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N-145 武器の売却


 「武器を輸出するだと!」

 「はい。俺達の武器はライフルが主流になって来ています。旧来のパレトそれにハントはハンターが強装弾を使う位でしょう。それも、散弾銃に変わりつつあるのが現状です。持っていても錆付くだけですよ」

 

 俺の言葉を聞いて、アルトスさんとエクレムさんが同時に俺を見据えた。


 「確かにそうだが、どこに輸出するのだ? 連合王国はパレト等使わぬぞ」

 「サンドミナスです。現在、サンドミナスは旧ガリム王国の残党を援助してガリム地方に派兵していますが、武器が足りません。パレトを1丁持つ兵士よりパレトを2丁持った兵士の方が戦を有利に展開できます」


 従兵が運んできたお茶を飲み、一時俺達は無言になる。

 アルトスさん達が暖炉でパイプに火を点けて、俺はタバコに火を点けた。


 「旧ガリムの住人の話は聞いている。続々と旧ガリムの残党部隊に合流しているようだな。確かに武器は足りないだろう」

 「サンドミナスに武器を売ることで、それを旧ガリムの連中に渡そうという事か?」

 

 「たぶん、そうなるだろうと……。ハントの場合は自軍で使うかも知れませんが、俺達の武器よりは射程がありませんから、後々の問題はないでしょう。旧ガリムに恩を売ることも出来ます」

 「確かに、旧ガリム王国は俺達と事を構えることはなかった。パラム王国滅亡の時やレムナム王国の弾圧があったときにもネコ族を受け入れてくれた恩義は忘れもしない」

 

 「だが、微妙な問題もある。俺とエクレムに任せておけ。長老に相談してみる」

 「お願いします」


 「しかし、レムルの狙いは何なのだ? 単なる支援とは思えん」

 「時間稼ぎです。俺達の体制が整いません。出来れば1年以上旧ガリルで戦って欲しいです」


 俺の言葉に2人が唸る。

 彼等も時間が欲しいのは理解できているのだろう。

 だが、その対応策を考え付かなかったのかも知れないな。


 「となると、泥沼になりかねん。俺達はその隙を狙って一気に版図を広げるのだな?」

 「出来れば、来年の夏前後に行いたいと思っています」

                ・

                ・

                ・


 10日程経って、2つの知らせが届いた。

 1つは、移民と難民の件だが、これは長老も問題ないと判断したようだ。

 2つ目の武器輸出は、結構揉めたようだ。

 それでも、俺達の持っている武器の性能が圧倒的である事から、限定した数を輸出することに同意してくれたようだ。パレトとハントを300丁ずつ、そして弾丸は各10発分。果たして効果がどれ位出るかは分からないが、対価を穀物とすることで廉価に売却するらしい。

 

 そして、年が開けると攻勢の準備が始まる。

 一気に版図を広げてその防衛線を築くのだから、資材はかなりの量だ。

 山から木を切り出して、分厚い板が沢山作られる。柵を作る杭や丸太、それに蔦を編んだロープ等はいくらあっても足りない位だ。

 

 そんな中、マイデルさん達は連合王国から届いた船を組み立てていた。

 12艘あるから時間は掛かりそうだが、3艘出来上がった段階で早速、はしけを作ってくれた。

 

 「言われた通りに作ったつもりじゃが、こんな船が役立のか?」

 「たぶん……。次に、このはしけがどれだけの荷を運べるかを調べてください」


 数人のドワーフが石を艀に積み込んで行く。

 かなりの量が積み込まれても船は沈み込まないな。

 ついに、石が足りなくなって、俺達の作業を見ていた警備兵が乗り込む始末だ。

 警備兵が20人乗ったところで、喫水の変化を見ると10cm程沈んでいるが舷側の高さはまだ20cm程の裕度がある。

 こんなものかもしれないな。一応、船の上部は塞いであるから波を被っても水は入ることはないだろうし……。


 「後は、重さを量って合計すればどれだけの物を運べるか分かりますよ」

 

