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雨の魔法使い  作者: あめふらし
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水の魔法

 リキュール侯爵家は、四大魔法貴族呼ばれる特殊な貴族だ。

 四大魔法貴族とは、火、水、風、土、の四属性を代々司っている貴族で、リキュール侯爵家は水を司っていた。

 年々、リキュール家は優秀な水の魔法使いを輩出している。

 中でもリキュール侯爵家の直系は特に優秀で、それ故にリキュール家は四大魔法貴族の一つとして呼ばれていた。

 そんな中、僕事アリア・リキュールは一つ上の兄と五歳も差があった。何でも父親が新しく娶った妻の子どもが僕らしい。リキュール侯爵家は優秀な家柄で、当主には何と十人を超える妻がいる。子供もそれに比例して何と二十人は超えていた。

 母親は庶民の出の水魔法使いらしく、僕が末っ子という事もあり僕の地位は低い。

 成人すれば家を出ていかなくてはいけない身、なのだがリキュール家の恥にならないよう教育はしてくれるらしい。

 取りあえず魔法使いにはなれそうだ。そして魔法使いはこの世界で重宝される。この世界では誰もが魔力を持っているのだが、実戦で使えるレベルとなると限られてくるからだ。

 将来は家を出ていかなくてはいけない身だとしても、結構安泰なのではなかろうか。

 何せリキュール家の血筋という血統もあるのだし。




 魔法があると判明したしたその日、まだ一歳にもなっていない僕は自力で魔法の練習を始めていた。

 前世ではRPGゲームやファンタジー小説が好きだったので、魔力といえばこんなのかなというイメージが何種類かある。

 この世界の魔力は、精神力=魔力といった感じで、僕は生まれながらにして前世にいたときには感じなかった力をその身に感じていた。

 体に無色透明な水が血液と共に巡っており、その無色透明な水こそが魔力なのだと僕には感じ取れた。

 だから僕はその無色透明な水を増やすイメージを繰り返し、精神を削りながらも無色透明な水、魔力を増やしていった。

 そして一歳になった夜。僕以外誰もいない寝室で僕は魔法を使ってみた。

 魔力を水に変換するイメージを魔力と共に指先に集める。

 すると指先から水球が現れ、僕は魔法を使う事に成功した。

 出現させた水球をかつて母親がやってくれたように右へ左へと宙で動かしてみる。

 たわいもない魔法だったが僕にとっては大きな進歩であり、少し感動していた。

 一時間ほど遊んだあと、手持無沙汰になった水球は蒸発させるイメージで蒸発させた。

 その次の日からは、夜になると待ってましたとばかりに魔法の練習を重ねた。

 大量に水を出す訓練はしない。それは魔力量が増えれば自然にできる事だろう。僕が重点を置いて練習したのは、魔法のコントロールだった。

 水球を長く伸ばしてみたり、出来るだけ薄くしてみたり、水を操る練習を僕は重ねた。

 その結果、僕は彫刻であるような見事な龍の造形をした水龍を作り出すことに成功する。

 ぐるぐると僕の上を旋回させたり、水蒸気や冷気のブレスを吐かせたり、水龍を作ることが僕の魔法の練習の一端となった。

 一匹作れるようになると調子づくもので、その日の夜からは水龍の数を増やすことに挑戦する。

 さらに一年が経ち、二歳になり僕が二足歩行が出来きるようになったころ、僕は無数の水龍を作り出すことに成功していた。

 百は超える小さな龍が部屋を舞う姿は良い景色で、僕はそれぞれを個別に動かしながら遊んだ。

 温度を低くして氷のブレスを吐く氷龍の軍と、温度を高くして水蒸気のブレスを吐く灼龍の軍を作り戦争ごっこなんかを楽しんだ。

 遊び終わった後は、部屋の中で大量の水龍を蒸発させて湿度を上げまくることなどできるはずもなく。窓の鍵を水龍に開けさせて、窓から大量の水龍を放流外で蒸発させた。

 三歳になったころ、僕は日中でも魔法の練習がしたくなり、母親に魔法を見せることにした。

 その時は絵本を読んでもらったのだが、丁度魔法使いが水龍を作り出す魔法を使っていたのだ。

 

