第22話
大安吉日。かどうかは知らない。引っ越しはスムーズにいった。
と、いうことはなかった。
なんと、家がアイテムボックスに入らなかったのだ。焦った。泣きそうだった。
家を丸ごと召喚できたのだから、アイテムボックスに出し入れが簡単にできると思い込んでいた俺自身に、その根拠は何だったんだと問いたいぐらいだ。
引っ越すのをやめようかと思うほどにショックを受けた。河原にしゃがみ込み、泣きそうなほど動揺した。
世界基本知識さんが解決策をアドバイスしてくれていなければ、引っ越しをやめていたかもしれない。
家が収納できなかったのは…妨げになっていたのは、防犯設備だった。 森林黒サルが群れで襲い掛かってきても、バリアらしき空気の層で固く守ってくれたあれが俺の干渉も弾いた…らしい。
キッチン横の隠しスペースにある、動力源である魔石に働きかけて防犯設備をオフに。さらに念には念を入れて魔石を取り外してから家全部を丸ごと包むイメージで収納してみた。
そしたら、出来た。
収納できたのだ。2階建て、地下室付きの家をまるごと。
やっておいてなんだが、入る方が不思議だよな。
うん、やった後におかしいと気が付いたんだよ。家を持っていきたいということにばかり気を取られていて、アイテムボックスに入るわけがない…なんて思わなかったんだ。
俺のその考え方も行動もおかしいって誰も指摘する人がいなかった。
だから、持っていきたい一心でアイテムボックスに入れと家を収納したんだ。結果入ってくれて、自分のアイテムボックスがどんなにおかしな容量なのかにようやく気が付いたんだ。
「あーだるい。気持ち悪い」
魔力が一気に奪われたためか、どっと疲れてしまいポーションで魔力を回復する羽目になった。作っていてよかった魔力回復ポーション。
「効果は大きいけど、美味しくはないなぁ。ポーションは栄養ドリンクじゃないから仕方ないのかもしれないけど」
うまくいった安堵と疲労で河原にへたり込んだまま休憩した。
久しぶりにステータスカードで自分の総魔力量を確認すると140まで増えていた。錬金術であれこれ作ったり、フローティングボードであちこち移動していた経験が魔力上昇につながったのだろう。
「さて、そろそろ出発するか。いや、その前に…」
この河原を後にしたら、このお手頃サイズの石や岩といつ出会えるかわからない。今後作るだろうゴーレムの材料にもなるから、いっぱい持っていこう。
「…って、よく考えたら…いつ限界になるんだ?」
河原の石をアイテムボックスに次々と収納していて唐突に、今更なような疑問がわく。
「好きなだけ入るのは助かるけど…」
思い返してみれば、アイテムボックスを初めて感じた…あれは不思議な感覚だった。自分の中から湧いて出てきたように、見えない存在を感じた。
俺のアイテムボックスには陰竜丸ごと、サーベルタイガー、オオツノ鹿に巨大カエルにダイアウルフにジャッカルにサイ…竹や倒木といった大物が入っている。しかも先程は家丸ごと一軒収納した。なのに…容量がいまだにいっぱいにならないのだ。まだ限界を感じない。全く重さも感じない。
「やっぱ、オカシイデショ」
錬金術師の家にはいっぱいマジックバッグやマジックボックスがあった。容量はどれも確認したわけではないが、野菜や肉など別々に収納して保管してあった。俺のアイテムボックスほどの容量があれば一つにまとめておけばいいはず。
全部を纏めて入れておけるほどの容量がない…という事は簡単に予測できる。
「……………やめた」
はぁっとため息をつき、立ち上がる。どんなに考えていたって答えはどこからも出てこない。
考えたって答えが見つかるわけじゃない、と以前も思考を放棄したじゃないか。
スキルだから容量には限界がない。アイテムボックスはスキルだからマジックバッグが収納できる。
それでいい。分かっていることが全てだ。
「もう、石はいいかな…」
石採集を終え、空飛ぶゴーレム君を出す。
