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N-161 エイダス島の状況


 アイネさんが戻ってくると、鈍い炸裂音が2度聞こえてきた。

 

 「角から奥に100D(30m)位のところにいたにゃ。爆裂球を投げて戻って来たにゃ」

 「大きいってどれぐらいあるんですか?」


 「パラム湖の船ぐらいあったにゃ。胴体も私3人分は間違いないにゃ!」

 「この迷宮は大型種がいるようだな。だが、それぐらいなら青で十分倒せるだろう」


 ユングさんは俺達が白だというのを忘れてるのかな?

 

 「触手が20D(6m)は伸びるにゃ。厄介な相手にゃ」

 「触手はガルパンにの口の中から出てるんですよね」


 俺の言葉にアイネさんが頷く。

 だとしたら、口の中に爆裂球を投げ込むのが一番じゃないかな?

 

 「エルちゃん、光球をあの曲がり角の先に送ってくれないかな。今度は俺がやってみる」

 

 尻尾を使ってエルちゃんが光球を移動してくれた。

 それを見て爆裂球を1個右手に持つと、左手には俺の剣を握った。

 俺は左利きだけど、右手だってある程度は使える。右利きの社会で育ったから自然にそうなったけど、精密な作業や、力仕事は左でなければ出来ないだけだ。絵筆なら左右どちらでも使えるぞ。


 「1人でだいじょうぶかにゃ。手伝ってあげても良いにゃ」

 「だいじょうぶですよ。先ずはやってみて、ダメだったら援護をお願いします」


 マイネさんの親切が身に凍みるぞ。

 有難く礼を言って、曲がり角へと急いだ。


 いた!

 なるほど、デカイ!……胴体はどうみてもドラム缶より太く見える。

 洗面器程の牙の沢山生えた口から、俺の腕ぐらいの触手が伸びてきた。

 青光りする鱗は何となく湿った感じがする。そして伸びた触手の先は1m程にの長さで二股に分かれている。

 異様な姿だけど、やはりこいつは蛇から変異したんだな。

 

 ガルパンがゾロリと音を立てる。

 少しずつ俺に向かってきているようだが、姿がツチノコみたいな奴だから動きは遅い感じだな。

 餌を取る手段は、あの伸びる舌から変異した触手なんだろう。

 先端の二股部分はカギ爪のような棘があるようだ。


 半ば飛び出した小さな目が俺を捕らえると、触手がするすると伸びてきた。

 あちこちから体液が漏れているところを見ると、アイネさん達の爆裂球に痛められたようだ。


 20D(6m)どころか30D(9m)は伸びてくるぞ!

 そんな触手に向かって走り込むと体を回転させるようにして触手に剣を叩きこんだ。

 さして、手応えもなく中程から触手が両断されると、ガルパンが大きな口を更に開いて低い呻き声を上げる。


 その口に向かって右手に持った爆裂球を放り込む。

 ボン!という音と共に口が開いて目が頭から飛出た。

 バタバタと体をうねらせるようにしてもがいているから、まるで地震でも起きたように床が振動する。


 じっと見守っていると、新たな目がカタツムリのように伸びてきた。

 裂けた口が開くと、煙と共に新たな触手が伸びてくる。


 やはり簡単には倒せないようだな。

 となると、次は頭を破壊するか……。


 数歩ガルパンに近付くと、先程より細くなった触手を同じように斬り取って素早く剣を納めた。

 M29をホルスターから抜くと、奴の頭を狙って素早くトリガーを引く。

 2発打ち込むと奴が大きく暴れ始めた。

 再度剣を抜いて更にガルパンに接近する。……そして、奴の頭に向かって振り下ろす。


 胴体が太いから両断することは出来なかったが、ブシュー!っと奴の血潮が通路をぬらす。

 その傷口に向かって、残りのマグナム弾を全弾発射した。


 ドタリ!と奴の首が落ちる。

 胴体も小さな痙攣を始めた。これで、どうにかか?


 胴体の痙攣が治まると、奴の体が縮んでいく。そして床に融けるように姿を消した。

 奴のいた場所に魔石が残っている。

 拾い上げると、赤の中位だ。

 奥に何もいない事を確認して、皆のところに歩いて行く。


 角を曲ると、お茶を楽しんでいる仲間達がいた。

 俺の顔を見て、エルちゃんが俺のカップを出してくれる。

 小さなストーブのような物を囲んでいたが、俺の到着を知って少し輪を広げてくれる。

 その空いた場所に座ると、エルちゃんの渡してくれたカップのお茶を一口飲む。


 「殺ったようだな」

 「ちょっと、手こずりましたが、どうにか倒せました」


 そう言ってエルちゃんに魔石を渡す。

 タバコに火を点けて、ちょっとのんびりすることにした。

 だが、王都の迷宮はちょっと面倒だな。洞窟村の迷宮と異なりやたらと魔物が大きい。


 俺達の迷宮探索はそれから2日程続けられた。

 ケルバスは馬並み出し、バリアントは大きな跳び箱位あったぞ。

 それでも出現する魔石は中位のものだから、それなりに稼ぐことは出来るようだ。


 「地下3階に美月さん達が結界を作っていると聞いた。レベルの高い魔物の出現はないようだな。うまく結界が働いてるんだろう。地下1階を青、地下2階を黒の下位、そして地下3階を黒の上位にすれば、それなりに魔石は得られるな」


