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14. 初めての山賊退治

「私はどこに座れば良いのだ、ゲンキ殿」


 ランチを済ませて、キルコタンクに乗り込んで、さあ、旅を続けよう、

 と、思ったら、ポンコツおてんば令嬢がコクピットの梯子はしごにのって、キルコタンクの操縦席をのぞきこみ、トランペットを見つめる黒人少年のような物欲しげな目でそんな事をおっしゃられた。


「あんたの席なんか、ねーから」


 君は、いじめっ子か、オッドちゃん。


「な、なにい、それでは私はどうやってゲンキ殿の旅に同行すればいいのだっ!」

「呼んでないし、同行を認めてもないわよっ」

「じゃあいいよ、私はライサンダーで行くからっ!」

「ついてこないでっ!」

「我が婿むこを逃がしてなるものか、地の果てまでも追っていくっ!」


 ストーカーだ、生粋のストーカーがいる。

 パトリシア嬢は身軽にキャタピラカバーへ飛び降り、そして愛馬ライサンダーへ飛び降りた。


「ゲンキ、出してっ! 全速力よっ!」

「え、そうなの?」

「全速力っ!!」


 僕はペダルを思い切りみ込んだ。

 ぐおおおおうぃんと甲高い音を出しながらキャタピラが高速回転する。

 おおっ、結構スピードが出るなあ。

 あっという間に、後方監視モニターのパトリシア嬢が小さくなる。

 まてい、という感じで、全速力でライサンダーが、パカランパカランと走って追ってくる。

 ライサンダー可愛いよなあ。

 さっき顔をなでさせてもらったけど、温厚おんこうで綺麗な白馬であった。

 もっとなでたい。


「もっと、もっと速度をだすのよっ!」

「これくらいが最高速っぽいよ」

「あー、キル君が、最高速だと、魔力の消費が大きいからやめて、って言ってるんだよ」

「ああ、なるほど」


 僕はペダルの力をゆるめた。

 謎のトラックボール状のデバイスから魔力が引かれる感覚からすると、大体時速三十キロぐらいが巡航速度っぽい。

 ライサンダーが追ってきて、併走へいそうしてくる。

 結構早いなライサンダー。


「もうちょっと速度をゆるめてくれっ、ライサンダーが死ぬ!」

「ゲンキ、チャンスよ!」

「なんというか、オッドちゃん大人げないよね」

「大人げないんだよ」


 とはいえ、別にライサンダーの速度に合わせる義理もないので巡航速度を保つ。

 だんだんとライサンダーが下がっていく。

 ライサンダー、サヨナラー。


 と、見ると、パトリシア嬢の騎馬は、細い山道の方へ進んで行って、林に消えて行った。


「あきらめたのかな」

「ああいう話を聞かない人はあきらめが悪いので、安心はできないんだよ」

「まったく、人としての会話ができない人は困るわねっ」


 オッドちゃんが言うな。


 開拓地を抜けたのか、大きな森と古い建物が増えてきた。中世の田園風景って感じ。

 日はうららかで、よく晴れている。

 ハッチを開けて、風を受けながら異世界タンクドライブだ。


「げんきくん、十一時の方角に風車が見えるよ、回ってる回ってる」

「わあ、すごいね、あやめちゃん」

「風車って事は、ここら辺は小麦畑かな、風力でうすを動かして粉をひくんだよ」

「そうね、ここらへんはケンリントン伯爵領の穀倉地帯だわ」

「まだ、ケンリントン伯爵領なんだ」

「領地が大きいのよ、パトリシアの実家は辺境伯だから」

「む、げんきくん十二時の方向、前方で二十人規模の交戦が起こっているみたいなんだよ。望遠画面だすね」


 ピポッ。という音と共に、ウインドウに小窓が開いて望遠画面が映し出された。便利だなあ。

 望遠画面の中では、人相の悪い奴らが馬車を襲撃している所が映っていた。


「これは、私の出番ねっ」

「まあまあ、ご隠居いんきょ、もうすこし様子をみましょう」

「角さんの言うとおりですよだよ」

「ごいんきょ? かくさんって誰なの?」


 タンクの速度を上げる。

 山賊の姿が肉目で見えるぐらいに大きくなっていく。

 激しく争っていた山賊と幌馬車の旅人は、こちらに気がついたのか動きを止めた。


「な、なんだ、あのでっかい物は」

「館? 館が動いているのか?」

「あ、あれぞまさしく伝説のドーベンの動く城だっ! まちがいないっ!」


「しずまれ、しずまりなさい」


 オッドちゃんが立ち上がって、両手を広げ、山賊と旅人に声をかけた。


「な、なんだお前たちは、泣く子も黙るホウリン山の山賊、ゴウエンさまと知っての事なんだろうなぁ」


 憎々しげに山賊ゴウエンは、オッドちゃんに返事を返した。

 小汚い獣の皮の服をまとって、大きな斧を持った、絵に描いたような山賊だ。


「不浄な山賊ふぜいが片腹痛いわね、この大魔導師……」

「あやめちゃん、ハッチを閉めて」

「了解だよー」

「な、なによっ!」

「チェンジキルコゲェェェル!」


 オッドちゃんに任せておくと人死にがでそうだしね。

 僕はタンクをキルコゲールに変形させた。

 鉄の巨人が立ち上がっていく。


「ななな、なんだ、なんだ、アイアンゴーレム? え、なんで? あいえええっ?」

「うわあ、なんという姿だあっ、神、あれは間違いなく金属神リンゲット様のご光臨こうりんだっ、まちがいないっ!」


 キルコゲールは山賊の前に立ち上がった。

 三十メートル上からだと、幌馬車がオモチャみたいだね。


『強盗などの犯罪行為はやめましょうよ』


 僕は山賊親方に向かって、拡声器ごしに声をかけた。


「え、その、ば、馬鹿いうなよ、そんな、なあ、みんな」

「お、おう、その、おまえなんか怖く、ね、ねえぜ、なあお頭」

「そうだとも、俺たちは泣く子も黙る、その、山賊であって、いまは、大事な業務ぎょうむ中なので、その、邪魔されると、その、困るなあ、困るなあ」


 僕はキルコゲールをうんこ座りさせて、小首をかしげさせ、山賊の親方にガンを飛ばした。


『あ”?』

「ふぷれぷしゅうあっ」


 山賊ゴウエンはぶわっと脂汗を流して直立不動になった。


「ドーモゴメンナサイ!!」

「「ドーモゴメンナサイ!!」」


 山賊が一斉に土下座した。

 僕はキルコゲールにカッコイイポーズを取らせた。


「「ドーモゴメンナサイ!!」」

「「ドーモゴメンナサイ!!」」


 ピカリと輝くその輝きに恐れをなして、山賊は涙を流し謝罪の言葉を合唱しながら山の方へ逃げていった。


『僕の、勝ちだ!!』


「げんきくん、ロボの図体で悪者をびびらせて勝つのは、大陸中に広まった悪名あくめいで相手をびびらす、オッドちゃんのやり方と、そう変わらない気がするんだよ」

「私、そんな事してないわよっ!!」


【宣伝】

道に倒れて、誰かの名を呼び続けた事がありますか!

時として、心の苦痛は肉体の苦痛をも凌駕する。

困るのは、僕だっ!


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第15話

領都ケンリンバーグへ向かう

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