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異世界に来たら召 喚スキルがありました  作者: ふぅみ


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23/23

第23話

 河原を出発してから5日目の昼前にようやく森を抜けた。飛行機の速度が日に日に早くなっていったのに、森の中で採集する時間が長くなりこういう結果になった。


 休憩時間を利用しての息抜きだったはずが、10分、30分と長くなり、寄り道あり、昼寝もあり…のマイペースに移動した結果だ。予定は未定であり、決して後悔はしていない。


「森を抜けたら、結構近いところに村があったんだな」

 上空をひとっ飛びしても良かったのだが、好奇心が勝った。隠密で飛行機ごと隠れたまま、しかも少し高めの位置から村の様子を観察する。


 普通ならこの高さからものを見てもはっきり見えないはずだが、トンビみたいな鳥の目から変換した遠視スキルがいい仕事をしてくれている。


 トンビは昨日、食事休憩中に飛んできて俺のリンゴをかっさらって逃げていった。やつは一度だけでなく二度も食べ物を狙って襲ってきたため、思わずかっとなって水魔法を食らわせてやった。

 肉はまだ解体してないが、たぶん食用に出来るはず。ニワトリくらいの量の肉が取れるだろう。旨いのかどうかは知らない。


「村の規模としてはどうなんだろ。小さい方なのかな」

 木造の家が二十軒ほど間隔を広めにとって建ち並んでいた。小麦畑は村の東側に固まってあり、各家の庭が野菜畑になっていた。周囲は木の柵で囲まれているが、あまり頑丈そうには見えなかった。これでは獣の侵入も完全に防ぐことはできなさそうに見える。


 村の中央近くに広場があり、子供が六人ほど集まって走り回っていた。子供というより、幼児といった方がいいか。小学5、6年くらいつまり10歳前後くらいになった子供はもう大人と一緒に畑作業を手伝ったり、山羊の放牧を手伝ったりしているように見えた。


 誰も空を見上げることはなく、見つかりそうな様子もないまま上空からの見学を切り上げて進路を目的地の町へ向ける。


 村から離れてから、安堵の息を吐く。

「緊張していたのか…」


 この世界の人も俺と変わらない姿かたちをしていたと確認でき、ほっとした。


 肌の色はたぶん白人系。だが日焼けしている人が多く、俺の肌の色もそんなに目立つことはないだろうと思った。

 村人の髪の色は金、赤、明るい茶、焦げ茶、白、黄色で黒髪の人はいなかった。偽装スキルで髪を焦げ茶、瞳の色を紺色か緑に変えた方が目立たなくていいかも。


 彼らが着ていた服のデザインは俺が着ているものとあまり変わらなかった。たけど俺の着ている服はカラフルなハギレを縫い付けて襟元や袖にアクセントをいれたりしているから、村人たちよりはおしゃれだ。


 村から続いている道なりに飛ぶと遠回りになるため、草地や荒れ地の上もおかまいなしに飛ぶ。


「ってか、遠くに高い山が現れた」

 この山を迂回するように街道が続いている。荒れ地の歩きやすいところを通って行くためか、妙にうねうねと道が蛇行している。上空から見ていると無駄な距離を歩いているように感じる。


 途中、行商人なのか幌付きの馬車が3台連なった一行の上を飛び越えた。


「そろそろお昼休憩の時間だけど…ああ、あそこがいいかも」


 草がまばらに生えているだけの荒れ地に飛行機を降ろす。旅人が行きかう街道からは離れているため、飛行機を収納したら隠密を解いてもいいだろう。


 ステルステントのステルス機能をオフにし、普通のテント状態にする。簡易イスと小さな折り畳みテーブルを出し、昼食にしよう。


「この野営コンロを使うのも久しぶりだな。水生成水筒を使うのも久しぶりだ」

 アイテムボックスの中には暖かいお茶がすぐ飲める状態で入っているが、あえてお湯を沸かし、ハーブティーを用意するという手間がしたかった。


「キャンプをしているような余裕が生まれている。…よかった」


 訳もわからずこの世界に来て、何度も生死を間近に感じた。あの時ほど切羽詰まっていないことを改めて幸運に思う。


「予定通りなら、あと2時間ほどで町に着くはず」

 到着する前に色々と準備をしておこう。


 ステータスカードを取り出し、現在の状態を確認する。

 いま表示しているスキルは【洗浄】【水魔法】【細工】の3つだけ。【薬師】を隠しておくか表示するかで迷っている。


「商人ギルドに登録できず、冒険者ギルドに登録するなら薬師スキルがあった方が、採集に興味がある理由付けが強いんだよな」

 冒険者ギルドに登録しても、薬師と兼業しているなら討伐を回避する理由にも使える…気がする。


※エクスルスの町では買い物や観光だけにして、リーエルの街でギルド登録してみては?