「母上ー」


「ん? どうしたのアリア?」


「すいりゅー」


 指先から水龍を作り出し、浮かばせる。まるで水中の様に龍は部屋を泳ぐ。それとないパフォーマンスだったのだが、


「……」


 母親は絶句していた。その後どうしたのか、聞いてみるとまず魔法は三歳の子供が気軽に使えるものではないらしい。リキュール家では五歳から学び始め、すぐにできるようになってもただ水の塊を飛ばすぐらいしかできないらしい。それに水の造形を僕が作った本格的な、鱗一枚一枚を再現したような水龍は大人でもそうできるものはいないのだとか。事実母親は僕の作ったような彫刻の様な水龍は作れなかった。さらには事細かな魔法や大規模な魔法には詠唱が付き物らしく、無詠唱で芸術作品とも呼べる水龍を作り出した僕に母親は絶句していたと言う訳だ。

 その日から僕は公に魔法の練習が出来るようになった。

 母親にもっと魔法を使いたいとねだったら、どこか呆れながらも了承してくれた。僕の規格外の魔法に理解が追い付いていなかったらしい。

 次の日に、氷龍百匹対灼龍百匹の戦いを見せたらまたもや母親は絶句していた。

 規格外過ぎたらしい。しばらく放心状態で、十分ぐらいぼーっと戦争ごっこを眺めていたのだが、十分でやっと我に返った。


「いい、アリア。水龍一匹だけでもすごすぎたんだけど、この水龍達の戦いはすごいを通り過ぎてヤバイわ」


「何がです? 母上?」


「これだけの才能が周囲にばれると厄介なことになるかもしれないって話よ」


 そこからしてくれた母親の話は主に貴族のメンツの話だった。僕の母親は庶民の出で当主の妻の中でも身分が低い。そんな母親が産んだ子が大人も出来ないような魔法を軽々と操れるとなったらどうだろう。当然、庶民の子の癖に生意気だのなんだのという話が出てくる。


「だからあなたの魔法は軽々と人前で見せてはだめよ。賢いアリアなら分かるでしょう」


「分かりました母上」


 貴族のメンツか、厄介だな。母上には少なくとも成人して外に出るまでは、水龍達を他の人に見せてはいけないと約束させられた。

 堂々と練習できると思ったのだが、前途多難だ。

 それからも与えられた部屋で僕は魔法の練習をしていく。

 部屋に来るのは母親だけなので、部屋の中なら僕は魔法の練習をし放題だった。

 母親から文字を襲わる傍ら、僕は空中に水龍の群れを出現させる。

 文字を覚えながらも、魔法を使えることに母親は驚きつつも今までの出来事で耐性が出来たようで苦笑して僕の様子を見ていた。

 四歳になるとさらに魔法のコントロールを極めていく。

 子供ほどの大きさにもなる氷龍と灼龍を作り出し、それを自在に自分の体に纏わせていた。

 まるで生きているかのように動く氷龍と灼龍。口を開けて自分を甘噛みさせたり、なついている様に体をこすり合わせてくる。そういう風に見えるほど滑らかに龍は動いていた。

 芸術の域に軽々と踏み込む二匹の龍を僕は自在に操る。

 濡れた個所は瞬時に乾かし、僕は水浸しになりながらも何故か一切濡れていないという不思議現象さえ起こした。

 乾かすにしても強引にすれば、自分の他の魔法も蒸発させてしまう。二匹の龍がみずみずしく動くのは、精密な魔法のコントロール力があってこその技だった。

 そして僕はリキュール家で一般的に魔法を覚える五歳になった。


アリア「灼はしゃくと読みます。あらとも読めますがそっちじゃないのです」

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