コクピットへ乗り込むのはドアを開け、跨ぐように移動するだけでいい。車高の低いレーシングカーによく似ていて、しゃがみこむように椅子に座る。視線が地面に近い。
「15メートル浮上後、その場に滞空」
慎重に操作して命令で記憶させて、ゴーレムに再現させる。繰り返すことで練度はよくなり、飛行操作が楽になるはずだ。
地図スキルでしっかり目的地を確認してから前進。静かに、滑るように進む。
一度だけ後ろを振り返ったが、小さくなった河原はすぐに森の中へ消えた。
「エンジンがないから、静かすぎる」
キャノピーで風除けをしているから空を飛んでいる感覚は、眼下にした緑の変化だけ。
飛び始めてしばらくは興奮していたが、代わり映えのない景色に落ち着いた。落ち着いて、さらには飽きてくるまで2時間もかからなかった。
「これが10日ほど続くのか」
早くもうんざりしてきた。
「途中、休憩できるような場所があればいいんだけど…」
緑の海以外の景色がないかと左右をきょろきょろしているが、何も変わったものはなかった。
「おなかすいた…」
気が付けば正午をとっくに過ぎ、1時近い時間になっていた。食事とトイレ休憩のためにも降りる必要がある。
「うわー。ない…」
木々が密集して生えているせいで、飛行機を安全に下せるような場所がない。
食事はコクピットに座ったままハンバーガーで済ませたが、トイレの方はいつまでも我慢できることじゃない。
「初日からいきなりトラブルなんて…」
飛行機を地上に下ろせなくなるパターンを想定していなかった。計画が甘いといえば甘いのだろうが、まさかここまで降りられる場所がないとは……。
レニンラード大森林、大森林すぎるぞ! もうちょっと木々を間引きしてくれ。
「1日中飛び続けられる自信はない、どうしよう」
翼の揚力が自然の風を捉まえているおかげで、風魔法の消費量は想定よりも少ないと感じている。魔力不足を感じるほどできないが、集中力の方が先に限界に来るかもしれない。
せめて大きな木か、崖でもあればいいんだけど…
※進路から外れても良ければ、9時方向に巨岩があります。
地図スキルさんが声をかけてくれた。
「ホント? 案内して」
地図スキルさんの探知範囲は10キロ圏内。つまり、移動することによって10キロ圏内に入った場所なら、目的のものを探査できるというチートがある。記録機能もある。ピンを立ててマークしてくれた場所なら、10キロ圏外からだろうと道がない森の中だろうと、迷わずに案内してくれる。
この他にも、地図スキルさんには素晴らしい能力があった。なんと、地質調査も可能だったのだ。
変換元になったのがスマホの地図アプリだったから、周辺情報の案内だけかと思ったらまったく違っていた。もしかして、スキル変換の際に地理の教科書も同時変換していたりして…。
時々貴重な素材を星付きで教えてくれるサービス精神を発揮していた地図スキルさんだが、ポーション瓶用の材料になる珪砂や石灰岩などが採集出来ますよ、と鉱物についてもどこに何があるか教えてくれるのだ。そう、地面の中にある鉱脈の状態でも分かるという神対応だ。
分かりにくいかもしれないが、掘り出してからしか対象を調べられない鑑定に対し、掘り出す前からそこにあると分かっているのか地質調査だ。これが地図スキルの機能に含まれているのだから、改めて感動する。
「あ、あれか。…なるほど、確かに大きな岩だね」
ごつごつした岩の上部分は平たい平面にはなっていない。飛行機をこのまま安全に下すのは難しい、というより無理がある。
だが、俺には錬金術という素晴らしい力がある。
機体をハチドリのように空中静止させたまま、ゴーレム君の機体を変化させる。本体を支えていた足をぐねぐねと柔らかくして伸ばすように形を変えていく。
細い足でも岩の形に添った長さにして、安定して停まることができれば成功だ。
「よしっ。このまま戻るまで動力を一時停止」
岩に不時着できたのを確認し、座席に固定していた安全ひもを外す。腰を浮かせてキャノピーに触れると自動で開いていく。
「しばらく機体を離れて休憩する」
