ハッピーエンドに必要なこと
ミライ様のあの発言のせいで、ウィリアム様はかなり微妙な顔をされていたけれど、どうにかミライ様と二人でお話ができることになった。
「それで、ミライ様。私は今後どうすれば……。」
「あー、そうね、とりあえずウィリアム様とキスをしてください。」
「いや、だからそういうのは……。」
「そういうのは、じゃなくて、これもハッピーエンドに必要なことなの。」
「そう、なんですか……。」
ミライ様は真面目な顔で言っていたので、冗談ではないのだろう。
「このゲーム、乙女ゲームなので。アップデート後の追加シナリオでも、そこまでシリアスにはしたくなかったのよね……。」
「あのっ、その追加シナリオの結末って……。」
「アラベラの性格は歪まなくなって、未来に戻ったミライは、ヴァネッサとアラベラの3人で楽しくお茶会をするのよ。ヴァネッサも、ニコラルートだとライバルにはなるけれど、いじめてきたりはしない。」
その光景を想像していたのだろうか、ミライ様は目を細めて微笑む。
そんな素敵な未来が……私の行動次第で……。
「それって、アラベラの周りの人たちが助かるってことですよね?」
「そうね。それには、ウィリアムとのキスは必須だから、ちゃっちゃとするように!」
「な、なんかタイミングとか……。」
「うーん、本当だったら夏にひまわり畑で……ってそれ過去の私が邪魔したやつだ……。」
ミライ様は頭を抱えて、ぐぬぬ……と唸っていた。
「オートモードのテスト、そういえばちゃんとしてなかったんだよなぁ……。」
「ま、まあ、過ぎたことですし……。っていうかひまわり畑ってイベントスチルでもあったんですか。」
「あるわよ。二人が仲睦まじく過ごしているスチルが。主人公が端でにっこり笑ってるの。」
「わぁ、現実と大違いですね……。」
「悔しいー!ひまわり畑で寄り添う、生のウィリアラ見たかったぁ……。」
ひとしきり唸ると、多少はストレス発散したのか、ミライ様はこちらを見てにっこりと頬笑んだ。
「キスさえしてしまえば、大丈夫なはずだから!頑張ってね、アラベラさま。」
「そ、そんな話が……。」
「あるのよ。はい、じゃあ第二回テンセイシャ会議は終わり!」
そう言われて、勉強ルームから出てくると、「お話は終わった?」とウィリアム様が声をかけてきた。
ウィリアム様、待機されてたのね……。
「はい、バッチリです!それではアラベラ様、よろしくお願いします。」
バチンとウインクを飛ばしてミライ様は、そのまま図書室の奥に去っていった。
そういえば、ミライ様も図書委員だったことを忘れていた……。
「何をよろしくなの?」
「ああ、いえ、ウィリアム様と……。」
「僕と?」
「ええっと……今度お話ししますね。」
ウィリアム様にじっと見つめられて、恥ずかしくなって顔を背けてしまった。
「僕に隠し事?」
眉を下げて寂しそうな顔をされるウィリアム様。前よりも表情が豊かになった……というより、私が分かるようになったのかしら。
「ち、違うんです。そうじゃないんですけど、私の心の準備といいますか……。嫌な話ではないんです、決して。」
だって、ウィリアム様とキスをしなきゃいけないんです!なんて、そんなこと誰が言えるのよ!
「だから、待っていただけると……。」
「分かった。嫌な話じゃないならいいよ。ベラが言えるようになったら言ってね?」
「はい……。」
返事をすると、微笑みながら頬をそっと撫でてくれた。
優しい顔。
この人を守るためにも、よくわからないけど、私はウィリアム様とキスをする必要があるらしい……。
理由くらい、教えてくれてもいいのに。
そう思いながら、ウィリアム様の撫でてくれた手に触れて、私も微笑んだ。




