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おっさんと彼女と異世界チャリ  作者: モロコロス
おっさん、チャリをパクられる
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魔王のおかげで大団円?

 怪力チートで数十秒走れば、あっという間に街の中心部。街に転がってる人間、ほぼ全て男性である。黒煙を上げて今や燃え盛ってる建物は、あの質素な門からみて街の反対側にあり、中心部を通るのが一番早いと判断したのだった。


 町、いや街なのか、建物の数は意外に少なく倒れている男達はその殆どが武装している。兵士ではなさそうだが、荒仕事に慣れた男が泡吹いて倒れて動かない街中ってシュールかもしれない。


「奴隷狩りの街ですから、人間はほとんど男性ばかりでしょう」


 魔王様の説明で色々納得した。恋愛脳が気にも止めずに殲滅した理由とかだ。


 街中では、倒れて動かない人間を縫うように、ちょっと虚ろな目をしたゴブリン達もちらほらと、鎖を引きずりながら歩いていた。やっぱり魔王の呪いって魔族はレジストできるらしい。魔王様はそんなゴブリンに声をかけた。


「街をでなさい!森へ戻るのです!」


 声には魔王様の力が込められていたみたいだ。街のあちこちや遠くでも、なにやら鎖を引きずる、力強い音がしだした。無事逃げられるといいね。


 ゴブリンは、背丈が俺達と同じくらい。鼻と口は異世界人と同じく大きいのだが、目もそれなりに大きく黒く、色もちょっと日焼けした人くらいの、少し赤みがかった、つまり肌色。普通の服きせたら日本人で通用しそうな顔立ちが多かった。日本人男性からみても野性味あふれる美人さんな雌ゴブリンも居た。まあ、毛は無いんだけど。


 全員全裸に鎖であり、美人な雌ゴブリンとか、目のやり場に困ってしまう。いや、上も下も毛が無いってことで。汚いものを見る目つきで本上さんが俺を睨んでるんだが、雄ゴブリン見る本上さんの顔だって、まあいいや言わないでおこう。殺されそうだ。


 街中には、そんなゴブリンさん達があちこちから鎖を引きずり、外に出てきていた。どこかの部屋や建物に閉じ込められてる事も無さそうです、と魔王様が呟いた。


 奴隷という境遇もあって、なぜかエラい同情的になってしまった俺達は倒れている人間も放って、気づけばゴブリン達の鎖を引きちぎったりしてあげていた。俺が雄担当。本上さんが雌担当だ。


 そんな最中に再び轟音が響く。どがああああん。


 そういえば、建物から火が出てたなあ、と思い出した時は、新たな爆発音とともに該当の建物が激しく音をたてて崩壊していた。炎を上げて崩れる大きめの建物を見る。


「まあ、街の領主の館ですし、ゴブリン達は無事逃げられたようですし」


 じゃあ放っといていいかな。街中に向かった目的からズレているが、街中で倒れる異世界人連中はもう放っておくことにして俺達は再びゴブリンの鎖を引きちぎり続けた。雌ゴブリンの鎖を引きちぎった本上さんに、お礼みたく頭を下げるゴブリン。そんなゴブリンさんの肩を魔王様が掴む。


「外れ、森の入り口の側に、未だ仲間が一人、鎖をつけたまま倒れています。貴女もご存知の、言葉が喋れない、不思議なゴブリン。まわりには人間も居ますが、彼らはもう二度と目覚めません。アレは私の関係者です。森の仲間とともに、大切に保護してください」


 不思議と俺達にも判る言葉をゴブリンに伝える魔王様だった。しかも目を輝かせて勢いよく頷く雌ゴブリンである。魔王様の言葉は自然に魔族には伝わるらしい。不思議だ。


 とまれ、事態は解決した、と言えるでしょう、と魔王様は言った。雌ゴブリンさんは急いであの木の門を目指して駆け出して、もう見えなくなっている。


 気づけば街中に全身毛のない裸のゴブリンさん達は見当たらなくなっていて、見えるのは倒れたムサい異世界男性諸君ばかりである。やっぱりなあ、頭蓋骨の形とか目の位置とか、地球の人間から微妙にズレてる気がするんだよなあ、こいつら。


 こいつらに保護されるなら、まだゴブリンに保護されたほうがいいかもしれないな。


「アレは日本に連れ帰るわけにもいきませんし、ゴブリンに面倒見てもらう、で構わないかと」

「だって雌ドラゴンに苛められたんでしょ」

「それは問題ありません。私の庇護にあると伝えましたし」


 多分本上さんと、俺と魔王様が考える「苛められた」の意味が違う気がするんだよね。むしろアイツにはご褒美っつうか唯一の癒しだったのかもしれないし。体力的には苛めだし、結局心壊れちゃってたけど。


「とにかく、異世界で奴隷狩りに捕まった日本人救出大作戦、完遂です」

「え、そんな作戦名だっけ」

「パクられたチャリを取り戻せってのと、一言も合致してない件」


 当初のお題とまったく違う作戦名を言われても困ります。


「あ、そうだ」

「どしたの本上さん」

「アイツ日本に帰れないし、行方不明は継続するんだね。面倒」

「遺書なり退職届なり、拇印押させておきましょうか、今度見回りに来た時にでも」

「さすがに退職届にしておこうか」


 少し殊勝な顔を取り戻した本上さんは、手心加えた解決案に同意した。


 人を呪わば穴二つという。いくら身勝手で腐っててやることなすこと一々人の揚げ足とるばかりのクソ野郎だったとしても、死んでほしいと思っても、実際に手を下す必要も、手助けもしなくていい。そんな台詞を口に出すのも止めておこう、と俺は改めて思った。大人だからね。


 つうか、あらためて現実に「ざまあ」されてる奴を目の当たりにし、実際に酷く落ちぶれた様を見た時、実際にはざまあみろ、なんて思えなかった。こっちに来るまで、「どっかでのたれ死んでりゃいいのに」と思ってたのも反省する。


 本上さんのためでもある。彼女なら、「もしや私が願ったから」など思わなくてもいい罪悪感に悩んでしまうかもしれないし、あれは因果の運命だ。俺達も巻き込まれただけ。粛々と彼の回復を祈るとしよう。これで少しでも真人間になってくれればいいんだけどね。


「というわけで丁度時間となりました」

「あ、そっか。じゃあ佐藤くん、よろしくね」

「なにが」

「いえー、二人乗り〜」

「ああ!」


 すっかり忘れてた。

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