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N-147 北の軍船

 「確かにしばらく迷宮には行ってなかったにゃ」

 「今の内にレベル上げをしておいた方が良いと私も思います」


 アイネさんとエルちゃんが、ルミナス達が帰った後で俺に訴える。

 確かに俺も行きたいとは思うけど、この状況で大丈夫なんだろうか?

 これは一度アルトスさんに確認しておいた方が良さそうだ。


 「う~ん、一度アルトスさんに相談してみるよ。それと、レムナム軍とサンドミナス軍に動きがない事も確認しておかないと……」

 「アルトスには私が確認するにゃ」


 そう言って、マイネさんを連れて出掛けて行った。

 コタツでずっと寝てるのかと思ってたけど、こういうのは直ぐに行動するんだな。

 残った3人は編み物を続けている。


 俺も端末を立ち上げてスクリーンで両軍の状況の確認を始めた。

 サンドミナス軍は相変わらずだな。

 少し変化したのは内海の軍船だ。あれから増えて現在は7隻になっている。

 レムナムの軍船は6隻だが、サンドミナスよりも少し大型だ。たぶん搭載したバリスタの大きさの違いによるものだろう。

 互いに2km程の距離を置いて睨みあっているが、一体何時まで続くのかな。


 旧ガリム王国の領土は相変わらずあちこちで戦火が上がっている。

 国土の荒廃が進んでしまうな。

 主な産業が農業だから、回復させるのに長い年月が掛かりそうだ。


 そして、レムナム軍は旧ガリム王国との国境と北西部で小競り合いを起こしているようだ。

 パラム王国への侵略が頓挫したから傭兵達と正規軍で争っているのだろう。

 早く鎮圧しないと、傭兵の母国が侵略軍を派遣しないとも限らない。

 その為か、旧ボルテム王国の王都であった砦の守備はかなり縮小されているようんs印象を受ける。


 これだと、レムナム軍がかなり不利に見えるな。さすがに王都周辺は治安が良さそうだけれど……。

 

 となると、傭兵の派遣国の方が気になる。

 5個大隊を派遣して3個大隊が殲滅された勘定だからな。

 少なくとも、レムナム王国はまだ4個大隊の戦力を持っている。そして反乱を起こしている傭兵大隊の規模は3個大隊にも満たない。そして補給路すら持っていないから、鎮圧されるのは目に見えている。

 

 旧ガリム王国の残党と手を結ばれたら厄介になるが、あれだけ住民を虐殺した以上、連携することは不可能だ。


 傭兵を派遣した王国の様子を見ようと画像をスクロールしていたら、大型の軍船6隻を確認した。

 傭兵の母国になるのだろうか?

 軍船の後ろには輸送船が15隻も付いてくる。

 

 急いで大陸西岸に画面を移動する。

 そこで見たものは、あちこちで煙を上げている王都とその中で逃げ惑う民衆達だ。

 盛んに家々を物色しているのは、侵略軍と言うことになるのだろう。

 

 2つの王国があると聞いたが、どうやら、その1つが消えたようだ。

 となると、先程の船団はエイダスで再興を図る王族とその軍勢と言うことになる。

 レムナム王国の騙まし討ち的な傭兵の使い方を知ったら、どうなるんだろう?


 これは、迷宮での魔物狩り等と言っていられなくなるぞ。

 

 「通信兵! 急いでアルトスさんとエクレムさんを呼んでくれ。大至急俺が呼んでいると伝えるんだ!」

 「何かあったんですか?


 編み物の手を休めてエルちゃんが聞いて来た。他の2人も俺を見ている。


 「レムナム軍が壊滅しかねない。大陸から軍船がやって来る!」


 端末を片付けて、エイダスの地図が置いてあるテーブルに移動する。

 暖炉に薪を追加して部屋を温めると、ミイネさんがポットを暖炉に吊るした。


 端末を取り出して、現状を再度テーブルの地図の上に駒を並べていく。

 あの軍船さえなければ夏に反攻作戦が開始出来たのだが、これでは直ぐに戦が始まってしまうな。


 再度スクリーンを出して、軍船の速度を確かめる。

 時速15km程で真直ぐにエイダス島に近付いている。この速度を維持するなら数日でエイダス島の北西部に到達することになる。

 となると、上陸地点が問題だ。

 北西部には入り江はあまり無いが、軍船2艘ていどなら容易に接岸できそうな場所が複数あるようだ。

 となると、上陸は北西部と見て間違い無さそうだ。

 

 レムナム軍は2方面で戦をしているようだから、気がついても迎撃は不可能だろう。一気に北の傭兵部隊が膨れ上がるぞ。

 春には一気にレムナム王都に雪崩れ込みそうだ。


 軍船を拡大すると大型バリスタが付いている。これを取外して攻城兵器に転用することは考えられるな。櫂が両舷に20本ずつ並んでいる。

 やはり1艘に100人以上乗船していそうだな。

 輸送船は帆で進んでいる。

 連合王国の商船に似ているが少し大きいようだ。200人以上は運べそうだぞ。

 そして、輸送船の数も多いから冬を越す食料は十分だろう。住居は船を解体すれば良い。

 傭兵団の部隊と合流して少し南下すれば、ドワーフ達が住んでいたレドナスの町に到達する。

 レドナス防衛にレムナム王国は軍を派遣できるのだろうか?