 人間まで体重を量っている。しばらく掛かりそうだから、一服しながら作業を見守ることにした。

 

 「兵隊を運ぶならこんなことをせずに、もう少し横幅のある船を作れば良いものを……。これでは安定はするが、速度を上げることは出来んぞ!」

 「兵隊は少し乗せますけど、乗せたいものは別にあります。少し重いんで船を並べて板を張ったんです」

 

 板とは言ったが、実際には木の柱だ。厚さが10cm近くある。その上に更に5cm程の板を1m程の間隔で2枚張ってある。

 

 「合計が出ました。2,320G(グル:約4.6t)を載せていました」 

 「間違いは無いな?」


 マイデルさんの言葉に若いドワーフが頷いている。

 十分だ。105mm榴弾砲の総重量は3tちょっとだからな。


 「これで、次の戦が優位に行えます。上手く行けば戦にすらならないかも知れませんよ」

 「まあ、それは聞かずにおこう。残りもこのようにすれば良いな。全部出来上がるには後20日は見ておけよ」


 そう言って去って行くマイデルさんに「お願いします」と声を掛ける。

 後は、荷車だな。アルトスさん達に任せてはいるがどうなってるんだろう?


 そして数日後、今年最初の雪が降った。

 冷え込んできたから、根雪になるかもしれないな。

 作戦指揮所も石造りだから結構冷え込む。暖炉では物足りないみたいだ。

 6畳敷き位の板敷き2つ拵えて掘りコタツを作ったら、アイネさん達が入り浸ってる。

 少し大きめのコタツにしたので数人は楽に入れるのだが、壁際は何時もクアル4姉妹の2人が寝てるんだよな。たまにエルちゃんまでが一緒になって寝てるけど……。

 もう1つのコタツは小さめだ。ここは通信兵達が入っている。コタツの天板に電鍵とレシーバーを置いているから、問題はないみたいだが、眠気との戦いに明け暮れている。

 たまにゴチンっと天板に頭をぶつける音がするのも平和を感じることではある。

 

 そんな中、ユングさん達が尋ねてきた。

 従兵の知らせで、寝転んでいたソファーから身を起こして、扉付近まで歩いて行く。


 「しばらくだな。ちょっと遊びに来たぞ」

 「ユングさん達なら何時でも歓迎しますよ。どうぞこちらに」


 そう言って、暖炉の傍にあるソファーに案内する。

 やってきたのは、ユングさんに、フラウさん。そしてラミィさんだ。何時ものように戦闘服にガンベルトという出で立ちだけど、寒くはないんだろうか?


 「俺達の暮らす村はすっかり冬景色だ。目の前の湖も凍ってしまったから明人がチラ釣をしているよ」


 そう言って取出したザルの中には公魚に似た魚の串焼きが入っていた。

 クンクンと鼻を鳴らしながら早速アイネさん達が起き出した。匂いには敏感なのかな?


 ホイって差し出したザルを受取って「ありがとにゃ!」って言いながらコタツに持って行ったぞ。そこで食べるのか?


 「レムルのところに行くんなら……と持たせてくれたものだ。明人のところの妹が好物だったらしいからな。これがその妹だ」


 そう言って、フラウさんが取出した端末の仮想スクリーンには4人の娘さんが映っていた。 

 得意そうに同じ出で立ちでガルパスに乗ってるぞ。

 一番小さな娘さんは、アルトさんだな。

 後の3人は始めて見る顔だ。

 

 「話には聞いた事があるんじゃないか? これがサーシャちゃんで、当時はモスレムの王女だった。隣がミーアちゃんで美月さん達の妹になる。アルトさんは知ってるな。この中で姉貴的な存在だが、正確にはサーシャちゃんの伯母さんだ。そしてこっちがリムちゃんだ。明人達が妹として迎えたが、カナトール王国の王女に当たる」


