魔導大会でも目立ちたくない⑧
ちょうどマリス達がマジックショットの競技に出ていた頃VIP席では各国のトップ達による会話が繰り広げられていた。
ガイウスの近くには常にクレイとナターシャが控えている。
勿論皇后もおり、魔導大会を見守っていた。
「おお、これはこれはガイウス殿。」
「ん?これは久しいですな、バラン殿。」
ガイウスの近くに来て挨拶を交わしたのはバラン・ビストリオ法王だった。
アステリア帝国の次に魔法大国と言われる程には魔法技術が発展している国がビストリオ法国である。
歳は40後半といったところでガイウスとそう歳は離れておらず、仲はそれなりに良い。
「皇子は残念でしたな、ですが1年生であれだけ実力があれば将来が楽しみですな!!」
「自慢の息子ですよ本当に。ん?そちらのお嬢さんは?」
お世辞抜きで褒めてくれるバランは本当に心から凄いと思っているようだった。
ただバランと話をしていたガイウスはすぐ傍に控えていた少女に目を向けた。
伏し目がちだが白い髪は透き通るように綺麗で人形のような顔立ちであった為気になったのだ。
「おお!そうでした、実は紹介しておこうと思いましてな。ほれ、挨拶なさい。」
「……ティア・ビストリオ……です。」
小さく蚊の鳴くような声で挨拶をしてきた少女はガイウスの記憶にはない子であった。
しかしガイウスは頭の片隅に、法王に子供が一人おり聖女である為16歳になるまでは外に出さないと言っていた事を思い出した。
「もしかして聖女かね?」
「……はい。」
やはり間違いはなかった。
聖女は帝国の神殿魔導師よりも高い神聖な力を持つ。
それこそ回復魔法に関して言えば右に出る者はいない程だ。
「ふむ、ティアちゃんか。余の息子と同い歳であるな。仲良くしてくれれば助かる。ルーザーは友達が少ないからな……。」
「……はい。」
どうもこの子は感情を表に出すのが苦手らしい。
恐らく蝶よ花よと育てられ箱入り娘であった為他人と触れ合う事に慣れていないのだろうとガイウスは思案する。
「ティア、どうだい?魔導大会は。なかなか面白いものだろう?」
バランにそう問われるとティアはある方向を指差した。
バランとガイウスはそちらに目を向けるが、距離があるせいで何処を指差しているかは判断が付かなかった。
しかしガイウスはなんとなく嫌な予感がして、すぐさまナターシャに合図を送り遮音結界を張らせる。
その予感は当たっていた。
「……あの子、七色の魔力を持ってる。」
バランや皇后などには理解が出来なかった。
この子は何を言っているのだと。
ただ、ガイウスとナターシャは知っている。
ティアはマリスの事を言っているのだと。
「ティア、それは流石に冗談が下手すぎるぞ、ハハハハ!すみませぬなガイウス殿、この子はまだ冗談があまり上手いようではないみたいです。」
「ハ、ハハハ。そ、そうであるな。まあ子供の冗談はその程度でしょう。……ティアちゃん、何故そう思ったのかね?」
乾いた笑いしか出来ないガイウスはなぜいきなりバレたのかが気になった。
まさか聖女は魔色鑑定が出来る魔眼でも持っているとでも言うのだろうか、とティアに問いかけた。
「……私は……いや、聖女はみんな魔色を見る事が出来るの。あの子が出てきた時からずっと気になってた。ガイウス陛下、あの子は誰?」
ナターシャはもう苦笑いしか出来ず、ガイウスは固まってしまっていた。
クレイは興味深そうにティアを見つめている。
「ほ、ほう。バラン殿。それはまことか?」
「うーむ、一概には言えませんな。ただ、聖女になった者は何かしら特別な力が宿るのです。ティアの言う魔色を見る力がその特別な力なのであれば、本当の事でしょうな。」
ガイウスは遮音結界を張っておいて助かったと心から自身の嫌な予感に感謝した。
もしも遮音結界を張っていなければ周りの者の耳に入り、確実にマリスの元へと魔の手が迫っていた事だろう。
「仕方ありませんな。現在ここには遮音結界を張っておるのです。これから話す内容はくれぐれも内密にしていただきたい。これは友好国の王であるバラン殿だから話す事だと理解して欲しい。」
「む?それほどの……ガイウス殿がそこまで言うのだ。私は絶対に口外せぬと誓おう。ティアももちろんだぞ?」
「……はい、お父様。」
真剣な顔付きを見せたガイウスを見てバランは絶対に話さないと誓った。
皇后にも目配せし、首を縦に振った所を見てガイウスは話し始めた。
「ティアちゃんの力は本物のようである。先程指差した人物は紛れもなく七色の魔力を持っておる。」
「なんと!?では……本当に虹色魔導師が現れたとでも?」
「うむ、余も最初に聞いた時は耳を疑った。もちろん部下を使って調べさせたが本当だったのだ。」
「これは……世界が帝国にひれ伏すのも時間の問題であるな……。」
バランは腕を組み、目を瞑る。
ティアは早くその者の名前が知りたいようでウズウズしていた。
「貴方……それは本当なの?本当に虹色魔導師があの生徒の中に?」
「本当だ。知っているのは極一部の者のみ。ああ、再度忠告するがこの遮音結界の中にいる者は絶対に口外してはならんぞ。そこの護衛もな。」
バランとティアの護衛として傍にいた魔導師にも目線を向けると、2人の護衛は狂ったように頷いていた。
「なるほど、陛下の言っていた秘密の戦力というのはもしや。」
クレイの言っている事は狐面の事だ。
ガイウスはゆっくり頷くと、クレイはまた会場へと目を向けた。
「その者は、絶対に目立ちたくないと言っておる。だからもしもこの話が広まれば彼は帝国を出ていくであろう。もちろん自身の事を知らない国へと、な。」
「それは、いかんな。それほどの人材を手放すのは惜しい。何としても話が広まる事だけは避けねばならぬという事か。」
「余も知らないていになっておるからな。まあ息子やその者の近しい人物は知っているようだが。」
「……ガイウス陛下、その者の名は?」
もう待てないといった様子のティアがガイウスに詰め寄った。
ここまで言った以上、彼らは一蓮托生となった。
だからガイウスは意を決して、名を伝えた。
「マリス・レオンハート。今代の虹色魔導師の名だ。」
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