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雨の魔法使い  作者: あめふらし
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ブラックドラゴンの幼体

 ブラックドラゴンはいきなり大口を開ける。

 そしてその口の奥には黒い炎が揺らめき、ブレスを放とうとしているのが分かった。

 僕はそれを見て手の先から津波を発生させた。

 刹那、ブラックドラゴンから放たれた黒炎と津波が衝突し、大量の水蒸気が発生する。

 そのおかげでブレスは対消滅した。津波も消え去ったが、元々ブレスを無効化するための物なので問題ない。

 次に僕はブラックドラゴンを倒すために、巨大な水龍を生み出した。全長は十メートルにも達しそうな巨大な水龍でブラックドラゴンの顔を塞ぐ。

 窒息死してくれれば素材がとっても品質がいい状態で手に入るのだが、どうだろうか。

 最初は水龍を手で何とか剥がそうとしていたブラックドラゴンだが、潰した先から僕が水龍を再生させる。その様子を見て、ブレスで何とかしようと思ったみたいだ。

 口を広げる。その隙に中に水龍を突っ込ませようとするが黒炎のブレスのせいで、水龍は蒸発し、黒炎のブレスは対消滅した。

 ブラックドラゴンの口に巨大な水龍を突っ込ませ、それをブレスで対消滅させられるというのを僕は繰り返した。

 周りには水蒸気によって、湿度が上がったせいで壁や僕たちに水滴が滴る。

 何度も繰り返し、水龍を口に突っ込ませブレスを吐かせたおかげで、一時間もした後にはブレスを吐かなくなった。

 水龍で顔を覆い、窒息死を狙う。

 ブラックドラゴンは肩を上下に揺らし疲弊している様子だ。


「後は窒息死するのを待つだけですね」


「アリア、ドラゴンは水の中でも生活できると聞く。たぶん窒息死は無理だ」


「何ですと!?」


 窒素死作戦はフォンスの一声で中止となった。

 ならどうするか、少し惨いがあの方法で行かせてもらおう。

 少々ドラゴンに傷がつくがそれは仕方があるまい。

 僕は水を操作する。操作するのはブラックドラゴンが飲んだであろう水龍の一部だ。

 まずは胃を破壊させてもらう。

 水を操作し、激流を起こす。

 内部からの破壊に、ブラックドラゴンが方向を上げるがそれは水龍の中に気泡として浮かぶだけだ。

 さらには内臓も破壊する。

 それがとどめとなった。

 ブラックドラゴンの幼体はぴくぴくと体を振るわせた後、倒れて動かなくなった。

 時間はかかったものの最後は呆気ないものだ。

 

「結構楽に倒せましたね」


「アリアは規格外だな」

「まさか、本当にブラックドラゴンを倒せるとは」

「アリアの実力はAランクを超えているのかも」

「何にせよ、助かった」

「私たちだけじゃ絶対に死んでいたね」


 紅蓮の虎の面々から声が上がる。

 安全と判断したのか、紅蓮の虎の面々が隅っこから、僕の方へ駆け寄って来た。

 

「おい、アリア。あれ」


 フォンスが何か見つけたようで、指さす。

 その先には宝箱があった。

 

「アーティファクトかな?」


 一応トラップがないか水龍をけしかけ、宝箱を水浸しにする。

 何も起こらないのを見て、ミミックの類ではないと確認した後、僕はフォンスの了解を得て宝箱を開けた。

 中には透明な宝石が付けられた腕輪が入っていた。

 

