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N-146 ルミナスへの贈り物

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 「湖上から榴弾砲で攻撃するだと!」

 「連合王国に作って頂いた舟を3艘並べてはしけを作っています。湖上に4隻の艀を浮かべてそこから砲撃します。見通しは良いですし、沖合い1kmに浮かべれば十分にボルテム王都の砦を攻撃できます」


 「その手があったか……。となると、この町や村は版図に組み込まれるな」

 「難民の受け入れは可能です。テロが心配ですけれど、受け入れることに決定しました」


 今度はユングさんが考え込んでしまった。フラウさんが2杯目のコーヒーを用意してくれる。

 

 「……それは、少し心配だな。俺が作り上げた部隊があるんだが……。美月さんと相談だ。ここで断言することは止めておこう」

 

 どんな部隊だ?

 明人さん達は亀兵隊を作り上げたらしいが、ユングさんも何か作ったみたいだな。

 

 「だが、今日の報告をすれば美月さんも安心するだろう。かなり心配してたんだ。……そうだ、これを渡そうと思って持ってきたんだ。アルトさんには無理だったが、腕っ節が強ければ迷宮で役に立ぞ」


 バックからテーブルの上にゴロリと取出したのは銃身が半分の散弾銃だ。

 確かに持ち回りは良さそうだが、これを撃ったアルトさんは転がっていたな。大丈夫なんだろうか?


 「強装弾のパレトよりは衝撃があるが、お前なら使えるだろう。2丁あるから1丁は友人に渡せば良い。それじゃあ、またな!」


 そう言って席を立った。フラウさんが後に続き、コタツからはラミィさんが端末をバッグに戻して立上がっている。

 見送ろうとした、俺達を片手で制してユングさんは指揮所を出て行った。

 単なる使い走りとは思えないんだよな。

 俺達の暮らしぶりを見にきたのだろうか?

 

 テーブルの上に残った散弾銃の1つを手にとって眺める。

 初期に作った水平2連銃に見えるな。

 銃身を折ると、これも薬莢式だ。俺達の持つ散弾銃のカートリッジと共通なんだろう。

 

 「それは、アルトさんが持ってた物と同じですね。アルトさんが撃ったらコロコロでしたよ」

 「そうだよな。ネコ族では無理だと思う。ルミナスは散弾銃を手に入れたんだろうか?あいつなら長剣を振り回してたから、何とか撃てるんじゃないかな」


 俺にお茶を運んで来たエルちゃんは、テーブルの散弾銃を見ると、そんな事を呟いた。


 「でも、1つはお兄ちゃんが使うべきです。これに合わせてガンベルトを直しますから、ちょっと外してください」

 「そうだね。お願いするよ。出来ればホルスターだけ、もう1つ、作ってくれないかな」


 「ルミナスさん用ですね。分ってます」


 そう言って、俺が外したガンベルトと散弾銃を持って行った。

 コタツで内職するみたいだ。

 まるで王女の雰囲気が無いんだけど、この王国の将来はだいじょうぶだろうか?


 冬本番になると周囲は真っ白に変化する。

 湖も凍っているけど、全面が凍った訳では無さそうだ。

 それでも岸辺から1km程は歩けるようになっているから、エクレムさんの所に資材を運ぶのは氷上をソリで運んでいる。

 

 長老達も町から王都に引っ越してきた。

 どうにか王都らしくはなったけれど、住民が千人を超えてはいない。

 それでも、3個大隊が駐留しているから、酒場は賑わっているとアルトスさんが教えてくれた。


 そんなある日、ルミナスがサンディとリスティナさんと共に別荘を訪ねてきた。

 早速指揮所の片隅にあるコタツに案内する。


 「また、おもしろい物を作ったな。だが、これは暖かいや」

 「ホントね。家にも作ろうかしら」


 そんな事を言いながら、コタツの中を覗いている。

 

 「昔、作ったんですが、だいぶ普及してきましたよ。難点は、これに長時間入ってると眠くなるんです。良くここで皆が寝てますよ」

 「それは足が暖かいからだと思うわ。それに布団付きでしょう。ルミナス、帰ったら早速お願いね」


 そんな話をしてるから、雑貨屋で取り扱ってることを話してあげた。

 帰ったら、直ぐに飛んで行くんだろうな。


 「この間の戦はどうだったんだ? マイデルさんが気にして、それでやって来た訳なんだ」

 「あれは、一方的に終ったよ。レムナム軍の3個大隊以上が壊滅した。レムナム軍は現在沈黙を守ってる。少し前までは旧ガリム王国の住民を虐殺してたんだが、ガリム王国の残党がサンドミナス王国の援助を受けて旧来の土地の一角を取り戻したようだ。と言っても南の極一部だけどな」


 そんな話を地図を広げて話してあげた。

 取り戻したと言っても、レベル山から南に続く尾根の末端に広がる森の一部だ。

 町や村を手に入れた訳ではないから、レムナム軍が退去して押し寄せたら、それで命運が付きそうな感じではある。


 「そんな訳だから、しばらくはレムナム軍は動け無いよ。サンドミナスも自国の部隊を少し送っているようだ。俺達が動かないことを良いことにね」

 「もう、戦は無いのか?」


 「いや、来年の夏頃に攻勢に出たい。旧ボレテム王国の王都はレムナム軍の砦になっている。その砦を攻撃して、砦から南北、東西に版図を広げるつもりだ。そうすれば、ラクト村周辺を俺達の畑に出来る。そしてパリム湖を手中に収めれば俺達の王都は安全だ」