「逆じゃないの? 町の方がギルドの鑑定能力が低くて、俺のスキルがバレない可能性が高くなるかと思っていたけど…」


※各ギルドの鑑定能力は同じです。鑑定の魔道具は劣化しないものとされています


「えっ、なにそれ? どういうこと? …たしか、性能のいい鑑定の魔道具があるようなことを言ってなかった?」


 世界基本知識さんもやや自信がなさそうに解説してくれる。


※国、上位貴族、神殿が所有する魔道具や水晶のなかには一般に流通しているものより性能が高いものが含まれている可能性があります。


「国や貴族、それに神殿か…。スキル確認の儀って神殿でやっているんだっけ」


※その通りです。創造神を祀る神殿が所有するスキル確認の鑑定水晶も、各ギルドが所有する鑑定の魔道具も、いつ誰が作ったのかは謎のまま解明されていません。はるかな昔より存在し、人々に恩恵と道しるべを与える…神の贈り物だと多くの者に信じられています。


 神様からの贈り物。ライトノベルズでもよくその設定になっていたな。


「一般的には同じと考えていいのは分かった。だけど、改めて考えると…すごい数が必要だよね」

 神殿の数だけでも多いと思うのに、ギルドの支店の数だけ鑑定の魔道具があることになる。


※いつの時代かはわかりませんが、複製を可能にする特別な能力を持って者がいた可能性もあります。


 なるほど、コピー能力か。そんなスキルが本当にあれば、便利だろうね。俺も欲しいぐらいだけど、何をもとにしたら変換できるのか想像が出来ないや。


「ところで、話を戻すよ。なんでエクスルスではなく、リーエルの街の方で登録した方がいいの?」


※人口比率により上級スキル持ちも複数スキル持ちも多くなり、注目されにくいからです。


「上級スキル?」


※発現率が低い、特別なスキルです。錬金術の他、薬師も含まれます。


「そうかー薬師も上級スキルになるんだね。うん、わかった。エクスルスでは買い物だけにするよ」

 最短で一泊だけしたら、リーエルへ移動しよう。


「【薬師】のスキルは非表示…これでよし」


////////////////////////////////////////////////////////////

マシロ ヒロト16 13 131/140  


スキル 【洗浄3】【細工3】【水魔法3】


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あっと、魔力量も偽装しておかなきゃ。魔力量を3桁から2桁に変更。100の位を非表示にすると簡単かな。そうするとスキルのレベルは1か。


ちょっと待て、なに普通に本名晒しているんだよ。


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ヒロシ16 13 31/40  


スキル 【洗浄1】【細工1】【水魔法1】


////////////////////////////////////////////////////////////


 あとは…そうだな装備か。ステルステントの呼び出しアクセは外してアイテムボックスに入れておく。偽装用のペンダントは服の中だから付けたままでも大丈夫。剣もサバイバルナイフもとりあえずアイテムボックスの中にしまっておこう。


 他に身につけているのはウエストポーチと、旅の装備を入れているリュック。

 このリュックはこっちの世界の帆布で自作したものだ。ファスナーは使えないからボタンやひもで縛る形にしてある。街の検問で手荷物検査を受ける可能性を考えて野営コンロと水生成水筒、小さな片手鍋が入っている。


 リュックの中に食料は入れていない。聞かれたら食べきったと答える。もちろん、俺自身のアイテムボックスには豊富に入っているから食べることには困らない。


 リュックには重量軽減を付与していないが、俺自身が背負う分にはいつでも重量スキルのオンオフが掛けられる。普段は背負っていることを忘れない程度の重さにしている。


 今回はウエストポーチもリュックも普通のカバンだ。マジックバッグを使うかどうかは相場を調べてから考える。まずは現状調査をしてからだ。


 実はウエストポーチもリュックもマジックバッグになっているのを自作して、持っている。見た目の3倍の容量なら入れ方を工夫しているということで誤魔化せないかなということで、今回使うかどうか少し迷った。でも貴重なアイテムを持っていると珍しがられるようなら、変に目を付けられることになるから使えない。使わない方がいいと思った。