外の風を感じながらフローティングボードを出し、ボードに乗り移る。
「ふぅ…」
無事、近くにある別の岩の上へ着地。
あとはフローティングボードも収納し、岩にシェルターの入り口を開いて固定。安心安全なシェルター内へと移動する。
「トイレ、トイレ…」
シェルター内には休憩どころか住むことも可能な家がある。一番近くにあるトイレがある家、商人の家付き店舗へ走る。
「焦った…トイレが間に合わないかと思った」
1階にある従業員用トイレに駆け込んだ。すっきりした後2階へ上がり、キッチンでコーヒーを煎れて一息つくことにした。
シェルターは1日6時間という使用制限があるものの、使わなかった時間は繰り越せるという思いやりのある設定。錬金術師の家に住むようになってから、シェルター内で過ごす時間は倉庫代わりに出入りするのと変わらない短時間のみ。利用可能時間は伸び続けて、今は10日ぐらい隠れ住むことも出来るようになっている。
いまは隠れ住む必要がないから、森を抜けるまでの休憩やステルステントを出せない時のみの避難先に利用するつもりだけどね。
「ピンチだと思ったけど、ゴーレム飛行機を森の上空、どこでもホバリングさせたまま待機。今みたいにフローティングボードに乗り換えて、俺だけ地面に降りればよかったのか」
進路を変える必要なかったし、急遽ゴーレムの足を変化させる必要もなかった。無駄なことしてしまったよ。
「ま。気が付いたことで良しとするか」
飛行機からフローティングボードに乗り換えて地上に降りた場合、ゴーレムと俺がどのぐらい離れていても大丈夫なのかを一度実験する必要があるな。100メートルほど離れても大丈夫なような気もするけど、一度実験しておきたいかも。
警備ゴーレムのマモルは家の周りを周回させていただけだから、魔力量の消費も少ない。
空中待機とはいえ飛行状態を続けているわけだから魔力量の消費は激しいだろうし、魔石のエネルギーを節約するなら待機させるよりも収納した方がいいのかな。
「うーん…迷う」
飛行機ゴーレムに自己判断で離陸や着陸が出来ないかやってみてくれない? と頼んでみた。
人間相手でもないのに無茶な命令したかなーと思ったが、離陸も着陸も手順がプログラム化されているようで、問題なくこなしてくれたよ。
偉大なる錬金術師さんの技術、凄すぎ。
「これで森の上空に飛行機を待機させた状態で、俺だけフローティングボードで地上に降りれるな」
もしかして、操縦を任せた状態で…空を飛んでいる間、寝ていられる?
いやいや…出来るかもしれないけど完全自動運転はやはり怖い。寝ている間に何かあったら、と思うと…。危険行為はやめておこう。
「うん。やめておこう。」
コーヒー休憩を終え、シェルターから出ようとしたところで立ち止まる。
「念のため、魔力残量を確認しておこう」
カードで確認してみれば4分の1ほど減っていた。
「6時間近く飛び続けて4分の1か」
魔力を回復するポーションはあるが、集中力を上げるポーションはないからあと2時間ほどで今日の移動は切り上げよう。
シェルターから出て、フローティングボード経由で飛行機に戻る。飛行機に乗り込む際にフローティングボードを素早く収納し、座席に座る。
「えーと、目的地方面は…」
方角を確認して、機頭を修正。風魔法の推進力を上げて飛行する。
相変わらず、森の木々しか見えないまま2時間のフライト終了を告げるアラームが鳴る。
「この近くに空地か崖はある?」
残念ながらどちらもありません。
「そうか。それならどこでもいいや。この辺で降りてみよう」
高度を50メートルから徐々に下げていき、高い木のギリギリぐらいを飛びながら木と木の間隔が比較的広い場所を探す。
人間が管理しているのでもなければ、なかなか森の中で開けた場所を探すのは難しい。
空地があれば自然に草が生え、木が育つ。巨木の陰になっていてさえ、日陰を好む木が生えてくるし、太陽の光を求める木は少しでも多くの光を得ようとして高く育つ。