 「とは言っても、白では危険すぎます。洞窟村の迷宮でレベルを上げてからの攻略になりそうですね」


 地下3階に下りる階段の傍で俺達は眠りに着き、そして地上を目指した。

 これで少しレベルが上がると良いな。

 何とかリロードを3回行いたいものだ。

                 ・

                 ・

                 ・


 王都にエルちゃん達を残して俺は別荘へと帰ってきた。ユングさんはヘイムダルに向かったようだ。

 それ程閑じゃなかったようだな。

 アイネさんの頼みを断りきれなかったんだろう。

 

 しばらくぶりで端末を立ち上げ、エイダス島の状況を確認する。

 スクリーンに科学衛星からの画像を映し出して、タバコを楽しみながら島を眺めていく。


 レムナム王国の戦は膠着状態のようだ。

 侵略軍はドワーフの村を拠点にして西に畑を作っている。

 数年は平和に暮らせるんじゃないかな。戦場は山を越えた場所だ。


 サンドミナス軍は軍船で民衆を旧ガリム王国の版図に送り込んでいる。北を固めれば肥沃な台地だから王国も将来が明るいと考えたのだろう。

 元々のサンドミナスの版図は草木も少なく荒れた土地だからな。

 それでも、砂漠の中にある迷宮はサンドミナス王国の貴重な収入源だ。最低の人員は残していくのだろう。


 レムナム王国はだいぶ版図を狭めたが、西の侵略軍と南のサンドミナス軍の間に柵を作って備えているようだ。

 現在の国力では現状維持がやっとだろう。とは言え、野望は今でも持っているんだろうな。


 俺達の王国は、南と西の柵を石造りにするための工事が急ピッチで進められている。

 既存の柵をそのまま残す形で作っているが、あの柵と空堀も侵略者の足止めには使えるだろう。

 まだまだ半分も終っていない。完成するのは2年以上掛かるんじゃないかな。

 それでも両者の石塀に楼門が1つ造られたのが見える。

 横幅だけで20mはありそうだ。

 そして隠匿道路を作る為の溝も急ピッチで進められているな。

 

 王都を眺めて気付いたが、焼け跡から木々が芽吹いているようだ。かすかに緑が見える。

 あれだけ派手に焼いたのだが、自然の回復力は俺達の想像以上なのかもしれない。

 そういえば、この別荘にも木を植えろって言ってたよな。

 警備兵に頼んでおくか。なるべく大きく成長する木が良いだろう。

 

 最後に西の大陸を眺める。

 大陸の中央から東西の海岸地帯に道が出来つつあるようだ。

 何百万という兵士が歩くのだから自然と踏み固められたのだろう。西の道の方が広く見えるのは主力軍がユーラシア大陸の東岸を目指して進んでいることに外ならない。

 凍った北極海を抜けてシベリア地方に上陸したところで南に下り、山脈沿いに進んでいる。

 

 だが、おかしな話だ。

 北極海を歩くならユーラシアの西岸に至るルートもある筈なのだが……。

 そう考えて、連合王国の北に画像を移す。


 そこには、巨大な山脈が横たわっていた。

 北極海を抜けるには、その山脈を越えねばならないようだ。

 その山脈は東の彼方から連なり、西の海にまで続いている。

 さすがに、悪魔の軍団と言えども極寒の地を遠距離踏破することは出来ないようだ。

 

 悪魔達の東進状況を眺めると、相変わらず北の島礁伝いに船を進めて、次々と拠点を作っている。

 とは言え、まだ東の偵察までには至っていない。

 威力偵察部隊を派遣して侵攻ルートを確定するまでには、まだ間がありそうだ。


 ユングさん達は実際にあの軍隊と戦をしている筈だから、彼等の侵攻シュミレーションは何度も行っただろう。

 長期的な話しとしては聞いたが、奴らの進行ルートとその時期の想定は一度聞いておく必要がありそうだ。

 

 端末を使ってユングさんに、その辺りの情報を教えて欲しいと連絡を入れてみる。

 直ぐに、大きなファイルが添付されたメールが帰ってきた。

 あらかじめ予想していたようだ。


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