 元々が占領地だ。放棄すると言う選択肢もある。そして、王都近郊に西に対する防衛線を張れば長期間は耐えられるだろうが、その時に南と東が手薄になる。

 

 問題はサンドミナス軍の動きだな。

 旧ガリム王国に向かうか……、それとも旧ボルテム王国の砦を狙うか……。

 

 サンドミナス軍は王都の北に2個大隊、南に3個大隊を展開している。

 この配置は、旧ガリナム王国の残存部隊を支援すると共に、海岸へのレムナム軍の上陸を阻止する形だ。

 北に作ったサンドミナス側の防衛戦はパリム湖から南に5km程にある。展開していのが2個大隊だとすれば、今の俺達の敵ではないのだが、如何せん兵力が少ないからな。


 この2個大隊を下げる事が出来れば内海への進出は比較的容易になるのだが……。


 もし、レムナム王国に他国からの侵略が開始されると、サンドミナス王国に情報をリークしたらサンドミナスはどう動くだろう。

 ある意味、レムナム王国は王都を2つ持っているようなものだ。

 戦が不利と見たら動くのは南ではなく東方向になる。


 となれば、サンドミナス軍は2個大隊を防壁の西に移動せねばなるまい。

 東が手薄になる筈だ。

 そして、残りの3個大隊を一気に旧ガリム王国の版図に進める可能性が高いな。

 現在睨み合っている、レムナム王国軍の海兵達も陸戦部隊にすれば、1個大隊以上の戦力になる。

 サンドミナスは内海を手に入れられる訳だ。

 

 レムナム軍は東に追いやられ、侵略軍はレムナム王都を手に入れる。サンドミナスは旧ガリム地方を手に入れられるが、兵力が極端に分散するぞ。

 最終的な兵力分布は戦のゆくえでかなり変動するが、俺達の前に2個大隊を揃えられる国は無くなるだろう。

 たぶん、これが一時的な平和になるんだろうな。

 これが、10年以上保ってくれれば、俺達の国力も他の国と並ぶことだろう。

 その時が、次の戦の始まりになる。

               ・

               ・

               ・


 「アルトス将軍、エクレム将軍がやってきました」

 「直ぐに通してくれ」


 護衛兵にそう告げると、直ぐに2人が作戦指揮所に入ってきた。

 テーブルを挟んで俺の前に来たところで、俺も腰を上げる。


 「お忙しいところ、呼び立てて申し訳ない。新たな局面を迎えたので、その内容と、これからの対応を考えたいと思いまして……。どうぞ、お座り下さい」

 

 2人がテーブル越しに席に付くと、エルちゃんとミイネさんが俺達にお茶を配ってくれた。エルちゃんはそのまま俺の隣に腰を下ろすと、ミイネさんは、奥のコタツで待機する。

 そう言えば、アイネさん達はどうしたんだろう? 確かアルトスさんの所に出掛けた筈なんだが……。


 「どうした。サンドミナスが部隊を北に派遣したか?」

 「そうではなくて、これを見てください」


 端末を操作してスクリーンを展開すると、海を渡ってくる軍団を写した。


 「これは?」

 「大陸の西の王国が1つ滅亡したようです。たぶん、レムナム王国に傭兵を派遣した王国でしょうが、残存部隊を纏めて海を渡ってきています。少なく見積もっても5個大隊以上。現在レムナム王国軍は傭兵部隊と戦闘を行なっていますが、この軍と合流したらレムナム軍はかなり苦戦します。

 場合によっては王都を放棄しなければならないでしょう」


 「レムナム軍には2つの王都があるからな。レムナム王都は小さな物だ。旧ボルテム王都に移るのは確かに可能性がある」

 「だが、大陸はそれ程荒れているのか? それならば連合王国が俺達に援助はしないと思うが?」


 「明人さん達が指導した軍隊は、数こそ少ないですが侵略者を撃退するだけの実力を持っています。主な戦場は遥か東の地ですが2百万を相手に戦っていますよ。西の防衛は2個大隊という所です」

 「確かにあの兵器があれば2個大隊で十分対応出来るだろうな」


 「問題は、この船団が何時到着するかという事です。数日でエイダス島の北西部に到着しますよ。逃げ出す時に物資は全て持ち出したとすれば、冬を乗り越えられます。

 そして、船は木造ですから簡単な小屋なら直ぐに作れるでしょう。その軍隊がこの傭兵部隊と合流したら……」


 驚いたようにアルトスさんが俺を見た。


 「今度はレムナム王国が滅ぶのか?」

 「微妙なところですね。少なくとももう1つの王都を持っていますし、傭兵のやった事をレムナム王国は知っています。領民までが戦に加わりますよ」


 総動員ってやつだな。

 見掛けの兵力は10個大隊を超えるだろう。


 「レムルが気にしているのは、サンドミナスか?」


 ジッと俺の話を聞いていたエクレムさんが呟いた。

 

 「そうです」

 

 短く答えると、2人が考え込む。

 俺はタバコを取り出して火を点けた。

 

 「動かぬ訳はないか……。だが、どう動く?」

 「やはり2方向になるだろうな。どちらに重点を置くかが問題だ」


 「俺なら、このように動きます」


 そう言って、現状のサンドミナス軍の5つの駒を地図上に動かした。

 2人がその駒をジッと見ている。


 「根拠は?」

 「レムナム王国の海軍を陸戦部隊に転用する可能性が高いです。その場合、内海はサンドミナスのものになります。旧ガリム王国への派兵が容易になります」


 かなりの冒険になる。だが、サンドミナスの土地はあまり農業には適さない。豊かな土地が手に入る可能性があるなら派兵する筈だ。


 「そうなると、サンドミナス軍の旧ガリム王国派兵を待って、俺達は動く必要が出てきます。レムナム軍が旧ボルテム王国に王都を移す前で、且つサンドミナス王国の兵力が少なくなった時が旧ボルテム王都を奪うチャンスです。その為には……」


 3人が俺の話をジッと聞く。

 頷いてくれているから、内容は理解してくれているようだ。

 

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