「降りるから空中で待機」
飛行機を空中静止するように命じるとともに魔力を流して動力源を補充、そっとハンドルを離す。ジャイロがうまく働いていて、立ち上がっても歩いても安定した水平姿勢を保ったまま待機してくれる。
「また明日、頼むね。お疲れ様」
アイテムボックスから出したフローティングボードに乗り換え、待機させていた飛行機をアイテムボックスに収納する。
隠密で姿を消したまま飛行し、木の根元に着地。すぐにフローティングボードもアイテムボックスに収納した。
「急がないと、陽が落ちる」
どのあたりにステルステントを出そうかな。
※2時の方向に朽ちた銀杏の木があります。
「朽ちた木…?」
地図スキルさんがおススメしてくれる理由は分からなかったが、案内に従って向かってみる。わずか5分ほど歩いてたどり着いたその木は、確かに朽ちていた。
「二股になった枝の先が二本とも折れたのか。なんでこうなったのか分からないけど、落ちた枝が地面に落ちて朽ちてしまったみたいだね」
大本の幹はかなり太く、まだ生きていた。ただ、かわいそうになるぐらい短くなってしまっていた。
「折れる前は、かなり高い木だったろうな」
樹齢もかなりなものだろうから、長い間周辺の木を見下ろしていただろう。
ステルステントではなく、シェルターで夜を過ごそうという気になった。
「こんばんは。一晩こちらで休ませてもらいますね」
世界樹さんのところでしたように、大きな木に挨拶をする。世界樹さんと違って、銀杏の木からは返事はなかったがシェルターの入り口を幹に固定した。
木の中に入ると、世界は一変する。
暗くなりかけていた時間が真昼に巻き戻ったかのように、周囲は明るい。
「今日はどの家にしようかな」
スタンピートで破棄された町から召喚した空き家は商人の家だけではなかった。最近は召喚したいものがなかなか見つけられず、困った俺はもったいない精神とガチャガチャにも似たスリルを求めて、空き家を繰り返し召喚していた。
広いシェルター内に配置しておけば邪魔にはならないし、家に残されたものがないかどうか探検するのが宝物探しのようで楽しかったのだ。
「いや思い切って、新しい家を召喚しようかな」
まだ今日は一度も召喚していなかったから、いつでも思いついた時が解禁タイムだ。
薬師の店舗に併設された家。食堂兼宿屋だった空き家。雑貨屋だった空き家。家庭菜園を楽しんでいた普通の家。喫茶店だった空き家。
「どんな家が楽しいかな」
何か、俺にとってのお宝が残っているといいな。
いま俺が欲しいものが何かと考えて、靴が欲しかったことを思い出した。
「スタンピートで破棄された町に残された、状態のいい空き家のなかで、人気店だった靴屋さんがあれば欲しいです! 靴屋さんの店舗つき住宅、【召】!
空地に向かって手を大きく振り上げ、振り下ろす。なんとなく、いつからかこのパフォーマンスを始めるようになっていた。
「……おぉー。雰囲気あるなぁ」
古めかしい感じが老舗っぽい、レンガ造りの店がドドーンと現れた。
早速中に入ってみると、こちらは裏口から魔物の襲撃を受けたらしく、店内は荒らされていた。
「最近、被害が少ない家が続いてたから…改めてみると酷いな」
状態のいい空き家と望んだのにこの店が選ばれたのは、人気だった靴屋とリクエストしたことが優先されたのだろうか。
店内を洗浄スキルで綺麗にして、壁の爪痕も消していく。以前はできなかった、こういう修復も錬金術でできるようになっていた。
「あ、革や靴ひもが少し残っている。ラッキー」
完成品はなかったが、工房に材料が少し残されていた。足形や道具はなく、空っぽの棚だけが並んでいたから大切な商売道具は靴職人が持って逃げたのだろう。
「隅っこにメジャーが落ちてた。これで足の長さや甲の高さを測っていたんだろうな」
この世界の長さの単位がこれで分かった。一センチにあたる単位は元の世界のものより少し長く感じた。
「あ…いいことを考えた」
このメジャーをスキル変換したらどうだろう。元の世界で身についた感覚の誤差がなくなるのではないだろうか。