 そう言って、版図を指で示した。

 かなり大きくなる。旧パラム王国よりもだ。


 「土地は大きいけれど、人口が増えないよなぁ……」

 「俺も、気にしている。連合王国から入植者が来るけど、今度はトラ族だ。ネコ族とは縁戚らしいから、長老達も乗り気だな。後は、戦を逃れてくるものは受け容れることにした。旧ガリム地方から流れてくるだろう。旧住民を虐殺するなんて俺には考えられないんだけどね……」

 

 虐殺と聞いて3人が驚いた顔で俺を見た。

 今までの雰囲気がガラリと変わって真剣な表情でジッと俺を見ている。


 「穏やかじゃないわね。でも、何故そこまでするのかしら?」

 「レムナム国王には明確な目的があるようです。エイダスの統一と、その後の軍備の充実。たぶん軍事国家にしようと計画しているんだと考えています」


 「その為には手段を選ばないってか? 冗談じゃない」


 ルミナスが憤慨してる。

 俺だってそうだ。たぶんパラム王国の住民全てがそう思うだろうな。


 「折角来たんだからルミナスに良い物をやるよ。但し、使えたらだ」


 そう言って、席を外すと暖炉傍の小さな書類棚から、短銃身の散弾銃をホルスターごと持ってきた。

 コタツの天板にゴトリと散弾銃を置く。


 「これなんだけど、威力はそれなりだ。迷宮で使うには適してるんだけど……。体重と腕力が無いと、ころころだぞ」

 「何だ、そのころころってのは?」


 「連合王国のアルト様が使ってたにゃ。1発撃ったら、衝撃で後ろにころころと転がってったにゃ」

 

 アイネさんが、その時のアルトさんの姿を思い出したようににこにこ顔で、ルミナスに教えてる。

 アルトスさんやエクレムさんも撃っては見たものの、俺にはこれで良いってリボルバーを撫でてたからな。相当な衝撃なんだと思う。

 俺も、【アクセル】状態でどうにかって感じだ。通常の散弾を使用すれば良いのだろうが、やはりこれには強装薬が似合う。


 「撃って見るか。出来れば強装薬で使って欲しいんだが、無理なら通常でもそれなりの威力があるぞ」

 「レムルは強装薬で使うんだな? なら俺にも何とかなりそうだ」

 

 そんなルミナスに数発の弾丸を渡して、湖目掛けて試射してみるように言うと、喜んで出掛けて行った。

 アイネさん達が毛布を抱えて後を追って行ったぞ。後ろにひっくり返ったら、石畳だから危ないからな。


 コタツに残ったのはリスティナさんだけだ。

 ちょっと呆れた顔で皆が出て行った扉を見ていた。


 「皆、変わりませんね」

 「子供がそのまま大きくなった、ってマイデルが笑ってるわ」


 マイデルさんの工房には弟子が数人に増えたようだ。

 王都の一角に工房を構えてそれなりに繁盛していると教えてくれた。


 「魔物相手となると、かなり特注の武器が多いみたいなの。正規軍の武装が更新されたから、散弾銃がかなり出回ってるわ。それにちょっとした改造を頼むハンターが多いのよ。でも、銃身を切るハンターはいなかったわ」

 「短いですから、取り回しが楽になるんです。そして次弾を装填するのも素早く行なえます。ですが……有効射程は短くなりますし、散弾の広がりが大きいんです」


 ドォン!っと外から散弾銃の音が聞こえてきた。

 直ぐに次の音が聞こえて来る。

 そして、ドカドカと靴音を響かせてルミナス達が帰ってくる。

 

 エルちゃん達は直ぐにコタツに潜り込んでしまった。

 ルミナスが興奮した顔で俺に聞いてきた。


 「ホントに貰って良いんだな?」

 「ああ、良いぞ。レイク達には散弾銃を渡しているからな。そういえば、レイク達の兄弟は白になったのか?」


 「この間なったわ。戦では通信機の仕事があるから、私達も護衛で参加したのよ」

 「なら、エルちゃん!」


 エルちゃんがコタツを出ると2階の私室に上がっていく。そして持ってきたのは2丁のライフル銃だ。上下2連だが、後衛で使うなら問題はない。


 「レイクとの約束なんだ。白になったら上げるってね。軍の使うライフルよりは威力は無いけど、狙いは正確だ。後衛に最適だと思うよ」

 

 小さな袋に入っているのはカートリッジなんだろう。レイクにもバッグから散弾銃用のカートリッジを20個程袋に入れて渡しておく。


 「横線が入っているのが強装弾だ。だけど過信はするなよ」

 「だいじょうぶだ。だけどころころの意味が良く分かったよ。この衝撃に絶えられなければ、転がるしかないからな」


 「私等は迷宮には行けないのかにゃ?」

 「どうだろう? この辺りは春先まで雪に埋もれるからね。しばらくはレムナムやサンドミナスも互いに様子を見てる状況だし、アルトスさん達と話してみるよ」


 「そうだな。俺も白の6つまでに上がったぞ。レムル達もそれなりのハンターレベルを持った方が良いのかも知れないな」

 「俺だって白の7つは持ってるぞ。だが、そうだな。確かにしばらく行ってなかったからな」


 「王都の迷宮は危険だとマイデルが言っていたわ。洞窟の迷宮がこの季節は良いんでしょうね」

 「遺跡の迷宮は順番待ち、って聞いたわ。連合王国からもハンターが来ているそうよ」


 遺跡の迷宮は解放しているからな。

 そのハンター達で、新たな町が賑わっているとも聞いている。

 その内、お土産屋さんも出るんじゃないかと俺は思うぞ。


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