習う所が沢山あります。」

「魔法を創る……そんな事まで出来るんですね……。」

ティアは想像していた以上の能力を持つマリスに、より興味が湧いた。

普通、創造魔法を使える者は簡単に魔法を教えることはしない。

教えても莫大な金銭を要求するだろう。

それを無償で教えるなんて、どれだけ器の大きい人なのだろうか。

ティアの頭の中では高尚なマリスが生まれてしまっていた。


そんな事は露知らず、マリスは次の魔法対戦へ出るために控室にいる。



「さあ皆様!!おまたせしました!!これより!魔法対戦を始めます!!!」

実況の声が会場に鳴り響いた。

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