「よし。測ることができるスキルに【換】!」
無事メジャーが消え、カードで確認してみるとスキル【計測】となっていた。とりあえずこれも隠蔽しておく。
「計測スキル、か。このスキルは…おぉ…」
使ってみるとこのスキルがめちゃくちゃいいスキルだということが分かった。見ているだけで長さが分かる。だけでなく、手にしたものの重さも分かる。
「これはいい!」
モノづくりをするのにすごい便利だ。
例えば長方形の箱を作ろうとしたら、長辺の側面2枚に短辺2枚、上下2枚の板がいる。それをいちいち寸法を測ることなく板をさくっと切るだけで材料がそろうのだ。板を切って、素材に干渉して溶接したら長方形の箱が出来る。
あ、しまった。上の板は蓋だから下の底よりも数ミリ大きくカットして、ぐるりと周囲に蓋の深さ分の板を貼り付けなきゃ。
…ん? 被せ蓋だと弁当箱みたいだ。
蝶番を作って開閉するタイプの箱にすれば蓋と底の板の大きさは同じでいいのか。
話が少し脱線した。
計測スキルの重さが測れる機能は、例えばパン生地の大きさを同じに揃えることが測りを使わずに出来るということだ。大きさの違うパンが焼けるということは素人ならではの手作りパンとしてはありかもしれないが、これが魔道具作りの時やアクセサリつくりの時であれば同じものを作る精密さが必要になる。だからこのスキルは俺にとって、非常に有益なスキルだった。
「さて、次は部屋の方も見てみよう」
二階の生活空間の方には残っているものが多かった。
「服や靴がある!」
元の住人の年齢は分からなかったが、夫婦の部屋の向かいにある部屋には服や靴が残されていた。夫婦と子供の3人暮らしだったのか、それとも住み込みで働いていたお弟子さんなのかは分からないが、残っていた服と靴は俺にピッタリサイズだった。
「お宝発見だな」
長靴代わりにできそうなブーツがひとつ。室内履きとしても使えそうなサンダルがひとつ。
服も洗浄しなくても着ることができそうなほど状態がいい。もちろん、すべて洗浄するけどね。
靴職人夫婦の部屋にも私物が残っていた。女性向けの服は必要ないから、衣装箱に入ったまま放置する。旦那さんの方の服は俺でも着られそうなものがあった。色は渋いけど、物はいいから将来のために残しておく。
「キッチンもアタリだな」
食器や鍋などもありがたいことに残っていた。リネン類のセンスも良く、落ち着いた感じだ。これらも洗浄して、使わせてもらおう。
ぐーとおなかが鳴る音がして、すっかり夜が更けていてことを思い出した。
「やばい、こんなことしてる余裕はなかったんだった」
ささっと夕飯を食べてシャワーを浴びてさっぱりしたら、明日からの移動に備えて早く寝なきゃ。
シェルター内で一番利用する頻度が高い家庭菜園付きの普通の民家に移動する。この家は元の住人がひとり暮らしだったらしく、他の家に比べるとすべてが小さくまとまっていた。平屋で部屋数も多くないが、必要なものは一通り揃っている。
「いただきます」
テーブルに出来上がったばかりの状態の料理をアイテムボックスから取り出し並べて、夕食にする。食べたらささっとシャワーを浴びて脱衣所を出ればすぐに寝室だ。
寝室のベッドカバーやカーテンなどは、沈没船から手に入れたカラフルな布をもとに俺が作った。クッションやテーブルクロスなどを蒼系統の色で統一して、《青の家》と名前を付けようかな。それとも《ひとり暮らしの家》…いや、ないな。もうちょっと…つけるならいい名前にしないと。
「明日も晴れますように…」
祈るように呟いて、ベッドへもぐりこむ。
「あ、目覚ましは5時でお願い」
明日からは3時間ごとに休憩を入れるようにしよう。きっとその方が疲れにくく、一日の移動距離は稼げるはず。今日のペースで飛んでいたら、すぐに体調を崩してしまいそうだ。
ポーションがある世界とはいえ、医学がどの程度進んでいるのか分からない。怪我や病気にはならないように充分気を付けよう。




