もやがかかる
「初めまして。ミライ、と申します。アラベラ様ですよね?どうぞよろしくお願いします!」
「よ、よろしくお願いします……。」
見間違えるわけがない。何度も見た主人公ですもの。
なんで……?
だって彼女は私の孫の代に生まれる存在じゃない!
「ベラ、大丈夫……?」
「あ、いや、すみません、あまりにリタ様に似ていて……。」
「そうなんだよね、僕もとても似ていると思った。」
「リタ様?」
「ああ、リタ様は私たちの友人で、その、凄く似ているんです。見た目が。」
「そんな方がいらっしゃるのですね!是非お会いしてみたいですっ!」
「学友ですので、ミライ様もきっとお会いできると思いますよ。」
ミライ様、ヒロインそのまんまだ。
とても純粋で少しだけ世間知らずで、そして……、
「ねぇねぇ、ウィル様!」
「ミライ嬢、僕らはそこまで仲良くないから、その呼び方はやめてくれないかな……。」
「えーだって、これから仲良くなれますもん!」
殿方との距離が、とても近い。
少しだけ、少しだけね?孫の気持ちが分かっちゃうわよ?
婚約者を目の前にしてもこれだもの。
ゲームプレイ中は、わ~ミライちゃん可愛いなぁ。
これはどんな殿方もイチコロだよな~~。とかそんな気持ちでプレイしてたけど。
可愛いけど、可愛いけど、これは。
ウィリアム様が私に対して、凄く言いづらい顔をしていたのが今更になって分かった。
「それより、ミライ嬢、ベラの足をお願いしたいんだけど。」
「はぁい、分かりました。アラベラ様っ、失礼しますね。」
「は、はい……。」
ミライ様が私の足に触れると、薄いピンクの光が私の怪我した部分を包み込んだ。
その後、その光は私の足の中に吸い込まれて消えた。
「はい、終わりです!」
「あ、ありがとうございます……?」
「ベラ、歩いてみて。」
ウィリアム様に言われ、その場で怪我をした方の足を一歩、踏み出してみる。
「痛く、ない。」
それどころか、違和感もなんもない。
怪我なんてしてました?そんなことありました?と足に言われそうなくらい、何ともない。
「す、すごい……、ミライ様ありがとうございます。」
「ミライ嬢、ありがとう。」
「えへへー、よかったですっ。じゃあ、これから三人でお茶にしましょう!」
「え、えぇ、折角ですので……。」
「ベラがそう言うのなら……。」
「わぁい!ウィル様、綺麗なお花が咲いているあそこのお庭でお茶したいです!」
「あ、ああ、分かった……。」
何処に連れていかれたかと思ったけど、そうよね、ミライ様がいる所、アーチボルド家に連れてこられたのよね。
そんなアーチボルド家、私もそんなに来たことないんだけど、ミライ様はもうすっかり馴染んでいて……。
強引なミライ様に腕をひっぱられ、ウィリアム様は連れていかれる。
その様子が、ゲームプレイしてた時の攻略対象とミライ様のスチルと重なって、なんだかもやっとした。
なんでこんなにミライ様のことが嫌なんだろう。
足だって直してもらったし、前世では好きなキャラクターだったはずなのに。
今はあまり、見たくない。
地面を軽く蹴っ飛ばして、治ったはずの足が、少し痛かった。