「何でしょうこれ?」


「さあ、嵌めてみればわかるんじゃないか?」


 僕は腕輪を取り、嵌めてみる。すると僕の腕の大きさに合うように腕輪が収縮した。

 魔法の腕輪の様だ。そしてこれをはめた瞬間、僕の脳内にこのアイテムの使い方が流れてきた。


「これは……時止めのアイテムボックスらしいですね」


「時止めのアイテムボックスだと!?」


 フォンス達から驚きの声が上がった。

 僕はその証拠とばかりにブラックドラゴンに触れる。次の瞬間ブラックドラゴンは腕輪に吸い込まれて、中に収納された。

 容量を感じ取るとまだまだ中に物が入るようだ。百分の一も満たしていない。

 そしてこの腕輪が時止めとあるように、このアイテムボックスに入れているものは時が止まった状態になるらしい。

 これはいいものを手に入れた。


「所有権は僕が貰ってもいいですか?」


「ああ、俺らはブラックドラゴンに殺されなかっただけで良しとするさ」


 フォンスから了承も得たことだし、時止めのアイテムボックスは僕が貰う事にする。

 そこからは計画通りに迷宮狩りが行われた。

 ブラックドラゴンの幼体のような化け物は現れなかったが、ボス部屋ではCランクでは命の危険が伴う様な敵が時々現れた。

 そのたびに僕は少し加勢したが、紅蓮の虎の出番をすべて奪うような真似はしなかった。

 強力な魔剣、珍しい杖といったアーティファクトが宝箱から出現したが、全て僕は紅蓮の虎に譲った。

 どれも僕には必要ないものだし、僕は時止めの腕輪を手に入れたから必要ない。これ以上のものを望むと強欲すぎるだろう。

 一日半で十階の迷宮狩りは終わり、残り一日半で迷宮から脱出した。

 帰りはスロースペースだったが、別に気にしていない。

 氾濫期のおかげでにぎわっている迷宮の入り口を抜け、ギルドに入る。

 ギルドで迷宮内で狩った魔物の討伐の証と要らない部位や魔石を売る。

 緊急依頼時だからあまり高く売れなかったがそれでもそこそこの金にはなった。 

 ドラゴンの事はどうしようかと紅蓮の虎と相談した。

 

「どうなさったのですか?」


 それを見かねて、受付のお姉さんが話しかけてきた。


「いえ、迷宮のボス部屋でブラックドラゴンの幼体と出会ったのですが」


「ブ、ブラックドラゴン!?」


 驚きで大声を上げる受付のお姉さん。

 それから取りあえず現物を見せたほうがいいだろうという事で、ギルドの訓練場にブラックドラゴンの死体を出すことになった。

 本当にブラックドランの幼体をこいつらが倒したのかと、またはブラックドラゴンの幼体が本当に見れるのかと訓練場には人が集まった。

 僕は人目にさらされながらも腕輪からブラックドラゴンの死体を取り出した。

 どすんっとブラックドラゴンの巨体により訓練場が小さく揺れる。

 五メートルはあるブラックドラゴンをみて、受付のお姉さんは腰を抜かしていた。

 他の面々も一様に様々な反応をしめしていた。

 

「本物のドラゴンとなりますと、冒険者ギルドには手に負えませんね。ギルドマスターに相談しましょう」


 そういって受付のお姉さんは、訓練場を後にする。

 少し時間が経った頃、受付のお姉さんが戻って来た。その横には白いひげを蓄え、長い杖を持った老人の姿がある。

 確かギルドマスターのザッケロウとかいうお爺さんだ。

 ザッケロウはブラックドラゴンを見るなり、見事じゃと呟いた。

 

「外側から見た限り、傷らしい傷がついておらん。余程の実力がないとこのような倒し方をするのは無理じゃろう。お主たちが倒したのかね?」


 そう、紅蓮の虎に聞くザッケロウ。

 それにフォンスが答えた。


「いえ、倒したのは俺達じゃなくてアリアです」


「始めましてギルドマスター、雨の魔法使い、アリア・リキュールです」


「ほう、君が噂の雨の魔法使いのアリアか」


 そこからギルドマスターザッケロウとの話し合いになった。

 Bランクへの昇格をしてくれたり、とためになる話し合いだった。


「本来はAランクにしても問題ないんじゃがのう。それは段階を踏んで目指しておくれ」


 ブラックドラゴンの幼体はギルドでは扱えないという事で、オークションにせり出されることになった。

 オークションでは値段の変動はあるが、白金貨は確実だろうとの事。

 これで家に手が届くかもしれない。

 

「オークションは我がギルド主体でやらせてもらうよ。何、手数料以外はちゃんと払うよ」


 ザッケロウから言質もとった。

 今からオークションでブラックドラゴンの幼体がいくらになるか楽しみだ。


アリア「僕の前ではドラゴンも形無しですね」

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