 錬金術師さんたちほど立派な機能ではないが、それでもマジックバッグを自分で作れるようになったのがすごく誇らしい。誰にも自慢できないのが残念だが、危険行為は厳禁だ。


 さて…俺自身の設定もおさらいしておこう。


 【細工】と【洗浄】スキルは10歳の時のスキル確認の儀で発現した。【水魔法】が発現したのは最近で、まだうまく使いこなせない…ことにしよう。


 【細工】スキルは手先が器用なことの言い訳にどうかなと選んだスキルだ。これを持っている人は案外多い気がするんだよ。モノづくりをしている人なら自然に身につけそうなスキルだし。


 *


 テントを片付け、ステルスモードにした飛行機で1時間半ほど飛ぶ。

 町をぐるりと取り囲む塀が遠くに見えるようになったところで、飛行機を地上に下ろした。


 街道から外れたところに降りたため、街道までフローティングボードで移動。10キロ先に人らしき存在が地図スキルに現れたところで、慌てて徒歩に切り替える。


※フードつきマントを着た方がいいです。旅人の平均的なスタイルなので。


 世界基本知識さんのアドバイスに慌てた。言われてみればなるほど…街道は石畳みになっているがすぐ近くの荒れ地からは砂煙が舞うこともある。服の汚れ防止や急な天候の変化にも対応できるフード付きマントは必須だよな。


 アイテムボックス内を探して、焦った。フード付きマントは錬金術師の家の中。2階のタンスの中にあっただけだ。空き家の方には1枚も残されていなかった。

 しかも、錬金術師さんのマントは特別製だった。見る人が見れば分かるレア素材に色々な付与がされた一級品だ。とてもじゃないが平民の16歳。成人したばかりの若者が持っているようなものじゃない。


 なんで今言うんだよ。もっと早くに注意して欲しかった…


 思わず愚痴ってしまう。

 これはもう、シェルターへ移動して自作するしかないか。


※沈没船から引き上げた箱の中にあります。


「え?」

 あったっけ?


 そう思いつつ、急いで街道を外れる。ちょうど、背丈を超えるほどの岩がぽつんと突き出していたため、そこまで隠密のまま飛んで、フローティングボードから降りる。岩の裏側にシェルターの入り口を固定して移動した。


「どこ? どこに運び込んだ箱?」


※食堂兼宿屋だった空き家です。


「あー、もしかしてリネン類だと思って倉庫に入れたやつか」


 箱の中身を全部出してみると、シーツの下の方に灰色の布が入っていた。広げてみると確かに、フード付きマントだった。


「そしてなぜか、エプロンもある。やっぱ、開店準備用の荷物だったみたい」

 つまり、この箱を食堂兼宿屋に運び込んだのは正解だったってことだ。中身を全部見ておかなかったのは失敗だったけど…。


 フードを羽織り、鏡の前で外見チェックをする。

 髪は焦げ茶、瞳は紺色にした。肌の色は変えられないからそのままだけど、目元と頬にほくろを付けたらかなり印象が変わった。


 フードの前を留めたため内に着ている服は分からないが履いているブーツは見える。

「ウエストポーチもマントの中になったから、お金を取り出すときは前を開かないといけないね」


※小銭を入れた巾着をポケットに入れておいては?


「んー そうだね。そうしよう」

 銀貨2枚、大銅貨と銅貨を10枚ずつ巾着にいれる。実はこの巾着袋も最小サイズのマジックバッグになっている。俺が初めて作った練習第一弾のマジックバックだ。


 小さい袋に魔法紋を付与するのが大変だと知ったのは、これを作った後。例によって自分のアイテムボックスのスキルを、シールをぺたりと貼るかのように付与した後のことだった。

 普通は魔法のインクで魔法紋を描いて魔力で刻んで定着させるから、小さいものに付与するのはすごく大変なんだって。魔法紋の線と線がくっついてしまったり、潰れてしまったりするそうだ、


「よし、今度こそ…」

 少しバタバタしてしまったが最終準備を終え、シェルターの出口であるドアへ向かう。

 近くに旅人がいないことを確認しているが、念のため隠密モードでシェルターを出た。


 地図スキルで5キロほど離れたところに人らしき反応があるが、これだけ離れていたら大丈夫だ。隠密モードを解いて街道へ戻る。


 しばらくすると後ろから馬の蹄と荷馬車の車輪が回る音がした。馬車が近づいてきていることに気が付いて振り返った風にして、道の端に寄る。足を止めて通り過ぎるのを待っていると、御者が「どうも」というような合図をしてから走り去った。


 ドキドキした。初めてこの世界の住人を近くで見た。

 向こうの世界にいたとしても不思議はないような…どこにでもいそうな普通の人だった。なのに、全然別の世界の人間だということが不思議な気さえする。


 俺のことも、どこにでもいそうな少年だと思ってくれていた…と思いたい。


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