 「希代の軍師、20万の軍勢を2万で滅ぼしたという指揮官がこの子なんですか? そして、夜襲において負け無し、月姫とまで言われてネコ族の誇りになってる子がこの子ですか?」

 「最後のリムちゃんに至っては大隊を一瞬で滅ぼしたとも言われてるぞ」


 そう言って面白そうに微笑んだ。

 あの有名な4人は一緒に暮らしてたのか……。

 

 「色々と遊んでたらしいな。たまにあの頃の話を懐かしんで明人達と酒を飲む時もある。その他にも、画像データがある筈だ」

 

 ちょっとしたスライドショーが始まった。エルちゃんやアイネさん達も集まってきた。

 

 エルちゃんよりも少し年上の娘達が、狩りをしたり魚を釣ったりしている光景が映し出される。

 その中にかなりの頻度で出て来る人物が3人いた。

 ネコ族の夫婦と30歳位に見えるご婦人だ。

 

 「このネコ族の夫婦は明人達の姉代わり、兄代わりだな。何時も一緒にいたぞ。こっちの姉代わりの人物にハンターを始めた頃に散々世話になったと言っていた。そして、このご婦人はサーシャちゃんのおばあちゃんでアルトさんの母親だ。明人をもってして俺より強いと言わしめた人物だぞ」

 

 「そんな風には見えないにゃ。何時も微笑んでるにゃ」

 「ミーア様ってエルちゃんにそっくりにゃ」


 おばあさんの方は何となく底が見えないけど、確かにエルちゃんに似てるな。

 美月さんや明人さんが俺達に援助してくれるのも、この画像を見れば頷けるな。


 「ラミィ。あっちのコタツで見せてやれ。色んなのがある筈だ。それと、そのコタツの構造を記憶しといてくれ。村で作れば売れると思うな」

 

 ユングさんの言葉で、ラミィさんとエルちゃん達はコタツに移動して行った。

 ここからが本題だな。

 

 とりあえず、暖炉脇のポットでお茶を入れようとしたら、フラウさんが立上がってシェラカップにコーヒーを造ってくれた。

 コーヒーのカップと一緒にスティクコーヒーの袋とタバコの袋を俺に渡してくれる。

 これはありがたい。後、2箱位しか残ってなかったからな。

 早速、コーヒーを飲みながらタバコに火を点けた。


 「美月さんが、少し早まってると心配していたぞ」

 「こちらの体制が整わない内に旧ガリム地方で動きがありますからね。サンドミナスにレムナムの敗走の噂を流して、旧式になった装備を売却しています。これで、少しは時間が稼げるかと……」


 「流石は美月さんに教えを受けただけのことはあるな。その策を教えてやるように言われてきた。ならば、来年の夏が侵攻時期か?」

 「一応、その考えでいます。まだ詳細な作戦は決めていませんが……」


 そう言って、地図を広げて概略の考えを話した。

 目標はパリム湖を囲んだ領域を版図に加えること。その為に旧ボルテム王都の砦を攻略する旨を説明する。


 「レムナム王国の国力が低下した今なら可能でしょう。問題はサンドミナス王国ですが、旧アリム王国の残党に援助をしています。現時点で1個大隊の援軍を派遣していることを考えれば、サンドミナス王国内に深入りしない限り黙認するでしょう。サンドミナスからすればレムナム王国の版図が狭まるのですからね」

 「だが、内海への出口が確保出来る。それを相手がどう見るかだな。激戦になるぞ」

 

 コーヒーを一口飲むと、地図のパリム湖を指した。

 

 「この湖を使います。場合によっては無血占領が可能です」

 「敵前上陸はリスクがありすぎるぞ」


 ユングさんがそう思うなら、この戦は勝利出来そうだな。

 俺の顔をジッと見詰めるユングさんを見て、タバコに火を点けた。


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