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雨の魔法使い  作者: あめふらし
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書類渡し

 僕は宿の一室に案内された。

 グレードはそんなに高くなく、一人部屋だ。

 何でも一時的に黄金の双盾のパーティを抜けて、王都にやって来たらしい。

 どんだけ僕の事が気にかかっていたのか、アッシュよ。だが助かった、今は感謝したい。

 

「いや~、それにしても本当にアリアが無事でよかったよ。せめて何か力になれればと王都に来たかいがあったぜ」


「ありがとうございます。アッシュ君。丁度寝床が無くて、困っていたんです」


 それから僕はアッシュに愚痴を話した。

 アッシュには申し訳ないと思ったが、話さずにはいられなかったのだ。

 アッシュは黙って聞いてくれた。かなりうれしい。

 最近、気軽に誰かと離せる機会もなかったしね。


「それにしてもアリア何か、顔が赤いというか、色っぽいというか、何かあったのか?」


 うん? そう言えばアッシュを見てると何かドキドキしてくるし、これはもしかして恋……ではなくたぶんそれは、


「ああ、それはたぶん、飲まされた紅茶のせいかと。精力増強とかなんとかいってましたし、媚薬的な成分も入っていたのでしょう」


「あー、それでか。てっきり窮地に颯爽と現れた俺に惚れたかと思ったのに」


「あはははははっ、違いますよ。まぁ、今となってはあのハイツと寝るくらいならアッシュと寝る方がいいと思ってますけど」


「へぇ、俺と寝てくれるのか」


「添い寝くらいならしてあげましょうか、何てね。あはははははっ」


「添い寝ねぇ。じゃあ宿に泊まる代金はそれで払ってくれよな」


「ええっ、冗談じゃないですか!?」


「あの豚腹公爵よりも俺と寝たほうがいいんだろう?」


「仕方ないですね。本当に添い寝だけですよ」


 いつもならこんなことは言わないのだが、紅茶のせいか変な事を言ってしまった。

 そのまま部屋に一つのベッドに潜り込む。

 それにアッシュも続いた。

 ドキドキが収まらないが薬のせいだろう。アッシュにお休みを言うと、僕は目を閉じた。

 



 朝が来たようだ。僕はぷにぷにと頬をつつかれて、目が覚めた。未だ夜明け前だが、気を聞かせてくれたのだろうアッシュが頬をつついて目を覚ましてくれた。


「おはようございます。アッシュ君」


「おはようアリア」


 そういうアッシュはどこか疲れている様に見える。もしかして……


「アッシュ君、もしかして昨日は眠れなかったのですか? 疲れている様に見えますよ」


「ああ、一睡もできなかった。というか本当に添い寝だけだったな。俺は少し期待してたんだぜ?」


「僕はそんな軽い男じゃありませんよ。それより朝ですね。早めに起こしてくれてありがとうございます。早速王城に行ってきますね」


「上手くいくと言いな。アリアの作戦」


「そうですね。上手くいったらまたザビエンスのギルドで会いましょう」


「というか気になったんだが、その服で行くのか?」


 そう言われて、僕の服を見ると完全に女物の寝間着だ。しかし、今はこれ以外服がないため仕方ないだろう。

 

「まぁ、仕方ないのです。これ以外服がないですからね」


 そう言って僕はアッシュと別れた。 

 僕は氷像龍に乗って、王城の前までつくと、目立つように降り立った。

 見張りの兵士が驚きの声を上げながらも、持っていた槍を向けて対応する。


「何者だ」


「僕はメルブルク公爵家、第一夫人だ。ルードガリア王に面会したい」


 ルードガリアとはこの国の名前だ。正式にはライツ・メルブルク・ルードガリアが現王の正式な名前となる。


「しかしだな」


 僕の寝間着を見て、目のやりどころに困る兵士。言い渋る兵士に僕は昨日あらかじめ取っておいたメルブルク公爵家の家紋が付いた短剣を見せる。


「これを見ろ。これがメルブルク公爵家の証だ。さあ、とっとと面会の準備をするんだ!」


 貴族っぽく高飛車には兵士に言葉を投げかける。

 びしっと言葉を言い放つと、兵士の一人が王城に向けて走っていく。

 待つこと三十分、朝日が完全に上り切ったころに、兵士が戻って来た。


「王はメルブルク夫人に会われないそうだ。というか事前の報告もなしに面会は出来ない。その代わりアルドノア右大臣が夫人に会わられるそうだ。俺に付いてきてほしい」

 

