指名依頼
オークションは一か月に一度開催されるそうなので、それまでの期間、(今回は三週間だった)迷宮狩りをすることにした。
基本ソロなので五階層辺りをうろうろしてはボス部屋に挑むという事を繰り返していた。
たまに銀の剣や黄金の双盾、紅蓮の虎のメンバーとあったのでその時はご一緒させてもらった。
それでも潜る階層は八階までと浅い。どうやら十階にはブラックドラゴンが出るという噂が広まっており、その結果十階以降にはよほど強いパーティしか潜らなくなった。
だがそれはギルドにとっての不幸だったらしく、ギルドマスターが直々に演説を行っていた。
それによると、ギルドの精鋭が調べたところ今回の氾濫の予兆が現れているのは二十階まで敵のランクにしてBランクまでが氾濫する可能性があるという事。
今までの迷宮狩りじゃ上層の敵は溢れる心配はないだろうが、下層の敵は高確率で氾濫してくるだろうという事だった。
なのでなるべく下層に潜り、緊急事態が起きやすいボス部屋は無視して狩りをしてほしいというのがギルドの演説だった。
うーむ、しかしほとんどの人はアーティファクトを求めているし、実りの少ない雑魚狩りだけをしろというのは酷な話だ。
まぁ、僕はソロなので寝る時に見張りが出来ないので、潜る階層は必然的に浅くなる。
僕には関係ない話だ、と思っていたのだが……。
その演説があった三日後、僕はギルドマスター直々に部屋に呼ばれていた。
「お主に指名依頼がある」
指名依頼とは、その名の通り指名されて受ける依頼だ。相手によっては断るのが難しく、指名されれば高確率でやらなければいけない依頼となる。
ましてや今回はギルドマスター直々の指名依頼だ、断ることは不可能と言っていいだろう。
「迷宮狩りの成果虚しく。昨日下層のBランクの魔物が五階付近で目撃された。幸い通りかかったCランクのパーティたちによって討伐された。しかしこれは氾濫の予兆どころではなく、氾濫が始まった証拠だ。よってギルドは一旦迷宮を封鎖し、Bランク以上の冒険者で氾濫を止めることに決めた。君にも氾濫を食い止めるために戦って貰おうと思っている」
それが今回の依頼の内容だった。
Bランク以上は全員がギルドマスターからの直々の指名依頼を受けているらしい。
ブラックドラゴンを倒して、Bランクになった僕も当然対象になっているというわけだ。
拒否権は当然ない。
その日の昼から作戦会議を始めるとのことで、僕は作戦会議のある訓練場に向かった。本来ならば二階にある会議室を使うのだが、今回はBランクとAランク全員なので数が多すぎる。なので訓練場を会議室代わりに使うという事だ。
ちなみにザビエンスにはギルド西支部と東支部があってSランクは東支部に一人しかいない。Sランクは長期依頼で遠いところに行ったまま帰ってきていないという事なので、今回は不参加らしい。
訓練場には台が置かれその上にギルドの精鋭の一人が立つ。そして大声でしゃべり始めた。
「では作戦を発表する。今回はギルドが選んだチームに分かれて防衛戦を行う。今回は緊急事態だ。事前にギルドマスターに伝えて貰った通り、青、赤、緑、黄に分かれて反乱を食い止めてもらう。食い止める階層は三階で、六時間ごとに交代だ。いまから色ごとのバンダナを配るからそれぞれの色を受け取るように」
僕は事前に青と伝えられていたので青のバンダナを受け取る。
そして腕に巻いた。
「では早速向かう。その前に氾濫は恐らくあと十日ほどで終わるとの見解がある。つまりは十日ほどは使命医らを受けてもらう事になる。食糧はこちらで準備したので用意しなくても大丈夫だ。では青のチームから防衛に向かって貰う。何かある奴は知らせてくれ」
そう言ってギルドの精鋭の青のバンダナを頭に巻いた人が先頭に立ち、迷宮に向かって進む。
人数にして三十人ほどだ。
東のギルドと途中で合流し数は六十人にもなった。
僕らの担当は昼間から夕方までにかけての六時間だ。
早速ダンジョンに潜り、戦いが始まる。
ギルドの精鋭の指示で、三階の広場に人が集まり、魔物が氾濫するのを待った。
そしてその数分後、本来は三階に現れないようなBランクの魔物、ディノラプターの群れが現れる。
ディノラプターは小型の恐竜みたいな魔物でその素早さと群れの多さでBランクに選ばれている。
「青のバンダナを配られたものは水魔法を中心としている。水魔法使いは後衛に立ち、剣士たちは前衛に立て、私の合図で水魔法を使って貰うぞ」
ギルドの精鋭で今回の青バンダナのリーダーの人が前に立ち、指示を飛ばす。
青リーダーの合図により、水魔法使いたちが一斉に魔法を使った。
大半が水を鋭く飛ばすウォーターカッターだ。
ディノラプターの首や腕、しっぽなどを切り飛ばしていく。
僕も強調するようにウォーターカッターを飛ばし、ディノラプターを真っ二つにした。
次の指示で矢を持っている弓矢隊から、矢が放たれた。
ディノラプターの目を潰し、時には脳天に刺さっているものもある。
そしてそれも終わると、満身創痍のディノラプター達に剣士たちが襲い掛かった。
あっと言う間にディノラプターたちは狩られ、残ったものはディノラプターの死骸だけだ。
次の魔物が来る前にディノラプターの死骸は回収され、次の魔物が現れる。
次はホワイトオークやコボルトキングといった亜種の混合編成だった。
それらも的確な青リーダーの指示で、排除されていく。
六時間が経った頃に次の赤のチームが三階に降りて来て交代となった。
そんな闘いの日々が十日間続いた。
十日間も続いたが、戦うのは六時間だけなので疲弊してミスが起こったりなどは起こらなかった。
夜に担当するチームから文句が出たりとそんな細かいことはあったがおおむね順調であった。
そして十五日目。
Bランクの魔物が三階に現れなくなり、氾濫が終わったということにきまった。
後は後始末だけだ。
三階に上がってこないだけでまだBランクの魔物が上層にいるかもしれない。
そういう事で、ギルドによってまたチームが編成され、上層での魔物の駆逐が始まった。
今回僕はその駆逐チームに選ばれなかったため、僕の仕事は終わりだ。
ギルドから働きにしては少なめの報酬を貰い、青チームは解散した。
緊急の指名依頼だから少ないとはいえもうちょっと報酬を貰いたかったものだ。
しかしギルドが万全を期して、チームを組み指示したので、けが人はおろか死人も居ない。
そこはギルドががんばったということなのだろう。
安全料が引かれたと思えば以来の報酬も妥当な額なのかもしれない。
そんなこんなで氾濫期は終わった。
そして丁度オークションが終わったとの伝達があったので、受付のお姉さんの所に向かう。
お姉さん曰く、額が額のため、受付では渡せないらしい。
二階の会議室を使ってオークションでのお金がギルドから支払われた。
その金額なんと白金貨十七枚。
日本円にして一千七百万円。
とんでもない大金だ。
なぜこんなにも高額になったのかというと、内臓以外を傷つけず鱗などが一切無事だからという理由らしい。
買った貴族の公爵家ははく製にするのだと言っていたという。
とにかく白金貨十七枚が手に入った。
これだけあれば家も買えるだろう。
僕は腕輪に白金貨をしまい、受付のお姉さんに礼を言ってから宿に戻った。
アリア「大金が手に入りましたね」