 アルドノア右大臣というと実質のこの国のナンバーツーだ。現王には会えなかったが、これはこれで計画に支障はない。お偉いさんに会えれば、これでいい。


僕は複数の兵士に囲まれながら、王城の中に入っていく。

朝早くから鍛錬をしているようで、結構な人数の兵士が王城にいた。

そして悪いことに僕の格好は露出の多いワンピースで非常に目立つ。

兵士からの視線にさらされながらも、僕は三階の一室に案内された。

そこにはモノクルを右目に付けたちょび髭のおじさん、アルドノア右大臣とその奥にアルドノア右大臣を守る近衛騎士が二人突っ立っていた。

連れてきた兵士が帰り、僕とアルドノア右大臣そして二人の近衛騎士の四人だけが部屋に残った。

 アルドノア右大臣はあくびを噛みしめながら、言葉を口にする。


「それで、メルブルク公爵家夫人が我が城へ何様ですかな?」


「率直にいますこれを見てください」


 そう言って僕は懐から書類の束を取り出す。

 無造作に取ったアルドノア右大臣だが、書類を見ると目を見開いた。


「これは!」


 そこにはメルブルク公爵家が行ってきた悪事の数々が書かれていた。気に入らない家の不正の取りつぶしや、人身売買にも似た悪行、購入が禁止されている媚薬に、他国への情報を流し金を貰っていたことなど、上げればきりがないほどの悪事がそこには書かれていた。


「メルブルク公爵家の悪事の数々です」


「確かに、その通りだ」


 ざっとアルドノア右大臣が書類に目を通す。

 そこから十五分ほどたって、アルドノア右大臣が口を開いた。


「うむ、この書類があれば厄介だったメルブルク公爵家を何とかすることが出来るだろう。その点については感謝しよう。それで貴殿の目的は何だ?」


 アルドノア右大臣がモノクルをくいっと回しながら尋ねた。


「二つあります。一つはメルブルク公爵家の取りつぶしです。それは勝手に行われるでしょう」


「そうだな。貴殿が止めようともメルブルク公爵家は取りつぶされるだろう。それでもう一つの目的は何だ?」


「親子喧嘩の仲裁を取ってほしいのです」


「は?」





「なるほどな、分かった」

 

 アルドノア右大臣は現王であるライツ・メルブルク・ルードガリアと話をしていた。話の内容はアリアが持ってきた書類に関してだ。

 話の内容を聞くや否や、現王は


「これで邪魔なメルブルク公爵家を取り潰すことが出来る。まさか他国との間者までやっていたとはな。夫人には褒美をやりたいところだよ」


「その件なんですが殿下」


「何かほしい褒美でもあると言ってきたのか?」


「はい、まず本来メルブルク公爵家が取り潰しとなれば、その縁者は縛り首が基本です。今回はただの取り潰しではなく、国家反逆罪での取り潰しなので当たり前でしょう。この縛り首から除外してほしいというのが一つ」


「まぁ、それはそうであろうな。手柄を上げたのに縛り首とは何とも言い難い。それに正式な結婚式は二日後だったはず、夫人をリキュール家として扱えば、何も問題ないだろう」


「そしてもう一つのなんですが……」

 

 言い渋る右大臣に現王が問いかける。


「何かあったのか?」


「今回の立役者である夫人、いやもうリキュール家の扱いと決まったからにはアリアと言った方がいいでしょう。アリアは貴族の決闘の仲裁をしてほしいと言ってきました」


「仲裁か。仲裁程度なら、良かろう。それで相手は何処なのだ」


「実家のリキュール家当主、ギリア・リキュールに向けてです」


アリア「アッシュ君とは何もありませんでした。ほんとですよ?」

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